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好意の行方

 あ、この恋ってこの先どうにもならないんだなー、なんて、ふと思ったら馬鹿みたいで笑えてきた。

 こんなにも好きだけど多分傍から見ればくだらないネット恋愛でしかなくて、私があの人のことを好きだと本気で思ったきっかけだって他人にとってはきっと些細なことに見えて、チョロいとか浅い言葉で形容されて馬鹿にされて。
 ずっと抱いていた淡い好意とか、勇気を出して会いに行ったこと、対面するのが怖くて何度も前髪を直したこと、緊張で上手く話せなかった時間、あの人を思って泣いた日、今の不安、恋としか呼べないこの気持ちも、他人から見れば全部くだらない茶番でしかないんだろうな。

 それは多分周りからだけじゃなくて、あの人から見たってそうなんだろう。上辺の姿に好意を抱いて、多くもないやりとりに一喜一憂して、あれが好きこれが好きと泣いている私なんて道化でしかない。あの人にとっても奇妙に映るかもしれない。だから好きですなんて到底言えやしない。困らせてしまうくらいなら黙っていた方がいい。

 好きと言われれば意識するよ、なんて戯言だ。友人だと思っていた人からこんな重い好意を向けられていたなんて知れば誰だって気味悪がるだろう、私の恋はいつでもそうだったし、これからもきっと同じだ。別に幻想を愛しているわけじゃない。今見えているところが好きだから、見えていないところも好きになれると思っている。私にとってはただそれだけのことだけど、きっと都合のいいまぼろしにうつつを抜かしているようにしか映らない。誰の目にも。だから言えない。

 言えもしない恋に始まりなどないし、それならばもっと仲を深めれば良いなんて人は言うけれど、多分「ずっと前から好きでした」と言える日は来ない。私に好意を向けられること自体が他人にとって気味の悪いことでしかないとどこかで思っていて、それは多分幼い頃のトラウマに起因する感情だと分かっているけれど、それでも、これを克服なんて出来る気がしなくて。私の好意は気持ちが悪いから、ぶつけることは罪に等しいと思えてしまう。

 かといって気持ちを隠していれば隣に居られるような関係性でもない。私はあの人にとって有象無象の知人、もしくは友人の一人でしかなく、これから先もその認識はきっと変わることなどないだろうから、こんな恋に意味はあるのか、もう分からない。何も無かったことになればきっと幸せで、だけどもうあの人のいない生活を忘れてしまった。私は四六時中あの人のことを考えているけれどあの人の中で私は連絡が来たときだけタイムラインに流れてきたときだけ思い出すただの知人で、それ以上でもそれ以下でもないだろう。そんな傾いた天秤をどうにかする方法も思い浮かばないし、これから先この無意味な好意を積み上げ続けていたらいつか壊れてしまうから、それならいっそ全て壊してしまった方が、なんて。

 どうにもならない恋をし続ける覚悟も捨てる覚悟もない自分に笑えてきて、悲しくなって、こんな時間に涙が止まらない。助けて欲しいのに助けてと言える相手などいないし、そもそもこの感情を他人が救えるわけがなくて、これを整理できるのは私しかいないのだと絶望する。

 もう許してくださいと神に祈る、神などいないのに。こんな恋を始めたのも私なのに。

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