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飲むべき定番クラフトビール #淡色ラガー編

今回は「淡色ラガー系」のビールについて、イチオシの定番銘柄を紹介していきたいと思います。この一連のシリーズは、クラフトビールファン及び今後ファンになる皆さんに「数多ある国産クラフトビールのうち、原則年中手に入る『定番銘柄』縛りで、ぜひこの辺りは押さえていただきたい」という銘柄をご紹介する記事です。

前回「濃色ラガー編」は下記。

https://note.com/44_tk/n/nf915b561d794

なんですが、その前に。

昨年6月頃(うろ覚え)濃色ラガー編を更新してから、約9ヶ月にわたる放置をカマしてしまいました。猛省。

noteのような、こういう自由な枠組みって、自由だからこそ伸び伸び躍進、才能発揮される方と、自由に甘えて無限の惰性に溺れる人間がいると思います。自分は後者だと改めて実感しました。深く反省しております.....(しかも、なんか前回の末尾に「次回は梅雨時に飲みたいビールをご紹介」的なニュアンス書いてる......

さて、今回紹介する「淡色ラガー」、前回の濃色ラガーと比して言うと、淡い黄色~金色~黄褐色の「淡い」色のラガースタイルビール(※ラガー・エールの区分については前回を参照ください)。

代表的なスタイルとしては、何と言ってもピルスナーが挙げられます。強い炭酸、苦味、爽やかでドライなフィニッシュを特徴とする、現代における「ザ・ビール」の原型。色は綺麗でクリアな黄金色。世界で最も大量に作られ消費されているスタイルで、おそらく、クラフトビールに親しまない皆様でも馴染みがある味ではないでしょうか。日本の所謂大手ビールメーカ(キリンとかアサヒとかサッポロとか)の主要銘柄も、概ねピルスナーの系譜に入ります

発祥はチェコのピルゼン地方。スタイルの誕生は19世紀で、紀元前に遡ると言われるビール全体の歴史からすると、意外と新参です。当時、現地の良質なホップ・軟水・そしてミュンヘンからやってきたラガー酵母が生み出したこのスタイルは、産業革命時代の技術進歩と相俟って世界を席巻しました。

さて、淡色ラガーに分類できる他のスタイルには、硬派なドイツ淡色ラガー・ドルトムンダー(ヱビスビールがこのスタイルに近い)、オクトーバーフェストのやや高Alc.ビール・メルツェン、濃色寄りで甘め、ブルックリンによる復活で名高いウィンナー(ウィーン)ラガー、アメリカ西部開拓時代が産んだ、ラガーとエールの特徴を併せ持つスチームビール等が挙げられます。

先述のとおり、世界中で身近に親しまれているビールではあるのですが、淡色ラガー系の多くが爽やかさを身上とするスタイルゆえ、実は酸化や日光による劣化に弱かったりします。夏場、折角ビーチで飲もうとしたビールが何だか微妙な味わい...という経験がある方もいらっしゃるかと思いますが、あれは紫外線により日光臭と呼ばれるオフフレーバー(※1)が発生する為。作り手・運び手の努力で淡色ラガー本来の香りと味が楽しめるのは、実は素晴らしいことなのです。感謝しつつ、今回は是非ベストコンディションで飲んでいただきたいハイクオリティな淡色ラガー・四銘柄を下記にご紹介します。

※1 本来の製法で予期されていないネガティヴな雑味・匂い

ピルスナー / ハーヴェストムーン
https://www.ikspiari.com/harvestmoon/lineup/

(写真荒くて申し訳ない!)

