2022/04/03
賃貸契約完了。
正式に新しい家を手に入れた。達成感よりも疲労が強い。
日付、氏名、住所を繰り返し書き、ひたすらに判を押す。他人に見られている、絶対に書き損じてはいけない、というプレッシャーから、パニックになりそうな状態をギリギリで堪えていた。
いつどうなってもおかしくなかった。
保険の申込み手続きの際、私が操作を間違え、いちからやり直しになった。申し訳なくて、全部嫌になって、無能な自分をこれ以上晒したくなくて、帰りたくて仕方が無くなった。焦りから、「家でやろうよ。」と言った。その場でやらなければいけないことなのに。
私の言葉に、彼は笑いながら「どうした?」と言った。よほど滑稽に見えたに違いない。私は何をしているんだろう。消えたい。死にたい。あ、泣きそう。いや、だめだ。不動産で泣くのは流石に憚られる。担当者にまで迷惑をかけてしまう。堪えろ。堪えろ。そんなことばかり考えて、なんとかその場を乗り切った。
お昼ご飯を食べて、帰り道に花を買った。花を買うと、少し元気になる。もう大人なのだから、自分の機嫌は自分で取らなければ。むしろそうでありたい。そんなこともできなくなったら、いよいよ存在価値がマイナス値を突き抜け公害になる。無能でもせめて無害でありたい。
帰宅後、花を生けて、あとはただ横になることしかできなかった。
彼に声をかけられ目が覚めた夕方。家主のライブを観るため、二人で渋谷へ向かう。
ツイッターを見て、チケットが売れていないのではないかと不安だったが、とんだ杞憂だった。そこには私たちと同じ、家主の音楽を聴くために、わざわざ雨の中足を運んだ人達でいっぱいだった。嬉しくなった。
好きな曲を聴けたことも、新曲の制作秘話が面白いことも、グッズを買えたことも、私の心を落ち着かせた。とにかく今日は、少なくとも今日は、もう大丈夫だと安心した。
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