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富田一彦『試験勉強という名の知的冒険』を読んで

この本はハウツー本である。しかしただのハウツー本ではない。
巷で出回っている本なんかよりしっかりとしていて、読む価値がある本だと思った。

この本を大きく分けると2つに分かれる。

前半は、問題というものがどのようにできているのかについて書かれている。
問題がどのようにできているのか。皆さんは考えたことがあるだろうか。教育学部で学んだため、私は考えたことがあるが、それより前は考えたことがなかった。精々、どのような問題があり、それは何を聞いているのか程度だった。そういう人が多いのではないだろうか。この本には、試験問題だけではなく、世の中にある問いと言われるもの共通している性質が書かれている。その性質とは、必ず2つのものからできているというものだ。それは、手がかりと雑音だ。問いというものには必ず解くために手がかりが存在する。答えが出るには客観的である必要がある。解説されたときに納得できるためには、全員が共通して認識できる客観的な手がかりが必要だ。しかし、その手がかりを明らかにしすぎると問いとして存在させる意味がなくなってしまう。それを阻止するために雑音というものが必要となる。雑音とは手がかりを隠すための方法のことだ。この雑音が問題の難易度を決めている。

後半は、有効かつ有意義な勉強法とはどのようなものかについて書かれている。
そこら辺にあるハウツー本はここからスタートし終わる。しかし、この本は前半とあるように土台の上にハウツーがある。ハウツーは載っているが、自身でやり方を考えられるきっかけを与えるためにあり、ほかのように絶対など必ずなどと言い、中身を伴わない表面的なテクニックとは全く違う。

この本を読んで思った2つのことをいかに書こうと思う。

1つ目は、科目数でマウントを取るのは浅はかだということだ。これに関しては受験生のころから思っていた。私は英語と小論文だけという大学入試を受けてきた。2科目だけというのもあり、科目数が少ないから受けているのだろうなどとよく言われたのを思い出す。私は、何か失敗したときに取り返しがほぼ無理な点や問題の構成上、様々な科目が小論文には入り混じっているので、決して少ないわけではない点で何を言っているんだろうかと思っていた。この本にもあるように、まともな問題は科目を超えた共通のものが存在する。そのため表面だけ見ていろいろ言うのは浅はかだなと感じる。話は変わるが、たしかひろゆきが古文はいらないといったようなことを言っていた。文化面に関する話は分からないので触れないが、試験でいうのであれば、なくすデメリットが大きすぎると感じた。古文で必要な知識はそこまでない。それでセンター試験で言うなら、現代文と同等の点数が割り振られている。これは漢文にも言える。聞かれているものは同で形が違うだけであるのになぜそこまでなくしたがる人が多いのだろうか。恐らく、ここでいう抽象化ができていない人が多いからなのだろうなと感じた。

2つ目は、試験は全体で点数を取っていくものだということだ。全体で点数を取っていくという発想があまりない人が多いのではないだろうか。これは受験生だけではなく、学校の先生などといった指導者にも当てはまると思う。私は教育学徒なので、ここでは指導者について書く。ひとくくりに指導者も全体で点数を取る視点があまりないといったが、それは主に主要科目を担当している人がそうだと思っている。つまり、英国数の指導者は特にその視点が欠如しているということだ。主要科目ではない科目の人は、主要科目との調整を考えることが必要であるため、全体の視点があるといっていいだろう。しかし、主要科目の人は、そんなことは知らずにその立場に胡坐をかいている。そして、意味が分からない詰め込みを強要してきたりする。これは非常に問題だと感じる。その科目の視点しかないというのは教育学部生を見ても感じる。特に私の専門である英語教育はそうだ。科目の楽しさを伝えたい系の人がたくさんいる。これは教育とは何なのかというところとつながり非常に怖いなと感じる。

3つ目は、学校のテストと模試や入試などのテストは違うというものだ。英語科教育で言われるテストとは、どの項目で、どれくらい身についているかをしっかりと測れる問題が載っているものを指す。これに対して、模試や入試は違う。項目の身に着け度合いだけではない。情報処理能力なども含まれてくる。そのため、この本で言うと、雑音が前者はあまりなく、後者はあるということになる。よく、保護者や生徒は、学校では点数がとれるが模試などでは全然取れないため、学校の試験は意味がないなどと言う。しかし、そもそも聞いている能力に差があるので、安易にそう決めつけるのは浅はかだ。学校の先生はそれも含めて大変だなと感じた。

以上にあるように試験を控えている人、指導者を目指しているひとにはぜひ読んでほしいなと思う。


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