見出し画像

20230408-0413

四月八日(土)
 朝、スーパーへ。アルストロメリアを買う。白と、赤紫のような色。赤紫の方はまだつぼみ。
 昼、ハムと春キャベツのサンドイッチをつくる。キャベツは塩もみしたもの。
 晩ごはんは久しぶりに親子丼。

四月九日(日)
 午前中、散歩へ。緑が明るくまばゆい。
 散歩から帰ると、アパートの二つ隣の部屋で引っ越しが行われていた。
 昼、たっぷりの春キャベツとブロッコリー、鶏肉のパスタ。
 カープは巨人に三連勝。負けが続くのも落ち込むけれど、勝ちが続くことも怖い。

四月十日(月)
 午前中、洋服の整理をする。手持ちの服は白以外に明るい色のものが全くなくてびっくりする。人間の暗さが表れすぎている。この前買った麻のシャツは白と緑のストライプで、それが唯一明るい。今年は明るい色が着たい(と、ここ数年毎年言っている)。
 トマトを洗い、ブロッコリーを茹で、ピーマンをおかかで和え、人参を三本千切りにする。一本半は冷凍し、残りは塩きんぴらにする。それからたまごやきを焼き、豚肉とまいたけを炒める。空になった洗剤やクレンジングのボトルを洗う。ネットでバスタオルを注文する。

四月十一日(火)
『猫を抱いて象と泳ぐ』を読み終わる。久しぶりに読み返して、こんなにずっとかなしい話だったっけ……と思いながら、どこかで心地よさを感じている。そして羨ましさ。私も十一歳の体のまま大きくなりたくなかった、と思うし、彼の最期は私の理想の最期と重なるようにも思う。小川さんの小説の多くがそうであるけれど、これは特に閉じこもっていく話だと思う。でも、それに関してはちっともかなしくない、と思う。安らかさを感じる。
 ベランダでは夫の白いシャツが揺れている。綿と麻の混じったもの。内側が黄色いキャベツを洗ってちぎったり、赤玉のたまごでたまごやきを焼いたりする。窓を開けていても寒くない。
 夕方、昨日注文したバスタオルの発送完了メールが来る。私は今まで、何枚のバスタオルを買ってきたんだろう。子供の頃使っていたバスタオルは、白地に女の子の柄の描かれたものだった。姉のは花柄。それぞれ二枚ずつ持っていたはずで、物心ついた頃から私はずっとそのバスタオルを使っていた。大人になって家を出るまで。すっかり薄くてぱりぱりになっていた、と思うけれど、分厚くてふんわりしていた時代を思い出すこともできず、私にとってそのバスタオルはずっと薄くてぱりぱりしていた。
 一人暮らしをはじめた時に買ったのは、ニトリの、黄緑色と青色のバスタオルだった。それと、友達のSちゃんが旅立ちのお祝いに「ものすごく実用的なものだから」と贈ってくれた、黄色と紫のマイクロファイバーのタオル。四階建ての、八部屋のマンションの、四階の、奥の部屋が私の部屋だった。大阪は夕立が多くて、しょっちゅう洗濯物を濡らしていた。マンションの目の前は公園で、春の夜には、信号機の灯りに照らされた桜が花びらを落として、溝にたまっていた。近くには長い商店街があって、そこに行けばたいていのものは買うことができた。スーパーも、薬局も、八百屋も、本屋も、マクドナルドも、黄色いポイントカードのある百円ショップもあった。
 そのマンションを離れてからは、ずっと夫と一緒だった。バスタオルも、最初はそれぞれが持っていたものを使っていたけれど、そのうち無印良品で揃いのものを買うようになり、今ではネットでガーゼ素材のバスタオルを買っている。薄くてよく乾くバスタオルだ。色はリネンという名前のごく薄いベージュ。
 そうやって、私の持ちものは、つまり私の生活は、どんどん質実的になっていく。

四月十二日(水)
 朝はうっすらと晴れていたけれど、雨。
 図書館で借りてきた『サーカス!』という絵本を読む。小学生の頃、子供会でサーカスを見にいったことがあるけれど、内容は全く覚えていない。帰りのバスに乗る前のトイレの時間のことだけは覚えている。そういうトイレの時間が私はいつも不安だった。誰かが置いていかれるんじゃないか、と。
 空の美しい絵本だった。サーカス自体は、大人になった私からすると、恐ろしいものだな……という感想になってしまうのだけれど。
 午後、雨はやみ、晴れてくる。

四月十三日(木)
 スーパーへ。日曜日の散歩の時も思ったのだけれど、川に、カモでもサギでもない鳥がいる。黒い、鵜のような鳥。でもこんなところに鵜がいるだろうか。すいー、と潜るようにして泳いでいる。まっすぐに。すごく綺麗。水から上がるとつやつやしている。二本の葉桜の下にたんぽぽがたっぷりと咲いているところがあり、鳥が何かをついばんでいる。たんぽぽは畦道に咲いているものよりもすっと背が高い。
 ブロッコリーの値段が上がっている。義実家の畑のブロッコリーもそろそろおしまいらしい。なので予定を変更してきゅうりを買う。梅とかつおぶしで和える。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?