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森山大道の道は斜め

展示に出てくる写真で、正面にまっすぐというのは山手線のホームあるいは車上から撮ったスクランブル交差点を渡る人の群れとそびえ立つ109の写真だけだった。(たぶん)

気がつけば展示最終日ということで老体に鞭打って一日48km自転車に乗り、どうにかOn goingな間に東京 Ongoingを見に行くことができた。

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メインの展示室は広い面の1つがモノクロ写真48枚(600x800の写真が縦3枚×横16枚)、もう1つがカラーの写真54枚(600x800の写真が縦3枚x横18枚)と両者が対峙するような構図。カラー写真は発色現像方式の光沢感が強い仕上がりで、彩度の高い色味ともあいまってモノクロとはまた違う存在感を放っていた。

もはや説明も不要であろう写真について一応印象を書いておくと、とにかくひとつひとつの絵が強い。広角のパースを活かしたウィリアムクラインオマージュのような写真ももちろん魅力的だけど、渋谷にいそうな不良の背中はTシャツがブワッと浮き上がった瞬間をピタリと狙っていたり、座っている女性の足を切り取ったカットは画面の大半を小さなタイルが市松模様に彩っていたり、横断歩道を渡る女性はよく見ると足首にタトゥーが入っていたり。キャミソール姿で新宿を歩く後ろ姿は、ひと目で男性と分かる肩周りとふくらはぎの筋肉がきれいな階調で描かれていたり。

組み合わせもにくい。うなだれるボクサー風の像のカットは右端に「お弁当やってます」、イヤリングとうなじから鎖骨だけを綺麗に撮った女性の後ろにはJRとひと目で分かる車両の窓枠と窓外の駅の風景。セルフィーの鏡の上に写る看板は「ホスト募集中」。群で見ると、こういうディテールが街の雰囲気の底流を醸し出していたりする。

そして何度か会場をぐるぐるして印象に残ったのは、女性の髪。モデルを撮る写真の綺麗さ滑らかさとはまた違うけど、バキッとした線と際立つ物質感が目を引く(ボキャ貧)。この辺は撮り方だけではなくて、プリント・仕上げ方にも妙味が。幕で隠された小部屋にライトボックス風に展示されていた網タイツシリーズの、もうそれだけで別のもののようなマテリアル感もこの辺の絵作りと地続きな感じでおもしろい。引き出しが色々と広い。

写真を初めてすぐの頃にそのスナップに惹かれたけれど、展示をちゃんと見るのは初めてだった。大きくプリントして壁に貼ると本やWebとはまた違う世界。間に合ってよかった。帰り道はたくさん写真を撮った。

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