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【読書感想文】『クリームイエローの海と春キャベツのある家』を読んで

せやま南天さんの『クリームイエローの海と春キャベツのある家』を読んだ。
以下、愛称であるクリキャベと呼ばせていただく。

クリキャベを読み終え、これは感想文を書かずにはいられないという気持ちになった。

僕が読書感想文を書くのは、高校生以来である。

読書感想文の課題が苦手だった。
三年間担任が違ったのをいいことに、夏休みの課題を毎年「オシムの言葉/箸:木村元彦」の感想をほぼ同じ内容で書いて乗り切ったほどだ。

クリキャベを読んだきっかけは、インターネットラジオすまいるスパイスの生配信。せやま南天さんがゲストとして参加されていた。僕は新メンバーになった妻の付き添いでその場にいた。席はせやまさんの隣だった。僕はせやまさんもクリキャベのことも何も知らない超失礼な野郎であった。それにも関わらず、せやまさんは仏のように優しく接していただき、本を読まずともすぐにファンになった。

配信終わりにすぐに本をポチり、翌日から読み始めた。

“家事”がテーマの本作品、主人公の津麦が家事代行の仕事の中、織野家の家族の元で奮闘していく物語。

読み進めていくにつれ、胸がカイロのようにどんどん熱くなった。
本を読む前に家庭でおきた出来事が引っかかっていたからだと思う。

僕には二歳の娘がいる。
そして、妻とは共働きである。
家事、育児に関しては、自分の感覚だと僕と妻の行う割合は三対七くらいだ。一見少ないと感じられるかもしれない。
しかし世の中には全く家事をしないパパもいると聞く。実際に僕の父親もそうだった。
そのため自分は家事をしている方だという意識があった。仕事から帰ってから、寝かしつけ以外の残っている家事を行う。洗い物。洗濯。娘のお風呂。風呂掃除。
自分ができることを精一杯やっていたつもりでいた。

そんな中、娘が僕を受けつけなくなった。

「パパやだ」「あっち行って」「パパ嫌い」

パパ……嫌い……?

娘は残酷すぎる言葉を僕に向けるようになった。

パパからの食事を嫌がる。抱っこを嫌がる。手を繋いでくれない。
「ママ」より先に「パパ」が言えるようになった愛娘に嫌われてしまった。
決して大袈裟ではなく、“世界が終わった”と思った。
僕が普段嫌っているハンバーガーのピクルスも同じ気持ちだったかと思うと謝りたい気持ちになった。

僕がいままでしていると思っていた三割の家事や育児は意味がなかった。
妻は「ありがとう」などと優しい言葉をかけてくれるが、本当は僕の家事は一切役にたっていないんじゃないかと疑うようになった。

そんなメンタルの中で、この本を読み進めた。
優しい文章や言葉が目から入り身体に吸収され、自分を応援してくれている。
※以下、ややネタバレあり。

最初は主人公の津麦の奮闘ぶりに感情移入をしていたが、途中から織野家の主人、朔也に共感するようになった。

朔也は大家族の主人。妻を亡くし、全ての家事を一人で行う。それでも自分が家事をできているのか不安で、津麦に打ち明ける場面がある。そこで、おこがましくも自分に重ねてしまった。

“家事なんて世の中の人の多くが当たり前にできていると思っていた”
“本当はできている人なんて、そんなに多くないんじゃないか”


僕もあまり本音を表に出せないタイプだ。弱音を吐けない。
朔也が思わず悩みを漏らし、津麦に励まされるくだりで、僕も一緒に励まされた。

読む前はこの本が世の中のママさんの心を軽くしてくれるものだと思っていた。でも、まさかパパの心まで軽くしてくれるとは……。

先日、僕は娘と二人になる時間があった。
運動会ごっこ。娘が白組。パパは赤組。
運動会は白組の圧勝で幕を閉じた。
運動会ごっこ中、娘ははっきりと
「パパ大好き」と言った。
実質、赤組の勝利だった。

家事や育児で悩むのは、世の中のママだけではなくパパも同じであると思う。

多分、また同じように悩むことがある日があると思う。でも、何度も読み返して、その度に励まされたくなる本である。

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