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デザインの師匠-#04 工業デザイナーからの脱却-

S.KONDO

「#03 プロダクトデザイン」で話しをした、アッシュコンセプトの名児耶秀美氏と一緒に商品開発したマッシュルームスツール。匠工芸の中井啓二郎氏のデザインで、私はアシスタントとして尽力した製品。プロダクト的な家具デザイナーとしてではないが、自分もチームの一員として手掛けたはじめてのデザインプロジェクトであった。

発売当初から、マッシュルームスツールの主要な販売店であるセンプレデザインの田村昌紀氏との出逢いは、「ものをつくることが目的でゴールではないこと。」を教わった。センプレデザインは、マッシュルームの開発の直接的なメンバーではなかったが、商品開発の初期段階から、このスツールは、センプレのショップに並べたい。私の個人的な想いから、発売前から何度もラブコールをしていた。

元々、パッケージがなく、組固めだったこのスツールをどう販売するか、匠工芸のスタッフとして、センプレデザインにこのスツールを持ち込み、田村さんから、アドバイスをもらって、私がパッケージの制作を推進、パッケージデザイン、グラフィックのディレクションを手掛けた。従来の大型家具のように、販売後にメーカーから発送するのではなく、ショップで購入して、すぐに持って帰れる様に工夫した事は、インテリアショップを経営する、田村さんならではのユーザーの利便性を考えた視点で、メーカーであった匠工芸には無い切り口だった。パッケージがある事でギフトとしても成立する。

冒頭でも述べたが、このスツールは、わたし自身は直接のプロダクトデザイナーではなく、師匠である啓二郎さんのデザインなのですが、自分のデザインでもあると思っている。初めてプロジェクトの一員としてデザインした製品だからだ。当初3種類だったSHに500のサイズを追加したのも、田村さんのアドバイスだ。

「心地よい暮らし」をコンセプトに、海外の家具や洗練された雑貨が並ぶセレクトショップ「SEMPRE(センプレ)」。自分がデザインしたプロダクトをセンプレデザインで取り扱ってもらいたい。そう思い、飛び込み営業をかけていたのだが、匠工芸の従来の家具では、なかなか実現できなかった夢を、名児耶さんが開けてくれた。

田村さんの販売の現場からの目線でのジャッジは厳しく、日本でも有数のインテリア、デザイン小物のセレクトショップに自分達の商品を取り扱って貰える事は、優れた商品としてのお墨付きを得たともいえるほど、センプレというショップの存在は大きい。

その後、田村さんとは、センプレオリジナル家具のOEMの商品開発を手伝わせていただく機会を得て、家具・インテリアデザインの仕事を一緒にする中で、メーカーでは当たり前の、つくり手側からの積み上げ式の価格設定では無く、生活者であるユーザー目線と市場価格からの価格設定を学んだ。これは、暮らしを豊かにする道具としての家具の価値を、適切な価格でユーザーに届ける視点を知る機会となった。

マッシュルームスツールの商品開発は、旭川家具メーカーのクラフトや作家的なものづくりから一歩進んだ、販売の現場と一緒につくりあげた商品となった。

アッシュコンセプトの名児耶さんのプロデュースと、田村さんとセンプレデザインの全面的な協力によって、私にとっては、ユーザーに、より近い思考で生み出された商品を世に送りすというはじめての経験となった。

田村さんは、工業デザイナーという枠組みに捉われない生活者目線で、デザインを考えるようになりました。と、とあるインタビューなどでおっしゃってました。

工業デザイナーからの脱却、ライフスタイルショップまでたどり着くまでに、インハウスデザイナー、海外メーカーの日本市場の開拓、マーケティング、インテリア商品開発、インテリアコーディネート、家具、室内商品の市場調査、開発企画、コンサルティング業務など、幅広い領域にわたって、日本のデザインの最先端で活躍されてきた田村さん。

日本のDESIGN FarmのTakramが言語化した、今で言うビジネスデザイナーや、サービスデザイナーの先駆けなのだろうと感じている。その様な言語がなかった時代から、○○デザイナーという、肩書きが必要の無い、独自のセンプレデザインというデザインの領域を創造されてきた先駆者であろう。そんな田村さんのプロジェクトをサポートできる環境で今も仕事でご一緒できることは、デザイナーとしては、恵まれており、幸せな時間を過ごせている。

今、振り返ると田村さんからは、デザインは、ユーザーである生活者の生活や暮らしを豊かにすることが目的で、それに対しての問題解決としてのデザインの大切さを学んだ。メーカーでのインハウスデザイナー時代の私には未知の領域で、その後独立してからも、家具をデザインするときに、この教えを忘れない様に心掛けている。

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