タコピー

タコピー最終回目前で、考察厨フルスロットル状態なので備忘録としてメモ。ネタバレありです。

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やっぱり幸福論の話でしたね。「ユダを含めると使徒の数は13である」「ユダは本当に悪だったのか」「タコピーはユダ(≒思考)を差しているのではないか」「だから14で負の連鎖から抜けるのではないか」という事を推測していたんですけど。

あと「上流・中流・下流の毒親見本市」と呼ばれる中で「タコピーは世間の目or幸せな家庭で育った知能指数低めの人or或いは、親も知能指数が低くて、適切な対策が出来ない下流より下の家庭」のメタファーなのかなと思ってました。

これは多分、知能指数が求められる虐待家庭で育ち、それでいて周囲との交流を持ち続けていた、東くんタイプだと既視感あるはずです。私は割と初期の頃から「タコピーみたいなの多いけど、タコピー達はこの漫画で自分が揶揄されてるって気づけないんだよな」と。

しずかちゃんもまりなちゃんも、思考停止状態で二極思考のまま、自分の幸せの為にタコピーを利用するんですよね。考える人もいないし、会話するというコミュニケーションが取れていない。進撃の「俺たちはまだ話し合ってない」と同じですし、そもそも大抵の争いがそれで起きてるんですよね。

「14話」で「上流であり同性である東くん」が「タコピーと対話・考えることを教える」ということで、「無知の負のループ」から抜け出すんじゃないかなと(残り話数的にも)予想してたんですが。

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想像以上に東くんと同族意識を抱いたのが今回でしたね。一番リアリティというか、テーマ性からも作者の思考と一番近いのが東くんなのかなと思いました。

「曇らせ性癖ってだけじゃね」って思うロリショタコンも多いのかなと思いますけど、進撃のライナーと一緒で、心理描写に変に一貫性とリアリティがある段階で「Sは同時にMでもある」みたいなのと一緒だと思ってます。自分が屈折してるから屈折が性癖になっちゃった、みたいな感じですかね。

原因・環境→悩む→考える→屈折する→存在意義を探す→自己表現、っていうのが表現者に多いタイプだと思うんで。その過程で「世の中の人って考える力なさすぎじゃね?物質主義の二極思考じゃね?」っていう疑問を抱いて、それをテーマにしたくなるのめっちゃわかるなと思う。

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5話のサブタイが「東くんの介在」だったのに対して14話が「直樹くんの介在」なのがめっちゃいいなあと思いましたね。

「東家の息子」としての世間体ではなく、潤也と接することで「直樹」になったことで、自分が思っていることを素直に話せた。その結果としてタコピーに「考える=自分の価値観」というのを芽生えさせているのが良いなと。ああ、「潤也によって東くんの眼鏡の度が合う=視界が開けた」というのが一番直接的比喩だなとか。

東くんとタコピーのやりとりがまんま、若い頃の私と元彼だったので、前からタコピーと元彼似てるなと思ってたのも確信に変わりました。ああいう虐待で育つと脳内がデスノになって「バカしか信用できない=バカだから信用できる=心を許せる」んですよね。失敗して、その悪癖に気づくとこまでワンセット。

まりなとしずかは「二極思考的な視野狭窄による自分の幸せ」の為にタコピーを「使う」んだけれど、東くんだけがタコピーに何も求めていないんですよね。「救ってくれた兄が、自分のせいで不幸になるかもしれない」という状況でも、自分で考えたり行動するしかないと。

東くん的な虐待家庭だと「人に期待をした自分が悪い」という気持ちに陥りがちで、人に頼るということが出来ない傾向にはあるんだけど。良い意味で諦めというか悟りというか「自分の問題は自分で考えて行動しないと解決できない」ってことに気づいてるんですよね。

amazonのレビューの低評価一覧とかにすると「警察や学校等が虐待に介入しないのは、ネガティブなご都合主義」的な捉え方をされていて「タコピーだ!」って思います。そんなん全然ありますし、めちゃくちゃ残念な話なんですが、自分の人生の責任を取れるのは自分だけで。

あの年にして東くんがその思考になってるのは、ある意味ではアダルトチルドレンとしての共感があり、それが健全かどうかと思うと悲しいなとも思うんですけど。

ああタコピーを「馬鹿な熱血教師」とか「無能な児童相談所」って捉えたらわかりやすいのかもしれない。言いつけると余計に悪化する場面って沢山あるんだよねって感じかな。

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この作品のテーマはやっぱり、頭タコピーな読者に向けての「考えること、話し合うこと、多角的で柔軟性のある価値観を持つことがいかに大切か」を描いているようにしか思えないんだけれどね。タコピー達は脊髄反射で「胸糞漫画」「ロリショタ漫画」って捉えちゃうから、深く考えないし、自分のことだって気づけないんだよ・・・。

