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ビールは注ぎで完成する、そのとき何が起きているのか

醸造工程を終えたビールは瓶や缶、あるいは樽に詰めてブルワリーから出荷されます。そして飲食店や自宅でグラスに注がれることで商品としての完成を見ます(一部、缶から直接飲むことを推奨しているブルワリーもあったりしますが、一般論として書いています。)。では、どうすれば美味しいビールを注ぐことができるのか、グラスの中で何が起こっているのか、プロのお知恵を拝借しましょう。今回はそんなお話です。

1.ビールスタンド重富:重富寛氏(動画)

広島の名人、重富さんから、その名もずばり「プロ仕様」です。グラスを構えて前方へ傾け、さらにビールと反対の外側へと傾けた位置でビールを注ぐことで、ビールに反時計回りの回転を与えつつ美しい泡を生成していますね。実際にやってみるとわかるのですが、この注ぎ方はグラス開口部へのアプローチが非常にシビアです。ビデオで重富さんが仰るように最初は空き缶の水なんかで練習するのが良いでしょう。

2.ゆうやボーイズ:林ゆうや氏(動画)

クラフトビール業界の最終秘密兵器が、遂にYouTube界に進出!ということで約1ヶ月前からYouTube動画を配信している言わずと知れた代々木Watering Holeの林ゆうや氏。動画では2通りの注ぎを披露していますが、まずはグラスを傾けてビールを注ぐことで液体の対流を起こしつつ、ビールにダメージを与えずにグラスへ移すことが重要と説いています。続く注ぎ方では積極的に泡を作りつつ、苦味や雑味、炭酸のコントロールを説明しています。

3.八木文博氏

過日、幸運にもニユートーキヨーのレジェンドの注ぎを拝見する機会を得ることができ、更には様々なお話を伺うことができました。興奮のあまり動画等が手元にありません。ひとまず八木さんについては以下のリンクでご紹介に替えます。

スイングカランから勢い良く飛び出す黄金の液体をジョッキに受け止め、ものの数秒で美しいヘッドを伴う美しいビールに仕上げる技はまさに職人芸。その流量は家庭の水道全開と同等ぐらいに見えました。曰く、ビールは一定方向に渦を巻くように回転しながら出てくるとのことで、これは地球の自転によるコリオリの力が関係しているのでしょうか。そのビールをグラスの内壁へ導き滑らかに対流させ、きめ細かな泡とともに一杯の芸術的なビールが生み出されます。印象的だったのが「ビールがもまれないように注意する」という表現。

まとめ:対流と泡のコントロール

3人のプロの注ぎ方に共通するのは、ビールに対流を与えて注ぎ泡立ちを制御するという点かと思います。グラスの中心軸に対する横方向のスワール回転やビールの流量、グラスの角度によって泡の生成を調整することでビールの仕上がりをコントロールしていますね。ビールの泡はホップの成分とビール中のタンパク質等の物質および炭酸によって形作られますので、当然ながら味わいや口当たりに大きな影響を与えます。

個人的には重富さんのプロ仕様をベースに試行錯誤をしておりまして、最近は缶売りのピルスナーウルケルでハラディンカ(Hladinka)を再現しようと色んな注ぎ方を試しているところです。それらしい味わいにはなるのですが、タップスターの注ぐウルケルとは当然ながら全くの別物…。泡切り3年注ぎ8年、やはり奥が深いですね。ではまた。

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