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フードロスとクラフトビール、一抹の不安

食品ロス削減推進法なる法律も施行され、何かと五月蝿い話題のSDGsの目標12に包含されるフードロス問題。地球的課題であるところに異論はありませんし、様々な取り組みが行われている点は興味の対象でもあります。そのひとつとして「賞味期限が近い食品をお得に購入しよう」的広告が目に入りまして、思うところがありましたので久々に記事化しておきます。

当該広告を出稿している企業は、フードロス削減を目指す生産者から商品提供を受けこれを消費者に販売するECサイト的なビジネスモデルを展開しているようです。そしてその商材にどうやらクラフトビールも含まれているようなのです。国内で流通するクラフトビールも、他の食料品と同様に賞味期限が明記され販売されます。期限切れでロスになることを思えば、手頃な価格設定で在庫を掃こうというのも悪くない取り組みでしょう。

一方で、そもそもビールは生鮮食品ですので時間経過による味わいの変化は避けられないもの。造りたてのフレッシュなビールが持つ魅力は基本的には時間の経過とともに失われていくわけです(敢えて寝かせておいてその変化を楽しむことはありますが、議論をシンプルにすべく本稿では一旦忘れます)。

危惧するところは、手頃な価格設定を理由にクラフトビールビギナーがこのような商品を手に取ったとして、時間経過の結果として本来の魅力がスポイルされた状態のものを入り口として味わってしまい、結果的に「クラフトビールたいしたことないじゃん」と思われてしまうことです。

クラフトビールに知見があれば、経年変化を理解しつつ商品の状態を評価し、納得の上で安価に楽しむこともできるでしょう。その意味で冒頭で触れたような流通形態にはひとつの意義があることでしょうし、同企業およびビジネスモデルを否定するものではありません。ただし、クラフトビールシーンを担ういちファンとして、上記のような一抹の不安は指摘しておきたいのです。売れるコンテンツとして売りやすい文脈に乗せられて消費されるだけでは、下手をすればシーンにとってマイナスになりかねないということです。

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