まあ、タコピー達が「わざわざ不幸な環境の人たちに寄り添うことで、思考を拗らせて手放しで幸せを享受できなくなる必要性はあるのか」って話にもなってくるんだけどね。

ハッピー星人は「虐待にあってなくて知能指数が低いから幸福条件のハードルが低い人たち」だから「ハッピー星人」と皮肉ってるんだろうと思うし。環境で前提条件が違い過ぎるし、助ける力があることって少ないんですよね。

でも、東くんの言ってるように「世界が狭い分思いきりが良いから、躊躇いなく手を差し出してしまう」タコピーみたいなのは決して少なくないんですよね。

私は東くんタイプだったので、相手がハッピー星人とわかったら必要以上の期待をしないし、期待をしてしまうことでハッピー星人が減らしたくないという気持ちで接していました。タコピーのハッピー道具じゃ自分の問題を解決する手段が無いし、って感じですかね。

4/4に下巻発売っていうので「死」かと思ってたんですけど「4合わせ=幸せ」なのかもな、と書きながらちょっと思ったり。

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話数的に、来週には終わっちゃうのかなと思うんですけど、こんな楽しみにした漫画久々過ぎるんで辛いですね。絵柄も内容も全部好きなんだよなあ。最終回どうなるんですかね。

タコピーがいくら成長しても、しずかを説き伏せることは難しいと思うんだよな。

しずかの表情について「本人から右側(左脳)が外向きの顔、左側(右脳)が本音の感情」って考察を見てたんですが、14の最後は逆だったのが印象的でしたね。今までは「外向きは明るく、内面は闇深」だったのが「外向きは闇深、内面の目は輝いている」描写でした。

12の最後の「一週目の世界線でのしずか」がこの真逆なのでその対比なのかなとか。13で東くんを落とすしずか(両目闇落ち)に「なんだか目が怖くて」タコピーは対峙せずに帰るんですよね。

タコピーの判断基準は今まで「右側の表情」だったので、14のラストとかめっちゃ怖く見えていると思うんですが。話しかけて対峙して問題に向き合う姿勢で終わるのが「成長の描写だな」と思いました。愛を知ったっていうのもあるんだろうなと。問題に対峙せず、衝突を回避し続ける交際は続かないからね。

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でもなあ、しずかを納得させるのはどう考えても無理な気がするんだよなあ。タコピーが星に帰って「自分が干渉した事実を消す」っていうのが一番想定し得るハッピーエンドルートなんだよな。

タコピー鬼つええ!から、しずかがタコピーを消すことは出来ないだろうと言われてたけど。しずかは子ども監禁したり一年くらい逃げて東京から北海道に戻ってきたりハッピー道具を使いこなしてるからね。ゲンドウ的「神殺し」をする可能性も全然あり得るなとか。

ああ、でも東くんがハッピーカメラをタコピーに返してましたね。

手描き作品でかつこういうテーマ性の強いものは、基本的に意味がないことは描かれないので、かなり重要なポイントなんだろうなあと。「東くんはタコピーを使おうとしていないこと」という描写なのかもしれないけれど。

ハッピーカメラが直ってて、この世界線から脱出が一番幸せですけど。それが出来たとしても「やり直しのきかない本当の人生から逃げた」という事になるし。

直ってなかったとしたら「タコピーがまりなを殺した鈍器」でしかないんだよね。「まりなちゃんを助けられない以上、等しくしずかちゃんも殺すっピ!」か、話し合おうとしてキレたしずかが「タコピーも敵なんだね」って殺しにかかってきて正当防衛でしずかを殺すビジョンしか浮かばねえよ・・・。「しずかちゃんを殺した衝撃でハッピーカメラが直ったっピ!」まであるから怖い

今ざっとまた読み返したけど、東くんがわざわざ「ハッピー星にはさ、時間巻き戻せる道具あんだろ」って言及してるのが布石なのかね。8話からアプリの一覧でのサブタイトルが表示されていないのは、上巻収録(7話まで)の関係なのか、なんかタイムリープの地点的な意味あるのかね。まりなが発掘されるところなんだけど。

進撃の巨人と一緒で「テーマ性はわかるんだけど、どう落とすのか全く想定ができない」っていうのが面白いよね全く。ハッピー星には帰るんだろうな多分。

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