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歩く = 点と点とが線になる

2022年に歩いた「信越トレイル」は、私にとって初めての “ロング・トレイル” だった。アメリカ3大トレイル(PCT、AT、CDT)と比べれば 110km などまったく “ロング” ではないのだけれど、程度の差こそあれ「まとまった距離を歩く」という行為に違いはない。

例えば東京 - 大阪間を新幹線で移動したら、その間は単なる「キョリ」でしかない。車窓からの眺めはあるにせよ、「田園が広がってるな」「ビルが多いな」と、その程度だろう。

ところが、信越トレイルのように山中だけでなく集落なども通り過ぎると、「暮らし」が何となく見えてくる。東京で満員電車に揺られ平日5日間通勤している人からしたら、「こんなところにも生活している人がいるのか!」と驚くかも知れない……これは、スルーハイクしてみての一番の収穫ともいえる。

つまり、「自分の暮らしは、ほんの一例。日本には見えていない世界がごまんとある!」という実感。もし現状に思い悩んでいるなら、ずいぶんと心が軽くなるかもしれない。だって、ものすごく小さな「点」しか見えていなかったところに「線」が立ち現れたら、見通しがよくなったように感じられそうだもの。

信越トレイルを歩いたとき、ついでに音を録ったら7時間超にもなって、それらをまとめて CD『74分間の信越トレイル』をつくった。

まさに「点」をたくさん集めたような作品なので、一箇所に腰を据えて録ることが多いフィールド・レコーディングものとしては珍しいかも知れない。

このCDを聞いて、「様々な点」から信越トレイルが立ち現れてくれたら嬉しいし、「信越トレイルを歩いてみたい!」と思ってもらえたら望外の喜びであります。


おまけ


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