DAZNについて調べたらもっとDAZNが好きになった話
みなさんこんにちは。
先週下記のようなマーケティングトレースのイベントに参加してきました。
マーケティングトレースとは、マーケティングの戦略をトレースすることによって、戦略の引き出しを増やすマーケターの筋トレです。当日は1時間ちょっと黙々とテーマ企業について調べ「何が成功要因なのか?」「自分がCMOなら何をするのか?」などまとめて発表する機会がありました。
今回は僕はDAZNについて調べて発表したのですが、時間の関係上調べきれずに中途半端になってしまったので、noteで改めてまとめてみることにしました。拙い内容ですが、初回ということで優しく見守っていただけると嬉しいです。
DAZNとは?
明確な会員数は提示されていないが、下記の記事をみる限りではユーザー数が堅調に伸びていそうだ。2018年のDAZN for docomoの記事では100万人突破というリリースがあり、そこから類推するに、ざっくり200〜300万人くらいだろうか。
日本市場の責任者であるマーティン・ジョーンズ氏は「日本で(DAZNのユーザーは)確実に伸びている。OTT(Over The Top※)が浸透している。どのチャンネルでスポーツを見るかというアンケートでは、地上波で見る人は減り、DAZNで見るという人が増えている」と手応えを口にした。
ざっくりマーケットの理解とSTP
スポーツ観戦市場は7,471億円。中でも野球・サッカーが大半を占めている状況。(引用:マクロミルと三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる共同調査2018年スポーツマーケティング基礎調査)
上記の観戦市場の中でも特に狙っていくのはシーズンパスを持っているようなコア層ではなく「ライトファン層」である(ライトファンの定義は、複数回観戦したことがあるが、定期的に観戦する習慣がない層)。さらにライトファンの中でも「サッカー×若年層」を狙っているのが下記の記事から見えてくる。
Jリーグを軸に施策を回し、野球やその他のスポーツにも放映権ならびに広げていくのが大枠の方向性なのではないか。
Jリーグに目をつけたのは、非常に熱狂的な「ロイヤルファン」を多く持つからです。「スタジアムに行けなくてもテレビで試合を見たい」という人たちの数が多く、彼らをDAZNの会員として獲得することが今最も優先度の高い戦略になります。JリーグをDAZNへの入り口にしていただき、そこから更にヨーロッパのサッカーや、格闘技・ダーツといった他のスポーツにも関心を持っていただくことができればと考えています。
日本のいちばんの課題は若年層がプロスポーツを応援していないことだと思う。
ファンをキープしつつ若年層を広げていくという2つの柱をやらないといけないですよって言っている。自分たちのビジネスにとっても、エンゲージメントの高いファンは大切なんだけど、毎日DAZNを見ても会員料金は1750円。でも1か月に3回見る人を10人増やせば1万7500円になるわけなので、ライトファンというのはとても大切。
DAZNの売上の構成要素を分解してみる
マーケットやSTPを踏まえると、大枠のストーリーとしては
1.放映権を持つJリーグに注力し、特に「若年層の新規顧客獲得」「既存会員の解約率」を下げる施策を進める
2.並行して、野球やその他のスポーツでも放映権契約を進める。
3.Jリーグでの成功事例を他スポーツへ横展開
ということになりそうだ。
4Pを深掘りしてみる
ライブストリーミングサービスとしては、何よりも放映権が重要。それを広く押さえているDAZNは競合がいないと言っても過言ではないと思う。
Jリーグ単独放映権の2,100億円は本当に回収できるのか
通常、2,3年の契約を繰り返す中、なぜ10年間の契約に振り切れたのか。価格としても競合以上に低い水準である。調べていて一番疑問に思った点だった。
ドコモのプレスリリースなどを参考にユーザー数・売上を算出してみると
・DAZN for docomo(¥980)=100万人
