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Goal設定とは、自分を殺す行為なのかもしれない

 Goal設定とは、ある種、自殺に近いかもしれません。
 私はそう思います。
 自分を殺すことで、新たな自己を創造する。
 それが、Goal設定の意義のように思います。
 
 なぜGoal設定とは、自殺なのでしょうか。
 その問いに答える前に、ゲシュタルトという言葉を知っていただきたいと思います。
 コーチングを日本に広めた苫米地博士は、ゲシュタルトについて拙著『コンフォートゾーンの作り方』で、このように簡潔に説明されています。
 
(引用開始)
 
 ゲシュタルトとは、人間の精神の全体性を持ったまとまりのある構造、つまり統合的な人格のこと。人間は潜在的には、複数のゲシュタルトを持つことができる。
 ただし、臨場感を持つ、ホメオスタシスを維持できるゲシュタルトは同時に一つだけ。
 
(引用終了)

 
 これを例を挙げて説明すると、バイリンガルは日本語のゲシュタルトと英語のゲシュタルトを持っていますが、表に出るのは片方だけ、ということです。
 つまり、日本人と話している時は、日本語のゲシュタルトが表に出て、英語のゲシュタルトは裏に隠れています。逆も然りです。
 
 面白いのは、日本語のゲシュタルトと英語のゲシュタルトは人格が違っている場合が多い、ということです。
 日本語のゲシュタルトは物静かで落ち着いていますが、英語のゲシュタルトはユーモアで会話好き、ということとあります。
 
 故に、ゲシュタルトとは人格とも言われます。
 
 これらのゲシュタルトが表に出る基準が、臨場感です。
 当たり前ですが、アメリカでは、英語のゲシュタルトの臨場感が高くなります。ほぼ全ての国民が英語を話していますからね。
 この時、日本語のゲシュタルトは臨場感が低くなり、表に出てくることはありません。
 しかし、一度日本人旅行者と出会えば、英語のゲシュタルトは引っ込み、日本語のゲシュタルトが出てきます。
 
 私たちは、皆それぞれ現状のゲシュタルトを持っています。これは、コンフォートゾーンとも言えるでしょう。
 その現状のゲシュタルトに、私たちはGoalのゲシュタルトをぶち込みます。
 いわゆるGoal設定です。
 すると、秩序立って安定していたゲシュタルトは揺らぎ始め、不安定な状態に置かれます。
 
 ある種、Goalのゲシュタルトとは爆弾に近いです。
 今まで満足していたことを不満に感じ、安らぎを感じていた環境が不快に変わります。
 例えば、今まで満足していたテストの点数が、急に悔しく感じます。なんとも思ってなかった友達の軽口が、なぜかとても不快に感じることもあるでしょう。
 
 これが、Goalの効用です。
 Goalを設定することで、私たちはGoalのゲシュタルトと現状のゲシュタルトの差が見えます。
 Goalに到達する為に、何が足りないのか。何を手に入れるべきなのか。どんな環境に身を置くべきなのか。
 それを思い知らされます。
 
(引用開始)
 
 私たちは自分が何者なのか、今どこにいるのか、これからどこに向かうのかを知らなければなりません。「現在地」すなわち現在の状況を知って受け入れることは「目的地」を想像して頭に刻み込むことと同じように重要です。(ルータイス「アファメーション」)
 
(引用終了)

 
 脳は秩序を愛し、安定した環境ではろくに働こうとしません。しかし、ひとたび混乱と秩序の状況に置かれると、無意識に創造性を発揮しようとします。
 これを、スコトーマが外れる、とも言います。
 
 私たちはGoal設定をすることで、現状のゲシュタルトを揺らがせます。
 自らを混乱と秩序の状況に置き、秩序を回復する為のエネルギーと創造性を生み出します。
 
 この時、現状のゲシュタルトの臨場感が高いと、“クリエイティブアヴォイダンス”という、逃げる為の方法を創造的に生み出してしまいます。
 逆に、Goalのゲシュタルトの臨場感が高ければ、現状のゲシュタルトは壊れます。スコトーマが外れ、Goalに向かって一直線に進みます。
 
 つまり、Goalを上手に設定できると、現状のゲシュタルトは壊れてしまうのです。
 壊れたゲシュタルトを回復しようとしても、Goalのゲシュタルトに臨場感を感じている以上、現状のゲシュタルトが再生されることはありません。
 
 だから、私はGoal設定を自殺と言いました。
 これまでの自分を殺し、新たな自分を生み出すのが、Goal設定です。
 だから、Goalとは現状の外であるべきなのです。
 もし、あなたのゴールが理想的な現状の場合、現状のゲシュタルトがそのゴールを取り込んでしまうのですから。
 
 私たちはGoalを設定することで、現状のゲシュタルトを壊したいのです。
 それができなければ、Goal設定とは言えないのです。
 
 思わず笑ってしまうようなGoalを設定し、後になって怖くなるような、そんなGoalが現状の外側です。
 良いGoalを設定できると、高揚と恐怖を感じます。
 どつせ達成できないんじゃないか、と追うのが怖くなります。
 
 例えば、私はふざけて「行けるでしょ」とGoalを設定したのですが……後で現実を知って、「想像の百倍難しいじゃん、どうしよう」と困ってしまいました。
 でも、それで良いと思います。
 
 第一声に「無理だ」「できるわけがない」と出るGoalが良いんです。
 そんなネガティヴセルフトークを、「簡単簡単」「私ならできる」というアファメーションに書き換えていくことで、本当に達成できるようになります。
 
 だから、もしあなたがGoalを設定をする場合、第一声に「無理だ」と出るような、けれど「これが達成できたら涙が出るほど嬉しいだろうなぁ」というGoalを設定してください。
 それが、機能するGoalです。
 
 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます。
 それでは、また。
 
 
 

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