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研修に3年で1億円以上…ペイしてるのか振り返ってみた(怖)

弊社キュービックは組織開発に割と力を入れている方で、その関係でいわゆる「組織コンサル」や「研修」にはかなりお金をかけてきました。

ここ数年でどのぐらいかけてきたかをぼんやりと振り返ってみたところ、かけた費用は軽く1億円を超えていました

計算やめておけばよかった・・・

・新人研修を2回:3000万円弱
・マネジメント研修たぶん4回ぐらい:4000万円ほど
・組織診断系や育成の仕組みづくり系:3000万円ほど
・採用系などその他:2000万円弱
・上記の準備やオブザーブにかかった工賃:500-1000万円?

他にも、人事メンバーの人件費などサンクコストも様々あるため、さらに数千万円乗ってくるのは確実です。

育成投資を本格的に始めた頃、弊社の売上は10億ちょっとで、営業利益も数千万円という程度でした。余裕があったわけではない中で、成長のために思い切って突っ込んできました。

研修受講者がこんなに活躍したというファクトはいくらでもあるのですが、「研修やらなかった場合との差分」という形でここに記述することは難しいので、振り返るにあたっては以下の観点を重視しました。

・効果を最大化するためにやったこと・大事にした考え方
・予想していなかった、思わぬ副次効果
・失敗しない委託先企業の選び方

お役に立てれば幸いです。

※文章の構成がイケてなくてすいません。反応があったので慌てて書きました。

人材への投資はPLではなくBSで考える

まず、僕はヒトへの投資は全てにおいてこの発想が必要だと考えています。

wikipediaによると、「資産」の定義は以下の通り。

会社に帰属し、貨幣を尺度とする評価が可能で、かつ将来的に会社に収益をもたらすことが期待される経済的価値

人件費だけでなく、採用費や研修費、場合によってコミュニケーション系の投資は、基本的に全てこれで説明が可能だと思っています。「貨幣を尺度とする評価」が可能かどうかは微妙ですが、人材にも「市場価値」という概念はあるわけですし。

「10万円の研修を受けたメンバーが、10万円以上の価値を会社に返してくれるだろうか」を考えるのは当然。ただ、単年度PLでの回収はそもそも難しいでしょう。

費用対効果ではなく投資対効果で考えること、回収は長期で考えること、そして育成効果は定量ではなく定性での把握を目指すことなどを大事にしています。

人事/経営はスキルよりもスタンスへのアプローチを重視

テクニカルスキルの開発は機会も多く、業務の中から学び続けることが十分可能です。多少意識があるメンバーは自ら学んでいます。会社で導入する際にも、効果が見えやすく、安価でハードルは低い。こういうのは事業部サイドでやればいいと考えています。

問題は、スタンスへのアプローチです。

・自身のスタンスに課題があると思っている人間はいない
・大きなブレイクスルーがないメンバーは大抵スタンスに課題がある
・通常業務内においてはスタンス改善に向き合う機会がほぼない
・忖度が発生しやすい社内メンバーからはスタンスへのFBを得づらい

経営や人事がコミットする必要があるのも、社外の方を招いた緊張感のある場を活用すべきなのも、ここ。

スタンスがよければスキルは後からついてくるもの。また、本当に人が成長するのって、景色が変わるかスタンスが変わるかのどちらかではないでしょうか。

PR効果?

これは思わぬ副次効果でした。

組織コンサル系のソリューション企業は、顧客を積極的に事例として取り扱います。このため自然と露出機会が増え、企業PRに繋がっていきます。

こうした効果を得るためにも、自ら学んで講師やコンサルの皆さんと意見交換できる程度の解像度は必要。オブザーブしながら日々学んでいます。委託先の企業から出ている本は基本的に全て読み、共通言語を揃える努力をしました。

研修受講者以外が享受するメリット

受講者「以外」が受け取るものもなかなか無視できません。

(1) オブザーブに回る上司の成長

まず、オブザーバーとなる上司の成長機会になります。

講師の方が繰り出す高い視点からのフィードバックや、上司が把握できていないメンバーのインサイトなど、研修を通じて様々な気づきや学びを得られます。

「ヤバい、自分もできてないな・・・」というフィードバックを目の当たりにし、背筋が伸びるアレです。自身の基準の低さや言語化能力の弱さ、メンバーの状態把握の甘さなどを痛感し、景色が変わっていきます。

(2) 受講者と一緒に働いているメンバーの「やりやすさ」

スタンス開発系の研修では、受講者自身の周囲のメンバーからのフィードバックを研修に反映させることが多く、自己を客観視することが求められます。

時に厳しい指摘もあるため、これらを正しく受け止められるかは本人次第ではあるのですが、普段伝えきれていないフィードバックを伝えることにより業務がスムーズになっていくことが考えられます。フィードバックコストが下がると言いますか。

