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無題

 言葉を紡ぐことは心を整理すること。どうせいつもと同じことしか書けないけれど、それでもいいとnoteを開く深夜。3時を過ぎた。

 音楽は救いだけど私のような人間を救う音楽はそう多くないのかもしれない。今日は何も響かない日。これまで私に合うとか心情にぴったりとかで他人から貰った音楽をリストにしているので、それをずっと流している。音楽そのものが救いでなくてもこれが他人が私を思って選んだ音楽である事実がこの死にたさも和らげてくれる、きっと。

 他人に貰った音楽はあまり人に教えないようにしている。なんだか貰ったラブレターを人に見せびらかすような気持ちになってしまうから。他人のくれた音楽をラブレターと並べるのは気恥ずかしいが、しかし事実、音楽というのはラブレターである。いや、言うなれば贈り物だ。あなたを思ったらこんな歌詞を思い出しましたという表明はプレゼントだ。多分。

 気がついたら眠っていた。15時。今は電車に揺られながら、12時間前の私が書いたものを眺めている。4連勤の3日目。イヤホンをすり抜けてくる幼児の大声にイライラして、隣の人の貧乏揺すりにイライラして、外国人観光客の話し声にイライラして、泣きながら膝を殴る、早く助けてください、心が狭いこんな私を、どうか。

 家を出る数十分前まであまりに酷い精神の不調に泣き続け、職場に休みの連絡をしようかと電話帳をスクロールして、今日が誕生日の子が私に会いに来る予定があったことを思い出してやめた。お金を払って会いに来て、お金を払って祝われてくれるのに、わざわざ遠くから店まで来てくれるのに、それを放棄することはできなかった。嘘、ただ私が、彼女に失望されたくなかっただけかもしれないけれど。

 自分を生きることすらままならないのに、そんな精神状態で他人を楽しませるなんて無理な話だ、こんなこと、どうして出来ると思ったのかな。泣きながら職場に向かって、どうにか笑顔を振りまいて、泣きながら帰っている、別に職場が嫌なわけじゃなく、お客さんも同僚も嫌いなわけではなく、私が笑顔を保つことが下手なだけ。私の心が安定していればもっと楽なんだろうな。

 19時、休憩。食事も喉を通らないが空腹は誤魔化せず、大盛りの唐揚げ丼を胃の中に流し込む。吐き気がする。笑顔にも限界が来ているので帰りたいところだが誕生日の彼女はまだ来ない。お祝いするのは楽しみなので、それだけを糧に耐える。
 人間産の音が嫌すぎて、休憩室でイヤホンからありえないボリュームの音楽を流している。孤独。早く助けてください、救ってください。

 残業のち退勤。電車に乗る23時、結局ラストまでやりきった。精神のスイッチが切れるのが分かる。地下鉄の走行音がイヤホンを貫通して、苛立ちが募る。帰路は長い。

 ここから少し色々書いたらもう終わりにしよう。一日が終わってしまうので。

 おもむろにTwitterを開いたが最後、好きな人間のネトストがやめられない。普通の人間は好きな人間のフォロワーやいいねが増えていないか確認しに行かないらしい。普通の人間は好きな人間のツイートを遡る際に「ツイートと返信」を押さないしリプを開かないしリプ先のアカウントを覗かないらしい。好きな人間のフォロワーのフォロワー欄を見て別垢を探したりもしないらしい。恋愛感情など全く関係なく好きな思想の人間には普通にやってしまうが、どうやらこれらは異常らしい。全てを知り尽くしたいだけなのに。私の愛は歪んでいますか。

 Twitterに蔓延る惚気ツイートはもちろん、愚痴ツイートを見ても、こんな風に怒れるほど好きな相手がいれば、と思ってしまう。特定の彼と、彼女と、そうなれたらと思うことがないといえば嘘だ。気になる人間に出会うことはあって、その度に好きになれたら幸せだろうなと考える。たとえ愚痴を言うような関係性だとしても、好きだから抱くわだかまりは愛おしいものだろう。美化されているだけだろうが。

 思想が好きですとかことばが好きですとかうさぎやさんのアカウントではいくらでも言えるのに、どうして他の場所になると声すら掛けられないのか、つい数週間前まではなんの気なしに連絡を取り合っていた人間に一言送ることにすら緊張してしまうのはどうしてなのか、いいねひとつ押すタイミングにドギマギしてしまうのはなぜなのか、この行動の理由に、感情に、名前を付けないで生き続ける方法について誰か教えてください。

 誰かに嫌われることなどすっかり慣れていて、人の目を気にして行動を変えたりしない人間だからこそ、誰かに嫌われないように動くのがあまりに難しく、そして嫌われたくないと思って行動することが罪のように感じられる。孤独の副作用。

 友人であるはずの人間に別のかたちの好意を抱いてしまうこと、全ての破壊にしか繋がらないと思えてしまう。あなたのことをそういう感情で好いていましたというのは裏切りであろうか。ただあなたのことを一等好意的に思い誰よりも愛おしく感じていますと言いたいだけのことが罪であろうか、いや。

 帰ります。もう眠る人たち、良い夢を見てね。

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