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貧困とエアリズム

最近めちゃめちゃ暑いじゃないですか、もうほぼほぼ夏だし。でも今年あんまり暑さで困ってないなって気づいたんですよね。そんでよく考えたら寒さにもそんなに困ってなかった。

理由は簡単でした。いまのわたしはその季節にあった服をたくさん持ってるから。中学とか高校のころ、インナーとか靴下を潤沢に持ってなかったから毎日着る服に困って変な服着てたこと思い出した。

これは我が家が貧乏だったからではなく(全然金持ちでもないけどダブルインカムだったしほんとにギリギリ普通くらい)、わたしが「なんとかどうにかなるものを買ってもらうのは悪いな…」と勝手に遠慮していたからである。

というわけで、その頃のわたしはセーラー服の中に部活(バスケ部)のTシャツを着ていたから襟ぐりからスポーツニットがたっぷり見えていたり、ブレザーの下のニットの下のブラウスの中にキャミソールとヒートテックと綿のシャツと薄手のニットカーディガンを着て雪だるまほど着膨れていたりした。

スパッツ(アンダーパンツ?)も洗濯のタイミングや天気の具合によって足りない日があったから、バスケのゲーパン履いたり、デニムのショートパンツとか履いてる日もあった。靴下なんか毎朝妹と奪い合ってた。

妹はわたしがここぞというとき用に置いてある新品の靴下を勝手に開封して勝手に履いていく常習犯だったので、朝毎に通学路で烈火の如き兄弟喧嘩をかましていた。

そのたびに妹の使う言い訳が「見た目おんなじやからわからん」やったんやけど、つい先日二人とも成人してから思い出話をしていたら「わかってたけどわざとやってた」と吐きやがった。その毎度「名前書いてなかったあんたが悪い」とオカンに諌められてきたワイの気持ちはどうなる?数年越しにブチギレそうになった。

いまなら自分のバイト代で靴下くらい、好きなときに好きなだけ好きなとこで買いますけどね。靴下屋のピザトルくん靴下取り寄せちゃったりなんかもするしね。でも当時のわたしはそういうのもぜんぶ母親に買ってもらうしかなくて、月のお小遣いなんかも中三になるまでもらったことがなくて、それもテストの点の歩合制だった。

母親からは80点取れたら100円、90点なら200円、100点取ったら1,000円だった。もちろん80点以下なら0円。父親からは塾のテストの点で上位30位以内にランクインしたら1,000円だった。幸いながら中三は塾も学校もテストが多かったし、その当時は白髪がワサワサ生えてくるほど勉強してたので月1,000〜2,000円くらいはゲットしてたと思う。

けどそれもジャンプと黒バスの単行本と(全年齢の)同人誌で足りないくらいだった。親からすべての娯楽を禁止されてて買わないと狂いそうだったので削れなかったんですよね、ここ。本屋にいくことすら禁止されてた。アニマックスとキッズステーションも解約されて正直頭はおかしくなってた。ちょっとうちの親も思考回路が一辺倒な人間なもので。

というわけで可処分所得がゼロのわたしは、学生生活の必需品を家計で買ってもらうしかなかった。それでもね、数は人並みに持ってたはずなんですよ、数だけなら。ヒートテックは五年ものから去年買ったやつまで合計五枚、インナー用のカーディガンは中学のとき着てたのと私服で着る赤いのと、夏用の薄いのとで合計三枚、長袖Tシャツはばーちゃんが持ってきたババシャツと私服を合わせて四枚、みたいな感じ。

いや実質足りてないのは足りてないですけど、その頃の我が家は全員そんな感じの着回しだったので文句も言えなかった。中学は公立だったので貧困層ばっかだったし、そんなことしてるのもわたしだけじゃなかった。わざわざ公立中学に通わせるような金持ちの家の子は弁えてるから余計なことを言わなかったし(賢いね)。

高校はうっかり私立に通ってしまったものだから、そんな格好してるのわたしだけだった。みんなユニクロとかGUとか安いところででも、学校用のインナーや学校用の無地のカーディガンとかを買ってもらっておかしくないものを着ていた。もちろんラルフローレンとか着てる子もいたが。

そこにね、わたしですよ。みんな持ってるチェックのスカート(希望購入商品)すら持ってない、ブレザーを脱いだら学校の指定セーターじゃないし、ブラウスの下には毛玉だらけのカーディガンがもう一枚、さらにその中にはボーダーのTシャツなんて着てるものだから、中等部のお嬢様方には散々指を刺されましたね。

高二で文化祭のパンフレットの表紙描くまでずっと笑われてた。ちなみにこのパンフレット、手前味噌で悪いが「入学してからこれまでに見たすべてのパンフレットの中で一番出来がよかった」とみんなに言われた。ぶっちゃけあの頃のわたしは人生で一番絵を描いていたし上手かった。いまはもう絵なんて描けない。ドラえもんも描けない。過去の栄光。

当時から毎日洗濯とか風呂掃除とか食器洗いとかしてたんですよ、家族総出で。でも五人もいたら洗濯は一日一回じゃ間に合わないし、共働きだったから夜干して次の日の晩取り込むリズムしか持てなかった。ドラム式乾燥機なんか夢のまた夢だったしね〜。真冬でも毎日洗濯干してたもんな、いまじゃ考えらんないけど。

