見出し画像

組織診断や研修のサーベイを3倍有効活用する方法

ヒトや組織に対する考え方は会社によって様々かと思いますが、定期的に「次の質問に5点満点で回答してください」的なサーベイ協力打診がある会社も多いかと思います。

例えば、

例1:会社満足度など組織診断系のサーベイ
・・・業務のやりがい・成長実感・上司との相性・待遇の妥当性などをスコアリング
例2:360度評価のためのサーベイ
・・・同僚や上司などの仕事ぶりについてスコアリング
例3:新人研修やマネジメント研修のヒントを拾うためのサーベイ
・・・研修対象者の仕事ぶり・成長ぶりを周囲のメンバーがスコアリング

など。

弊社キュービックでもいろんな形でメンバーの皆さんに協力を呼びかけては負担かけてます(ごめんなさい)。

人数が多くなるとヒトや組織の状態を正しく把握することが難しくなるもの。定期検診で健康状態を測るようなノリで、ヒトや組織の状態をなんとか定量的・客観的に把握して打ち手を検討しようと、こんな取り組みが行われることになります。

回答するにも時間がかかりますので、負担をかける以上はちゃんと効果を得たいもの。僕の場合は立場上「組織診断サーベイ」に参加することはないのですが、メンバーの育成・研修用のサーベイを久々に実施したので、その際に意識していることを少しまとめることにしました。

適度なメリハリをつける

今回僕が参加したのはあるメンバーのパフォーマンスに関するサーベイです。数十個の項目を5点満点でポチポチ採点します。

例えば、

1)ミスしないよう仕事を丁寧に進めること
2)業務進捗のこまめなホウレンソウ
3)目標達成へのコミットメント
4)仕事に取り掛かる前の段取り
5)アドバイスの素直な受容

をどのぐらい期待しているのか、また満足度はどの程度か、というような質問が出てきます。オーソドックスな内容で、イメージつきやすいと思います。

普通に考えれば、上記の5つ=確動性・ホウレンソウ・目標達成の意識・段取り力・素直さは、全部5点満点を期待するのが当然です。

ただ、そんなスコアリングをすればメンバーは混乱してしまい、何にフォーカスして磨き込めばいいかわからなくなってしまいます。結果、何も言わないのと同じになってしまう。

こういうのはメリハリをつけないとメッセージが伝わりません。サーベイやアセスメントだけでなく、半期や通期の評価(査定)でも同じですが、特にどこを強めに伝えるべきかを考えて点数をつけるべきだと考えます。

メリハリをつけるにあたっては、

・ミッションや職種、業務特性
・本人の強み、それを踏まえた育成の方向性

などを意識します。

メリハリのつけ方・例

メリハリをつける際に大事なのは「ほかメンバーと比較しつつ、そのメンバーに特に求めるものは何か」を考えること。ミッション、職種、個人の特性、長所短所などから。

僕はAくんには多くの項目で5点満点中5点を期待していますが、上記の5項目については3-4点でいいと思っています。具体的に見てみます。

1)確動性

Aくんの業務は、「絶対にミスが許されない」計数管理やクライアントワーク、コーディングなどの仕事ではなく、スピード・柔軟性・幅広い情報収集・即時の判断などが求められるもの。

このため、「確動性」は重要だが最重要ではありません。ということで、期待度は4点。

2)業務進捗に関するホウレンソウ

ホウレンソウはもちろん大事なので普通に大事にしたいのですが、彼の業務は「細部にわたって精度高くモレなくホウレンソウやってもらわないと困る」という性質のものではありません。

また、彼はプロセスに関してこまめにホウレンソウが必要なほどジュニアなメンバーでもないため、プロセスよりも結果・成果にまつわるホウレンソウがあればいったん十分。なので、業務進捗に関するホウレンソウの期待度は3点。

3)目標への意識

これも当然のように重要。

ですが、彼は半期や四半期で固定された目標を達成することに全力投球することが求められる直接部門のメンバーではなく、現場・経営の情報を広く収集しながら敏捷性・柔軟性高く動きを変えることの方が大事な部門。逆に目標に固執されるとまずい場面もあるかもしれません(あまり想像できませんが)。したがって、期待度4点。

4)段取り力

ミッション的には、段取りを考える時間よりも着手するまでの初速を求めたいものが多いのも特徴です。

また、彼は好奇心旺盛なタイプで多動力が強みなので、初速で一気に詰める仕事の仕方の方が成果が上がりそうだと考えています。特性や強みも反映して考えます。

もっとも、前期と比べれば今期からは巻き込む人数は少し増えそうですし、工期の長いプロジェクトにもアサインされる予定。職種をまたいだ調整業務も増えるでしょう。ということで、ミッションが変わっていくことを加味しつつ期待度は4点。

