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SUMIYU's ダンジョン潜り

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2019年5月の記事一覧

【ダンジョン潜り:追補編】 ~化身と、肉の体~

【ダンジョン潜り:追補編】 ~化身と、肉の体~



 アーマバとその子らを含む多くの神々は、肉体を持ってこの地に存在しているわけではない。
 彼らは「神々の階層」「天界」などと呼ばれる場所に住まうとされるが、それは地の子らの思い描くような物理的な空間とは異なると思われる。どちらにせよ地の肉体をもつ者たちにそれは知覚できない。

 神々が大地に降り立って活動しようとするとき、彼らは化身と呼ばれる一時的な肉体を身につける。そして地の子らは化身の姿

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【ダンジョン潜り】 (2-2) ~ズマ・レイトの槌~

【ダンジョン潜り】 (2-2) ~ズマ・レイトの槌~

~前~



 入り口を入ると、工房の中はずっと暗く、老人の振るう槌の音が一層鋭く耳を突いた。小僧はちらとこちらを見たが、すぐに顔を伏せて自分の仕事を続けた。

 カン、カン、カン、キン。

 老職人は私に気づかぬのか、目をつむったまま気持ちよさそうに歌っている。

 徐々に部屋の暗さに目が慣れてくると、槌や鉤をはじめ多種多様の道具が整列した軍隊よろしく土壁に吊りかけられているのが見えた。

 

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【ダンジョン潜り】 (2-1) ~散策~

【ダンジョン潜り】 (2-1) ~散策~

2章

エスのことばが大地を駆け
イェミオーリの歌は海をめぐる
マイーズルの銀がティラの光に照らされ
リナーリルの露がバンクの若葉を濡らすとき
平穏の音が朝を彩った

エンシの毒は煙を上げた
オベタルの金がイェンマの嵐に燃え
騒乱の叫びが夜を砕いた



 リインの町にたどり着いて初めてのダンジョン潜り、その一連の冒険を終え、私は休息をとっていた。
 我ら徒党は全員が無事に生還し、先行者のおこぼ

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