夢の中から現実世界へ【エッセイ】

夢の中で、大金を手に入れた。
ジュラルミンケースの中に札束がぎっしりと入っており、一億円はある。
夢の中と気付いているので、どうやって現実の世界に運ぶかが問題だ。
何かに使ってしまおうかとも考えるが、とっさに思い付かないし、モノであれば、またそれを運ぶ課題は同じ。時間もあまりない。
結局は家に持ち運ぶことにして、抱きかかえてベッドに横になることにした。
夢から覚めて、ケースがありますようにと祈るように目を閉じた。

目を覚ますと、クッションを抱えていた。
思わず、壁に投げつけてしまう。無理だった。
夢の中のモノを現実世界に持ち運ぶのは、不可能のようだ。
そう確信した。

今でもあの大金があればなぁと思うときがあるが、数ヶ月経って、似たようなことが起きた。
夢の中で、DVDプレイヤーを使って動画を観ていた。
２～３分だが面白いのなんの。何度か繰り返した。
夢の中だと気付いているので、どうやって現実の世界に持ち込むか。
DVDプレイヤー（もしくは中のDVD）は、モノなので現実世界に持ち込むのは無理と前の教訓で知っている。
ならば、とスマホを取り出して、動画撮影をすることにした。
ばっちりと上手くいく。あとは夢から覚めて、スマホで確認するだけ。

目を覚ますと、スマホを手に取り、動画があるかどうか。
……なかった。これも無理だったのか。
面白かった動画が現実にあるのか？　パソコンの検索で調べるが全然見当たらない。

夢の中で観た動画を発表します。
美しい海の浜辺で、白い砂場の上を二匹のクラゲがもそもそと移動している。何度か角度は変わる。音はなく、文字（字幕）もない。
クラゲが移動しているだけだけど、観ているだけですごく面白い。
こうやって、読んだいるだけだと、「何が？」と思われるかも知れませんが、実際、見ると最高だったのです。
それで現実世界で持ち込み、ＳＮＳでみんなに観てもらえるとバズると思ったのですが。
クラゲは浜辺に打ち上げられることはあっても、移動することはありません。
クラゲの顔は漫画にあるような、かわいかった。
あぁ、またあの動画を観てみたいものです。

（終）