5)素直さ

若いこともあって、上司や先輩のアドバイスを素直に受け止めることは超重要。

とは言え、自分で考えて結論を出すのも彼の強みですし、それが大きくずれることもあまりありません。素直に受け止めすぎるとその強みが阻害される可能性もある。

周囲の話は聞きつつ、どう取り入れるかは自分で考えて欲しい。なのでここでも期待度は4点。

自分の好みでスコアリングしてはいけない理由

サーベイ回答の際には、「自分の好み」を反映しすぎないよう気をつけます。

例えば、自分が土日や深夜の業務も厭わない姿勢で頑張っている人は、同じような姿勢で働いている部下をつい評価しがち。また、自分の仕事が裏方業務になることが多い人は、そうした業務に一生懸命取り組む人に光を当てようとしがちです。

ここはなるべくフラットに、好みが色濃く出てしまわないように気をつけます。理由は大きく2つ。

1)「上司の顔色を伺う部下」を作らないため

メンバーの活躍はあくまで顧客や社会の期待に応えるためのものであるべきです。上司の期待に応えることももちろん大事ですし期待してしまうものですが、その上司からの期待というのは顧客や社会からの期待と紐づいていなければいけません。

上司の顔色を伺い、上司の好みを嗅ぎ分けてうまーいことやる小狡いメンバーを作ってしまわないような注意が必要です。

2)自分と違った強みを持つメンバーの強みを開花するため

自分の好みで採点してしまうと、全メンバーに同じものを求めることになります。課題の克服よりは強みの伸長の方が圧倒的に育成効率(成長速度)はいいものですから、育成を効率的に実施するためにもこの観点は重要だと思ってます。

ちなみに、そうは言っても僕らは「主観」の色メガネとは無縁ではいられませんし、僕らの好みは会社の理念やビジネス上の重要なポイントと紐づいていたりもしますので、ある程度はしょうがないかなと思っていたりもします。

「タテ」と「ヨコ」の意識も忘れずに

多くの場合、システム化されたサーベイでは、一人のメンバーに関する質問にひたすらポチポチと回答し、一人終わったら次、もう一人終わったら次、と進みます。

こうしたシステムの仕様に合わせて回答するよりも、オススメはエクセルやスプレッドシートなどに全員分横並びで一気に採点してしまい、システムへの入力はあとで行うこと。

僕は、人事の担当者にそのままスプレッドシートを渡して入力をお願いしてしまうこともあります。

この方法には4つのメリットが。

1)タテ(時系列)の比較ができるようになること

前回、前々回と比較しながら、「この項目はこれからより期待したいな」「この項目は最近グッと伸びたな」など、メリハリをつけてスコアリングしやすくなります。

2)説明責任を果たしやすくなること

また、実は3点をつけるか4点をつけるかは割と微妙なところだったりするので、こちらとしてはあまり前回から変わっていないつもりなのに前回4点・今回3点みたいな点数のつけ方になってしまうことも十分考えられます。

一方で、本人にとっては大きな問題ですから「前回と変わっていない認識なのに、なんで点数下がったんだろう」と気になりまくります。質問されて回答できないと、信頼毀損にもつながりますね。

3)サーベイ対象期間を終えた後でもレビューで使いやすいこと

普段から、もしくはその研修が終わったあとでも、その項目を見ながら本人の成長を定量的に把握しやすくなりますし、レビューやフィードバックがかなり行いやすくなります。

4)複数メンバーと比較することでメリハリをつけやすくなること

当然ですが、メンバーをヨコに並べて期待度・満足度をスコアリングしていくことで、メリハリはかなりつけやすくなります。

「なんでその点数なのか」までメモっとく

20-30文字程度でいいので、点数の横に「なぜその点数なのか」はメモっておくようにします。

・点数の根拠を聞かれた時に答えるため
・メンバーの経年の成長を振り返るため
・今後同じような育成の対象となるメンバーと差分を比較していくため

どのみち考えながらスコアリングしますから、大した工数も取られず利回りはとても良いように感じています。

まとめ

ほとんど育成・研修・評価系のサーベイを想定した内容になってしまいました。

本当は組織診断サーベイでも

・言葉の定義を全社で合わせ、シャープに分析できるようにする
・全員、スプレッドシートに入力してスコアを保存しておいてもらう
・計測タイミングを毎回揃える(賞与支払い後とかにしない笑)

みたいな運用ルールを最低限決めた方が、より精緻に状態把握ができると思うのですが、僕の怠慢で着手できていません。(これを読んだ優秀な人事メンバーが拾ってくれると嬉しいな・・・)

こうしたサーベイは、どこまでいってもヒトの主観の集合なので、血液検査のように定量的に精緻なものが出るものではなく、分析しても真実が見えてこないことも多いのです。

少しでもシャープに「健康状態の把握」ができるよう、そしてその後の「治療」の打ち手をミスらないよう、活用できることがあれば是非取り入れてみてください。

ここまで書いてから、

エンゲージメント的に(いいね数・RT数的に)あまりニーズなさそうなことを書いたことに気がつきました。まあ、社内共有用ということで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?