見出し画像

ホップの形と機能

ホップフォワードなビールの人気はとどまるところを知らないようです。"ホップをどっさり使った"と謳う作品を目にする機会は非常に多いですね。Hop Culture風に言うならばAmarilloからZeusまで、ホップの品種も数多く存在し新種も次々に開発されています。今回はそんなホップのお話ですが、品種ではなくその形状・形態およびその機能に焦点を当てていきましょう。ホップは見出し画像のような毬花の形だけでなく、様々な姿に加工されてビールの素材として使われています。

フレッシュホップ

読んで字のごとく畑から収穫されたばかりの生のホップ。ナマモノですから収穫後、なる早で醸造工程に向かわねばなりません。概ね収穫後24時間以内にビールに投入される例が多いようです。フレッシュホップビールを醸すにはホップの生産地と醸造所が近接している必要がありますね。

ホップの収穫時期は8月前後、そこからビールが仕込まれてちょうど今の時期にフレッシュホップを使ったビールがリリースされてくるわけです。日本産ホップ推進委員会のフレッシュホップフェストによると4〜8月をホップ栽培期、8〜10月をフレッシュホップビールの醸造期、9〜10月をビールを楽しむ時期と切り分けています。

乾燥ホップ

一般に、収穫されたホップは品質を保つために熱乾燥されます。こうすることで保存性が向上し時期を問わずビール造りに使用することが可能になるわけですが、一方で、ホップの本来持っている香味成分が乾燥工程で多少なりとも飛んでしまうのは避け難い課題。フレッシュホップを使ったビールが季節限定スペシャル商品になる所以ですね。

ホップペレット

乾燥させたホップを粉砕、圧縮して錠剤のような形に固めたものがホップペレット。乾燥させているので保存もOK。粉砕前のいわゆるホールホップよりコンパクトになるので輸送や保管もしやすいいため、現代のビール造りにおいて主流となっているホップの形態です。

Cryo Hops / Yakima Chief Hops

ここからは形状・形態というより商標や商品名です。Cryo Hopsは世界的ホップサプライヤーであるYakima Chief Hopによる技術で、ホールホップを香味成分であるルプリンと苞葉に分離しペレット化したもの。

通常のペレットのおよそ2倍のホップ樹脂を含有しており、同量使えばより強いホップアロマを得ることができます。あるいは、従来と同程度のアロマを得るために必要なペレットの量は大きく減ることになります。結果、ドライホッピング時にペレットが吸収してしまう水分量を抑制し、最終的なビールの収量を改善することができます。

INCOGNITO / John I. Haas

これまた大手ホップサプライヤーであるHaasですが、興味深い製品群をラインナップしています。INCOGNITOを始めとする、ホップの香味成分を抽出濃縮した液体。

INCOGNITOはワールプールに投入することでビールに豊かなホップフレーバーを付加することが可能。ドライホッピング用のSPECTRUM、ビタリング用のFLEXという製品もある様子。固形物を含まないため、ビールに与えたいホップ成分を十分に添加しても水分を奪われないのが美点です。

ドライホッピングが抱えるジレンマ

ホップフォワードなビールに不可欠な技術となっているドライホッピング。前述のとおり、ホップの強烈なアロマ・フレーバーを求めて多量のホップペレットをビールに投入するとペレットがビールを吸ってしまいビールの最終収量が減る、という問題があるわけです。ホップサプライヤーの技術革新の結果、YCHはより濃縮されたペレットであるCryoを開発し、HaasもLUPOMAXという似た製品をポートフォリオに持っています。またINCOGNITOのようなホップ抽出物は、YCH側にもCO2 Extractという商品名で存在しています。

こういった技術は、よりホップフォワードなビールを実現しつつビールの収量を減らさないことに加え、輸送や保管にかかるコストを低減し、ホップかすのような廃棄物を削減するという面から、ブルワリーの資源効率化・ローエミッション化にもつながっています。

ということで今回はホップの形に目を向けてみました。それでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?