最初にご紹介するのは、前回シュバルツも取り上げたハーヴェストムーンのピルスナー。これまで数々のコンペティションで受賞を重ね、日本ビアジャーナリスト協会「世界に伝えたい日本のクラフトビール」ピルスナー編でも優勝に輝いた、まさに日本クラフト界を代表する銘柄といえます。

このビールの魅力は何と言ってもノーブル・ホップ(※2)由来のキリリとした苦味、爽やかな飲み心地ファーストインプレッションで訪れるのはホップの苦味と炭酸の心地よい刺激、続いてほんのりとした麦の甘さが幸せをもたらします。夢の国TDR隣接、イクスピアリ内のレストランで日々提供されるこのビールですが、個人的には休日の昼下がり、部屋の掃除でも終えた後のひとときに一杯、暫し至福の時を楽しむ...というような飲み方を推したいです。ビール通を唸らせる高品質と「誰もが美味しく感じる」開かれたキャラクターの同居が、この銘柄を唯一無二にしているのだと思います。

一時、Ale Smith社の輸入ビールが「ビール界のロールスロイス」と銘打って売り出されているのをよく見ました(本国でもその謳い文句なんだろうか)。それに倣って言えば、醸造開始以来、安定して国内クラフト界のトップ品質を誇ってきたこの銘柄はまさに「ビール界のトヨタ・レクサス」。未体験の方は往年の「Drive your dreams」ならぬ「Drink your dreams」を、是非。

※2 クリーンな苦味と爽やかで比較的控えめな香りを特徴とするホップの分類

ベイピルスナー / 横浜ベイブルーイング
https://www.yokohamabaybrewing.jp/baypilsner.html

横浜はベイブルーイングで醸造、ピルスナーの故郷・チェコのボヘミアンスタイルに拘ったピルスナー。

伝統的製法「トリプルデコクション」により作られたこのピルスナーは、麦本来の風味・甘味をしっかり楽しめます。例えるなら、良質なパンのような麦の豊かさ。使用しているホップもチェコ産、ザーツホップ。気がつくとグラスを空けてしまうような非常にドリンカブルなビールですが、同製法による大変美しい黄金色も魅力的なので、是非見た目も楽しみつつ飲んでいただきたい。

ベイブルーイングの醸造開始は2012年、本邦におけるクラフトビール・ムーブメントの丁度夜明け前のタイミング。それまでお土産や町興し的イメージがあった「地ビール」に、品質や作り手のこだわりを想起させる「クラフトビール」との呼称が定着したのも、丁度その頃です。同時期、ボヘミアンスタイルへの強い想いが結実し誕生したベイピルスナーは、現在に至るクラフトビール隆盛の象徴的な存在と言えるでしょう

なお、クラフトビールファンの皆様には広く知られていますが、ベイブルーイングの鈴木社長はイベント「ジャパンブルワーズカップ」の開催や「横浜クラフトビアマップ」の発行など、横浜をクラフトビアシティへ!と題された一連の動きの中心人物。現代クラフトビール・ムーブメントを理解する上で、最重要ブルワリーの一つと言えます。



ザ・デイ トラッドゴールド ピルスナー / ベアレン
https://www.baerenbier.co.jp/ourbeer/

正直、迷いました。東北クラフトビールの雄・ベアレンは代表銘柄として「クラシック」があり、こちらも大変高品質なドルトムンダー。どちらを取り上げるべきか...いや、個人で勝手にやっているだけなんで、どっちも扱えば良いのですが。

とはいえ、あえてこちらの The DAY を紹介させていただくのは、ベアレンの缶ビール販売への展開を是非知っていただきたいがため。その熱意たるや、同社は岩手県雫石町に缶ビール専門の第二工場を設立したほど。

缶ビール派か?瓶ビール派か?というテーマは、クラフトビールに限らず、国産大手の愛飲者の間でもしばしば争われるところです。科学的には、適切な品質管理下では缶・瓶で提供されるビールの味には有意な差は存在しないとされます。一方で、販売者や消費者の視点では、扱いやすさ・容器の取り回しの良さの点で、やはり缶ビールに優位があるのではないでしょうか。端的に言うと、買いやすく捨てやすい!昨今のコロナ禍で「家飲み」が推進される状況の中では、それは尚更でしょう。

