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【提唱】 UltraLight Recording

1.ウルトラ・ライト・ハイキング

アウトドア好きの方なら「ULH = UltraLight Hiking」という言葉をご存知かも知れません。山歩きやロングトレイルにはそれなりの装備が必要になり、不測の事態に備えるほど荷物も重くなる……そんな価値観の逆とも言える、「荷物が軽ければ自然をもっと身近に感じられる」というような思想が「ULH」なのです。“軽さ” は手段であり、“自然と繋がること” が目的! 私はこの「ULH」を、ハイカーズデポ・土屋さんの著書で知りました。

2.「何で録るか」 より 「何を録るか」

通常、オーケストラやオペラの収録には、トラック1台分かそれ以上の機材が必要だったりします。これには、マンパワーはもちろんそれなりの経費も必要です。そういった録り方でしか得られない結果があるのは重々承知していますが、技術者として意識はつい「どんな機材を使って、どうやって録るか」に向いてしまいます(もちろん、録っている間は音楽に意識が集中しますが)……私はふと

「荷物が軽ければ、音楽をもっと身近に感じられるのでは?」

と考えはじめてしまいました。

高価で高性能な機材を八百屋のように並べれば素晴らしい録音をしているように見えるけど、果たしてそれは本当に素晴らしいのでしょうか。

3.最適解は、ワンポイント・ステレオ録音

サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現:セイジ・オザワ 松本フェスティバル)の録音などに携わったご縁から、名バランスエンジニア、オノ・スコルツェ(Onno Scholtze)氏が晩年たどり着いた「ワンポイント・ステレオ録音」の手法を関係者から伝授いただき、数年に渡って研究・実践を重ねてきました。オノ氏も若かりし頃は何本ものマイクロフォンを用いて録音していましたが、最終的には「1対のマイクロフォンで録れる」という境地に至ったようです。つまり、経験に裏打ちされた方法といえます。

4.いかに軽くするか

「ULH」楽しみのひとつが “道具をいかに軽くするか” で、歯ブラシの柄を半分切り落として数グラムを削ったりと工夫する(もはや病気?)わけですが、例えば「防寒着を持たずに気合で乗り切る」みたいなことは生命を脅かしかねません。録音もしかり、軽量化をやりすぎると品質が犠牲になってしまうので、重量と録音品質&信頼性とのバランスが重要になってきます。

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現在、キャリーケース(スーツケース)に機材一式が収まっているので、ここからさらに削ぎ落として、バックパックに収めます。オーケストラも録れますよ!

5.UltraLight Recording

ここ5年ほど、キャリーケース1つで録音に赴くスタイルを研究&実践してきました。200万円近くするコンパクトなアナログミキサーも購入しましたが、それでも決して身軽ではありませんでした。なぜなら当初は “機材をコンパクト化” したものの “手法は従来の延長線上” にあり、「ワンポイント・ステレオ録音」という思い切った舵取りができていなかったのです。私はどこかで、モノに頼っていたのでした。

さて、『365日のシンプルライフ』という映画があります……やはり、モノでは幸せになれないのです。巷には「この機材が素晴らしい!」「このプラグインは最高!」といった記事が溢れているけれど、それらは手段であり真の目的ではありません。

もちろん、機材が限られるがゆえ制約はあります。「プロとしてどうなのか?」と思われる方もいるでしょうが、私は「プロだからこそ出来る」と自負しています。プロの力量・経験値で不足部分を補えるからです。

私はここに「UltraLight Recording」を提唱し、録音をもっと身軽かつ気軽なものにするための情報を発信していきたいと思います。

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