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起業したデザイナーはいつまで手作業を続けるべきか

「デザイナー(または技術者)はいつまで手作業を続けるべきか」という話は定期的に話題に上る。おじさんデザイナー同士だとそういう話をたまにするけど、個人的には、どう生きたいかという問題だと認識しているので各自の好きにすればいいと思っている。

じゃあ「起業したデザイナーはいつまで手作業を続けるべきか」というお題になると、ちょっと難しい。いや、これも厳密には好きにすればいいんだけど、会社となると社員がいる、その社員が快適に仕事できる環境を作るのも社長の仕事の一つなので、デザイナー兼社長がデザイン作業ばかりやってると、そういった会社のこと全般に時間を割けなくなってしまう。これが大きなデメリット。

メリットもある。好きなことをずっと仕事にできる。提供するデザインの大半が社長依存なので、デザイナーとしてのスキルが高ければ、サービスの品質は安定する。自分のスキルが高いほど、スタッフもスキルの高い人が集まってくる可能性が高くなる。うまくいけば屈強なクリエティブ集団になる。

デメリットは最初に言ったように会社や社員のことを考える時間が少なくなること(離職率にも影響する)。そして、メリットの裏を返せばサービスの品質が属人的すぎるということ。あと相当ハードな偏見だけど、社員のスキルが社長の一歩手前で止まってしまうケースが少なくないこと。逆に非デザイナーが社長の制作会社の方が各個人の伸び率は良いように思う。そして、デザイナー社長のスキルが置いていかれた時に廃業が近づいていくだろう、ということ。

そう考えると、少なくとも手作業しない方が効率良い気がするけど、じゃあなんで起業したんだろう、デザイナーなのに社長業をやりたっかったんだっけ、となる。

なので実際はそのあたりバランスよくやったり、手作業はしないけどデザイナーとしてあり続けたり(それでも私はデザイナー : could)、うまくバージョンアップしていくことが理想的なんだと思う。


ここで私の話。うちは10期目を迎えた小さなWeb制作会社。デザイナーとして制作業に関わってきた私は、起業後もずっとデザインやコーディングの手作業を続けてきた。ざっくり9:1くらいの割合で制作全般に関わってきて、残りの10%の時間で事務とか経営のことを考えてきた。

そういうスタイルでやってきたこともあり、会社の規模は大きくなっていない(スタイル違っても似たりよったりだと思うけど)。創業時も社員一人で、今も社員一人の二人体制。一番多い時期ですら三人体制。で、大体2〜3年経って辞めていく。これはその、私が社員のことを考えている時間が少ないせいですね。。私のせいです。はい。

ただ、労働環境は気にしていたので、創業時と比べると、勤務時間は減って売り上げは上がっているので、何もやってこなかった訳でもないんですよ、という言い訳を残しつつ。

で、10期目を迎えた今、なんと、ようやく、会社のことというか、デザイン業より社長業に興味を持ち始めるようになってきた。9年かかった。自然と「自分が」ではなく「会社や社員が」とシフトするようになってきた。

私の個人的な興味対象がデザインよりも経営や営業のこと、Web制作の作業よりもWebサイトの成果の方により関心がいってしまったからだ。あれだけこだわっていた余白も書体も1pxも、今はちょっと、うん、ちょうどよければいいんじゃない、と良くも悪くも感覚が軽くなってしまったのだ。これはもう手作業続けるべきじゃないなと思ったのです(ね、いや、そう書くとデザイン品質と成果は関連性ないのかと言われそうだけど、それはまた別の話で)。

会社を大きくしたいわけではないけど、自分のスキルよりも、社員のことや、会社が提供するサービスの品質を高くしたい。と意識的ではなく、自然に思えるようになったので、やはり転機かなと。起業1〜2年目でそうなってればまた違った景色を今見てると思うのだけど、当時はまだエゴが強かったからね、誰に何を言われても何を読んでも、腹に落ちなかったんだと思う。

キャリア10年以内にディレクターになった友人たちがいて、私のように20年くらいで転機を迎える人もいて、30年以上も現役で手作業をしている諸先輩方がいる。性分だよね、自分の好きなように生きればいいと思う。


という記事を書くことで、覚悟をもって会社に向き合っていければと。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。

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