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20210104


夢の中で夢を見る。襲われる夢を見ると、鏡だ、と思う。夢だから、きっと刺されることはないし、死ぬこともない。冷静に思うのに、こわばる体。刃物を振り上げるのは、パーカーを着た野蛮そうな男だったけれど、あれはきっと、私なんだろうなあ、と思う。じゃあこの、私なんだろうなあ、と思っている私は誰なんだろう。私が刺そうとしているのは、私自身なのか、それとも別な誰かなのか。怖い夢も嫌な夢も見慣れているのに、体がぐったりと重たい。

寒い日が続いてさぼっていた散歩へ行く。あまりかぶることのない、黄色い帽子をかぶった。いつも何匹もの猫が身を寄せ合っていた場所が、毛布ごとなくなっていた。みんな、どこへ行ってしまったんだろう。近所の猫小屋には、大きくてふさふさの甘い茶色の毛をした猫が一匹、私と夫を交互に見る。顔はそのまま、目だけ動かして。帰りにはもういなかった。

石田千『からだとはなす、ことばとおどる』を半分読んだのに、この本はなにものなのか、なにを書いてあるのか、全然わからない。と言うと夫に「そんな本ある?」と返されるのだが、あるから不思議だ。そしてわからないのに読めるし、読もうと思う。というか、これがわかる人はいるのか?詩のような日記のような、見たものを見たままに書いていて、ずるいなあ、と思う。やわらかい言葉とするどい視線、ずるい。


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