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痛みを抱える

 これまで誰ひとり取り合ってくれなかったような私のくだらなくて醜い感情にさえきちんと向き合ってくれるところ。とてもやさしくて素敵だと思う。悔しい。

 前にも言ったことがある。やさしさは、受け取り手がどう思うかで決まる。私がやさしいと思ったら、それはやさしさだ。打算だとしても、偽善だとしても、そう見せようという恣意があったとしても。だから私がやさしいと思ったあなたを、どうか、否定しないで欲しい。

 本当は苦しいし悲しい。何度だって辛くなるし、いくらか無理をしている。こんなことを言うとあなたはまた自分のせいだと申し訳なさを感じるのだろうか、そう思うとすごく苦しいけれど、好意ゆえの苦しさや辛さは何も悪いことではないと思う。
 片思いだろうと両思いだろうと、恋愛がある程度の痛みを伴うものであることくらい、とうに分かっている。かつての私にはそんな痛みさえきらきらして見えていたし、誰かを想って泣きたいなんて本気で思っていた。あなたを通して得られること、全部が悲しいなんて思っていない。この痛みごと抱えることを愛と呼びたいから、どれだけ泣いたって自分の感情をきちんと受け止める、その覚悟くらいはある。

 だけど、あなたを、あなたとのささやかな幸福を、いつかこの手で壊してしまうこと、そうして生まれるであろう痛みにだけは、どうしても耐えられる自信がない。どんな言葉も行動も破滅への一歩に感じられてしまうけれど、あなたを、あなたとの幸福を失って、喪失感と耐え難い痛みを背負って泣く日が来るくらいなら、何も得られなくていい。こんな感情は、何ひとつ、知ってくれなくていい。
 あなたを傷つけたくない。わたしはただあなたに少しでも幸福であってほしいだけなのに、悲しませてしまうことが怖くて仕方がない。どうか幸福でいてくださいと願うくせに、自分の与り知らぬところで笑っているあなたを思い浮かべては泣いて、エゴばかりが邪魔をする。そんな自分勝手な私がいつかこの手で傷つけてしまうのが恐ろしいから、今も上手く言葉を紡げないでいる。

 一緒に幸せを掴みに行けるような強さがあったら、その手を引けるような自信があったら、こんな不安に泣く夜だってなかったかもしれない。私のことを好きになってほしいなんて、大層なことを言えたのかもしれない。

 あなたの持つ強さも弱さも、やさしさも痛みも、全部愛せるのに、抱きしめられるのに、この腕で全てを潰してしまうのが怖くて、一歩を踏み出せない。強くなりたいと願ってやまない。

 こんなものはラブレターと同じで、だけどあなたに直接渡すことは今の私にはきっとできないから、こうしてインターネットに綴っている。性格の悪い私の、重苦しくて、痛々しくて、偽善と打算とエゴで出来た感情を、どうかあなたがやさしさだと思いませんように。

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