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ギャグがスベっても言い訳しない男

私は職場にいる中年男性である助川さん(仮名)に最近注目している。

ある日、営業から帰ってきた若い女性社員吉川さん(仮名)が、行った。
「美味しそうな"おはぎ"が売ってたので、たくさん買ってきましたよ。皆さんでどうぞー」

助川さんがちょっと大きめな声で言った。

「石原軍団か!」

職場の空気が凍った。

「はい? 助川さん何ですか?」
吉川さんは意味が分からず、聞き返した。

そらそうだろう。世代的に吉川さん分からない。

助川さん、どんな言い訳をするんだろう。私は興味を持って助川さんに注目した。

助川さんは、耳を少し赤らめ、目を5秒ほどつぶり、無視をした。

なんと、無視をするとは。てっきり石原軍団のおはぎの説明をするとか、言い訳をすると思った助川さんが無視をするとは。

別の日、若い男性社員 佐々木くん(仮名)が助川さんに言った。
「あっ、助川さん。愛妻弁当ですか。幸せですねー」

助川さんは言った。

「幸せだなー。ぼかぁー、きみといるときが一番幸せなんだー(加山雄三風に)」

「えっ? 助川さん、なんですか?」

そらそうだ、佐々木くんは世代的に加山雄三を知るわけがない。

助川さんは、またもや、耳を少し赤らめ、目を少しつぶり、無視をした。

「助川さん?」

佐々木くんが食い下がる。

「佐々木くん、ごめん。僕はいま食事中だ」

「あっ、すみませんでした」

助川さんは佐々木くんを追い払った。

助川さんは決して言い訳をしない男だ。
ギャグがスベっても言い訳しない。そして、次からはギャグをやめるということもしない。

言い訳をせず、逃げもしない助川さん。

いいじゃないか。

〈了〉

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