【ショートショート】草食系男子に教えられたこと

「牛乳は空気に触れると美味しくなくなる」

同棲していた彼は、そう言い残し、この家を去った。

彼は牛乳パックの口を洗濯バサミで閉じていた。

私は牛乳にそこまでする必要を感じておらず、そのままにしていた。

そもそも私たちは感覚が合わなかったのだと思う。

彼はいつも食事に牛乳を添えていた。

私は
(給食かよ)
と思っていた。

彼は16時を夕方と言う。

私は
(昼)
と思っていた。

私が会議で使う資料を彼に添削してもらうと、全角数字を半角数字に直してくる。

私は
(内容を添削してほしい)
と思っていた。

彼はカーナビで北を上に固定するモードで運転していた。

私は
(コンビニ行くのに北は重要じゃないだろ)
と思っていた。

彼とホームアローン観た時、主役の子役を
「マコーレー・マコーレー・カルキン・カルキン」と改名後の名前で言っていた。

私は
(文字数多いな)
と思っていた。


彼がいなくなって清々した。

一人になって牛乳を飲んだ。

確かに空気に触れた牛乳は不味かった。

(406文字)

以下企画に参加させていただきました。

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