認知症の祖母はどんどん少女になっていく。
僕の父方の祖母は認知症だ。
今年には92歳になる。
今は施設に入っていて、時々面会の予約を入れて会いに行っているような状況だ。
施設に入ったのは2019年のことで、もう5年になる。
その頃から認知症はそれなりに悪化しており、物事を忘れることが多かった。
しかし、古い記憶ほど色濃く残っているようで、若かった頃の話や、少女時代の話をよくしてくれた。
それから、自分のことを「チエちゃん(チエコという名前なので)」と呼んでいたり、無邪気に笑っていたり、側から見ると「ボケていく」というよりは「少女に戻っていく」という感覚だった。
コロナ禍以降、なかなか会えず、その間に症状も悪化してしまったのか、前よりも上手く会話ができなくなってしまったが、それでも面会に行き、家族の顔を見ると涙ぐんだような様子を見せる。
まるで、少女だ。
と認知症になってから年々思う。
いたいけな少女が家族との交流に喜び、涙し、エントランスからエレベーターに入っていくまでこちらの顔を見ながら手を振る。
この前は、無邪気に僕ら家族に向かって投げキッスをしていた。
最近は、入れ歯のせいか、病状のせいか、何を話しているのか今までよりわからなくなってしまったが、それでも家族と握手をして顔を見るときにはやはり、家族の繋がりを感じる。
もちろん、病として向き合っていかなければいけない、時には苦しい現実だが、何も暗い側面ばかりではない。
少女へと回帰している祖母と少しでも長く思い出を残せれば、と思い、僕は出来る限り面会に赴くことにしている。
そして代わりに僕は大人になっていく。
自分の生み出したもので生きていきたい。幼い頃からそう想って今も生きています。これからも創ることが喜びでいられるように、いただいたお金を使おうと思います。