ていうかマジそんな日々の中、勝手にわたしのとっておきの靴下開封して履いていく妹重罪じゃね?ほんとマジあのころのわたしの気持ち返してほしい。いまだにムカつくもんな。いまさら新品のハイソックスなんか返されても困るけどさ。しかもあれ隠してても引っ張り出して使っちゃうし、「名前書いてなかったお前が悪い」ってそれほんとにわたしが悪いんか?わたしの引き出しに入れてたのに…。

必死こいて洗濯物のサイクルから一回の洗濯でクリアしておくべき靴下の数とか数えて洗って干してたわたしの一週間分の計算も横から掻っ攫って狂わせてくれてたしな。妹と弟は良くも悪くも気を遣わない/利かせないタイプだから家事とかあんまり手伝わなかった。弟なんかほぼ風呂掃除だったし、それも雑だったから二、三日に一回くらいはわたしがやらされてたし。

やばくない?そんな中でも父の日母の日と両親の誕生日にはささやかながら親父の好きなお菓子とかちょっと文房具(オカンは文房具オタク)とかプレゼントしてたわたし、いい子すぎへん?それぞれは安価とはいえ、お小遣い歩合制よ?

それからね、もうすぐ十年とか経ってきてこっちもバイトくらいしてますしね、インナーくらいほしくなったときにすぐ買えるわけですよ。そりゃお金を稼ぐ大変さも、これで家族を養う難しさもわかってきましたけど、にしてもあの頃のわたしは自分を抑え込んでました。(そのわりにはよく噴火してたけど)

そりゃわたし一人なら990円のエアリズムくらいね、買えますよ。でも結婚して子どもなんて産んだらね、インナーといえども「そろそろ暑くなってきたし汗疹予防にエアリズム買うか〜」ってわけにはいかないじゃないですか、絶対。人間一人育てなきゃいけないわけですから。

でもね、すでにメンタルがゆで卵のわたしはきっと高収入のバリキャリなんか無理だし、石油王に見初められるほどギフテッドなビジュアルを持って生まれたわけでもない。そしたらわたしにはたぶん、我が子をインナーと靴下に困らせずに育てることは不可能です。いまですら一日十時間寝ないと動けないし。

だったらわたしはもしものもしも場合結婚したとしても、それが万が一ハンパねえ甲斐性に溢れたパートナーでなかった場合、子どもを産まない方が不幸な人間を減らせると思うんですよね。可哀想だもん、わたしと同じ思いをさせるの。

そんな中私立高校・私立大学に進学させたわたしの親はすごいよ、偉いけどね、わたしの中高生時代に偏差値をつけるとしたら42だよ。周りに女子高生らしい女子高生ライフを送っている女子高生も多かったし。あとワイがウツになったのは少なからず親の責任に帰するところがあるしね。

可哀想、可哀想だからね、産まないんですよ、わたしは決めてるんです。日本のためとかね、少子高齢化社会とかね、わたしはどうだっていいんです。他人のために不幸になる子どもが一番可哀想です。生まれたからには生きなきゃね、悲しむ人がすでに設定されて産まれさせられるわけです。

育てられる人にしか子どもが産めない社会を作ったのは誰なんですかね。日本の少子高齢化はなぜ進むんですかね。そしていま誰がわかったような顔をして「子どもを産め」と宣っているのでしょうかね。

死にゆく人がより死にやすい環境を作ることは、これから生まれてくる人たちを育てやすい環境を作ることより大切ですか。少子高齢化対策は、成人年齢を引き下げ、後期高齢者年齢を引き上げることですか。18歳の子どもたちに、国民年金を払わせることがこの国の高齢化対策なのだとしたら、若者は日本を離れた方が幸せです。

わたしたちが選挙にいかなければいけないのは、これから生まれてくる人たちをより幸せに育てるためです。これから死んでいく人たちのための国を作らせないためです。わたしたちは他人の墓標を立てるために産まれさせられ、働かされて、死んでゆくわけではないのですから。

わたしは子どもを産みません、決めています。生理周期は常におかしいし、可能かどうかもわからないですし、そもそも妊娠は常に奇跡ですし。不妊治療は保険適応外で、幼稚園は常に待機児童に溢れ、保育園に入れたらパート代と保育費がプラスマイナスゼロ、保育士は薄給に耐えかねてみんなやめるから常に不足し、女性専用車両とレディースデーはいつまでも叩かれる。

これから、これからの日本です、わたしたちが生きていくのは。わたしたちがまだ日本を捨てていないのは、この国が好きだからでしょう。だとしたらわたしたちは、どうしても選挙にいかなくてはいけません。これからの日本をすべての人々にとってより生きやすい社会にするために。

わたしは選挙にいきます。あなたはどの政党のどの候補者に投票しても構いません。どうしてもどうしても思いつかなければ、机でコンコンと鉛筆だけ鳴らしておいて、白紙のまま投票しても構いません。選挙の意義は参政にあります。あなたがあなたの参政権を行使することが必要なんです。

プロパガンダ的なことは言いたくないし、義務教育を正しく修了している人ならこれがプロパガンダではないことを理解できるはずだと思います。貧困は哀れです。少子高齢化が一向に改善しないのは若者たちが子どもを産まないせいですか?誰が子どもを産みにくい社会を作ったのですか?若者は日本を潰す悪者ですか?わたしたちは、それでも日本を愛していますか?(矢島美容室)

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