また、研修で取り扱われる言語が社内で共通言語化していくことにも一定の価値があると感じます。

(3) プロジェクトを担当する人事の学習機会

講師やコンサルタントの方との打ち合わせや振り返りが、プロジェクト担当者の大きな学びになります。

サイバーエージェントの曽山さんが「人事の仕事は売上を上げること」と言い切られているように、人事の仕事は本来、事業の成果で計測されるべきです。にも関わらず、多くの人事は事業解像度や経営ビジョン理解度が不十分で、育成のゴールを正しく言語化できていません。

イケてる組織コンサルはここに正しくアプローチしてくれます。

・経営理念やビジョン、戦略、ビジネスモデルを正しく理解する
・これらを基に、事業で活躍する人材の要件を導き出す
・育成対象メンバーとのギャップを明らかにする

全ての人材開発・組織開発はこうあるべきで、プロジェクト担当者はここと改めて向き合うことを通じて成長します。

これらのメリットをどの程度享受できるかは、受講者を取り巻く全ての人間が「コーチャブル」であるかどうかに大きく依存します。学びの機会を素直に受け止め自分を変革できる柔軟性が、効果の最大化に繋がります。

日常業務との丁寧な接続

新人のビジネスマナー研修やハラスメント研修などを除き、単発のいわゆる本当の「研修」はほぼ無意味だと思います。

日常業務への引き寄せがなければただのお勉強になってしまいますし、それすら継続していなければ地肉になることはないためです。読書でもしていた方がまだ良い。

・上長とテーマを握る
・毎日の業務で実行できるアクションプランをセットする
・振り返る機会をなるべくこまめに設ける
・近くで働く人から客観的なフィードバックをもらう

インプットとアウトプットは、しっかり合致して循環することで初めて本来の価値が出るもの。これらはセットで考えるべきでしょう。

実際にはこれをやりきることはとても難しく、まだまだ改善の余地ありです。

研修を受講したメンバーの一部離脱は覚悟

これは覚悟した上で実施する必要があります。

・高額な研修を受講したメンバーが(すぐにではなくても)退職する
・マネジメント研修を受講したメンバーがマネジメントを降りる

研修は長期で効いてくるものなので、がっつりリターンが出てくるまでに状況が変わることも多い。また、気づきの深い研修であれば本人の志向にも変化があって当然です。
※研修が離職にダイレクトに繋がることはそこまで多くないとは思います

例えば、10人で500万円の研修を受講する場合に「一人あたり50万円」と考えてしまうと、そこから3名が離脱すると「150万円損した」との発想がどうしても頭をよぎります。

どうしてもPLで考えないと気が済まないなら、「1人あたり50万円」ではなく「10人で500万円」と考えること。離脱した数名に目を向けることよりも、受講者全体の活躍に目を向けること。離脱が出るとそこに目を向けてしまいがちですが、研修が逆にリテンション(離脱・モチベ低下を研修が防いでくれる)に繋がっていることの方が、実は多い気がします。

なお、キャリアパスを変更したメンバーも、そこで得た学びは随所に生かしてくれます。離脱したメンバーも、僕らがしっかり愛情を注いでいれば、いつか必ず何らかの形で返してくれます。

委託先企業の選び方・活用の仕方

ここまで丁寧に振り返ってみると、改めて期待以上の成果を得ることはできていると思います。要因の1つに、委託先の会社や講師の方の選定が良かったことも挙げられます。

会社や担当の方の経験・スキル以上に、

・経営の理想を正しく理解してくれるスタンスや理解力
・この人たちから自分も学びたいと思えるか
・率直なリクエスト交換ができる関係値が構築できるか
・価値観が近く、互いにリスペクトし合えるか

つまり「相性」のようなものが大事だったように思います。メンバーの成長のために同じ熱量で向き合い切れる相手でないと厳しいでしょう。ヒトに変化のキッカケを産むことはやはり非常に困難です。

まとめ:「ペイするか」ではなく「ペイさせるためにどうするか」

受講者が大きく成長して業績貢献をしてくれたとか、表彰者や昇格者が出たとか、そういうわかりやすい効果はもちろんあったのですが、副次効果も意外と大きかったため、1億円の投資対効果は既に十分得られていると感じます。これからさらにその効果は上がっていくはず。

ただ、こうした効果を得ることができたのは、「ペイさせるためにちゃんとコミットし続けた」から。

投資対効果を考える際、分母を絞ろうと考える経営者は多いのですが、分母を変えずに(もしくはさらに分母を大きくしつつ)分子を最大化しようと考えられる人はあまり多くない気がします。

僕は原則としてほとんどの研修にオブザーブ参加することにしています。目的は以下の4つ。

・自分自身の学びのため
・期待をメンバーと講師に示し効果を高めるため
・講師と課題感のすり合わせを高い精度で行うため
・日常的にメンバーと交わす言葉を講師と揃えるため

経営者が「お金払って委託したので、後は上手いことやってくれ」というスタンスでは、効果は半減するでしょう。受講者にもそのスタンスは伝わります。

ペイするかどうかではなく、ペイさせるためにどう頑張るか。我々次第じゃないでしょうか。


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