20220122 待合室で読む本


 午前一時過ぎ、真っ暗な部屋の中に緊急地震速報が鳴り響く。上半身を起こすと、隣で寝ていた夫もがばりと起き上がり、布団とともに私の上に覆いかぶさった。「……なだ」という声がスマートフォンから聞こえる。灘……どこだろうと思いながら強い揺れに身構える。かたかたかたかたと横に部屋が揺れる。長い。けれどそこまで強くはない。ここからもっと強い揺れが来るのかと夫の下で体をこわばらせる。揺れがおさまる。本当にこれで終わりなのか、この後強い揺れが来るのか、わからないのでそのままとどまっている。そして考える。私は今守られている。じゃあ私は何を守ればいいんだ? この部屋には大人二人がいるだけだ。私だって、夫が怪我をしたり死んでしまうのは嫌だけど、私が夫に覆いかぶさるのは違う気がする。男だから女だから、そういうことなのか? 私が守るべきものとは?

 もうおさまったのだろうと判断し、体を離して各々の布団へと戻った。布団の中で私は考え続けた。私が守るべきものとは? そしてまた労働の夢を見る。パン屋のレジで、大量のパンの値段を入力していく夢。

 午後皮膚科へ行く。血流をよくするための漢方薬が追加される。薬局では入り口に近い椅子に座っていたから、ガラス越しに日が当たりぼんやりとあたたかい。その黄色い光の中で『プラテーロとわたし』を読む。病院へ行く時は、皮膚科でも歯医者でも眼科でも『プラテーロとわたし』を持っていく。この本を家で開くことはほとんどなくて、いつも待合室で読んでいる。だからもう一年以上前に買った本なのに、まだ読み終わらない。
 漢方薬は十日分ほど足りないらしく、後日取りに行くことになる。

 夜、小川洋子の『まぶた』を読む。隣では夫が『完璧な病室』を読む。

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