・DAZN(¥1,750)=100万人(仮)
=>200万人×¥1,365(※)=27.3億(月商)
=>27.3億×12=327.6億(年商)
※加重平均で算出。{(¥980×100万人)+(¥1,750×100万人)}÷200万人=¥1,365
初期投資が大きいので、ユーザー数が増えてくれば利益率も上がってくるモデルだが、収益としてみると10年では採算は合わなそう。認知拡大としての投資の位置づけかと思ったが、下記の記事を読んで新たな仮説が出て来た。
何を隠そうパフォームこそは、「ウォッチ&ベット」と呼ばれるスポーツ賭博の運営者に向けた動画配信サービスで急成長した企業なのだという。
「合法賭博用の動画配信のプラットフォームを押さえ、パフォームは安定した収入を得ている。賭博は中毒性が高く、一過性のブームに乗ったファンとは比べ物にならない手堅い顧客を抱えており、極東の赤字ぐらいではビクともしません」
「やはり、10年という長期契約のなかで見据えているのは、日本におけるスポーツ賭博の『合法化』でしょう。日本では一昨年の野球賭博の問題もあり、賭博=悪というイメージがいまだ根強いが、10年あれば風向きも変わる。
あれだけ反対意見の多かったカジノ関連法案も可決したのだから、可能性は十分。将来的に本国と同じようなビジネスモデルを築くための『先行投資』という意味合いが感じられます」
ここから類推すると、上述したストーリーに加えて新たなシナリオが見えてくる。
1.放映権を持つJリーグに注力し、特に「若年層の新規顧客獲得」「既存会員の解約率」を下げる施策を進める
2.並行して、野球やその他のスポーツでも放映権契約を進める。
3.Jリーグでの成功事例を他スポーツへ横展開
4.賭博市場の先行者利益の獲得(new)
仮に賭博市場が解禁になった場合、すでに合法賭博用の動画配信プラットフォームの土台を持つため、一気に利益率が上がり、回収が見込めるという算段だと想像する。
つまりスカパーとDAZNでの「マーケットの定義の違い」が今の結果を生んでいるのではないだろうか。
もしCMOだとしたら・・
現状のDAZNはサッカー以外のスポーツの放映権も広く獲得していることを考えると、よりライトファンの獲得に注力していくはず。
試合日以外にもDAZNにアクセスする仕掛けづくり
ドキュメンタリーなど独自コンテンツが増えている。今後はもっとここの幅を広げることで、試合のライブストリーミング以外の意味を持たせる。
・ビジネスマン向け=「監督のマネジメント論」「クラブ経営」「選手同士や監督らとの人間関係」
・サッカーやっている親子向け=「練習風景」「クラブや選手のヒストリー」
・ゲーマー向け=E-sportsの大会内容を配信
など、ライトファンにウケる独自コンテンツを作成していけるかが最大のキモだと思う。
まとめ
今回調査をしていて、DAZNは本当に素晴らしいなと感じるキッカケになりました。下記のように単にスポーツのライブストリーミングサービスではなく、一緒にリーグを育てていく立場として事業推進しているのは、イチサッカーファンとしてはワクワク感を感じます。
大崎 DAZNがJリーグと結んだ契約の背景には、単純に権利を買うのではなく、一緒にリーグを育てていきたいという想いがあったから。それが10年という長期契約の意味するところです。
25周年を迎え、ファンの高年齢化という課題を抱えていたJリーグに、どうすれば新規層を呼び込めるのか。
2018シーズンから始めた「フライデーナイトJリーグ」は、その施策のひとつ。
一方で、DAZNだけが頑張っていてもスポーツ業界は変わらない。今Jリーグと協業して「フライデーナイトJリーグ」などの施策を打ち出していますが、これは本当に第一歩だと思う。「サッカーを盛り上げたい、スポーツを盛り上げたい」という共通目的があるはずだから、他にも各クラブやメディア、様々な立場と協業していく必要があるんじゃないだろうか。
今後のDAZNの動きが楽しみです。
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