その意味では、クラフトビール界では古豪の趣もあるベアレンが満を持した缶ビール銘柄 The DAYシリーズ(他にもレッドラガーとかあります)の展開は、まさに今進行している、クラフトビールが「ファン向け」を越え、ビール市場全体に根付いていく現象の先駆けとなるものかと思います。缶ビールの展開で販売チャネルと購入するファンを更に拡大し、このビールは一種の定番になっていくことでしょう。

前置きが非常に長くなりましたが、トラッドゴールドピルスナー、そういう問答は無用に旨いです(台無し)。上記で取り上げた2銘柄との比較で言うと、より国内消費者向けにブラッシュアップされているといいますか、ざっくり言うと国産大手でいうプレミアム・モルツ的な方向の、ノーブルホップが前景になるピルスナーが更に洗練された形態、というイメージです。白身魚の煮付けとか、そういう出汁と風味の和食世界にベラボウに合うので、是非試していただきたい。

個人的な思い出としては、ベアレンビール、以前仕事で岩手出張があった折、地元盛岡の方が激推ししていたことが印象に残っています。「地元の日本酒激推し」として知られる東北人が、なおも激推しするビール。さらに流通性・扱いやすさを増した缶で、是非ご賞味あれ。



横浜ラガー / 横浜ビール
http://www.yokohamabeer.com/line_up/regular.html

横浜ビールが誇るフラッグシップ銘柄。このビールのスタイル名はIPL(インディア・ペール・ラガー)

同スタイルは歴史的にも新しいものですが、ざっくり言うと現代クラフトビールの主役・IPA(インディア・ペール・エール)のラガー版と言えます。名称のとおり、ホップアロマは柑橘やマスカットを想起させる新大陸風(※3)、ビタネスはIPAよろしくガッツリ。かつ、ラガービールの美点はそのままに、後味はスッキリとクリア。風味が強く味負けしづらいので、肉料理やカレー・鍋とも合わせられるラガーです。

横浜市民である私からすると、既にして個人経営店を中心に定着している感もある横浜ビール。写真のとおり、こちらも昨年12月より待望の缶販売が始まっています。神奈川・東京エリアを中心に百貨店等で幅広く展開し、今年の2月には市内のファミリーマートでも販売。今後、いわゆるローカルメジャーなブルワリーの商品展開が缶への主軸展開を狙っていく流れは、'20年代の国産クラフトビール動向を考える上で前提となっていくと思います。横浜といえば生麦工場のお膝元だけあってキリンビールのシェアが大きい地域ですが、樽・缶両面での攻勢で横浜ビールが新定番として君臨する時代も遠くない...のかも。

新しいビアカルチャーの創生」を掲げる横浜ビールは、地元プロスポーツチームやトライアスロン等各種イベントとのコラボにも積極的。最近では乗車しながらビールを飲める夢の...というか想像を超えた六人乗り自転車(!?)、ビアバイクツーリズムの活動も展開。地元に確固たる根を張りながら攻めの姿勢を崩さない同社から、まだまだ目が離せません。

※3 カスケード、ネルソンソーヴィン等、アメリカやNZで主に育てられるホップの分類。全体的に、ノーブルホップと呼ばれるドイツ系ホップや土っぽい・草っぽい個性を取り上げられる英国ホップと比して、香り・苦味の強烈な印象、荒々しさに長所が置かれる傾向にあります。

ということで、淡色ラガー編、いかがでしたでしょうか。多くのブルワリーが手掛けているピルスナースタイル、ここでご紹介した銘柄の選定はかなり主観に偏重したものですが、とはいえ絶対に外れナシな選出になっていると思います。経験上、各社とも通販・配送での品質維持も万全。料理にも合わせやすい高品質ピルスナー、家飲み時代のお伴に、是非注文をオススメします。次回はいよいよ、国産IPAあたりを...是非...できればあまり期間が空かないように...(自信なし)、とにかく、また後日。

あんまり関係ない話。

国税庁主催のクラフトビール・オンラインフェス、一日だけ拝見しましたが楽しかった。オンライン系イベントは、コロナが終息しても是非つづけてほしい。

以上

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