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Seven Questions#6 ヴィヴェク・ガリパッリ(Clover Health)

原文はこちら ※原文は2018/7/18のものです
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ヴィヴェク・ガリパッリは、データ分析と予防医療を用いてより良い保険を最適な価格でメディケア患者に提供する、「Clover Health」の共同創業者兼CEOです。彼は金融業界からキャリアをスタートさせ、2014年にClover Healthを立ち上げる前は金融業界からEnsenble Health PartnersとCarePoint Healthを設立した他、Flatiron Healthの創業期から取締役兼アドバイザーを務めています。


Q1. あなたがこれまで学んできたことの中で、日々大事にしていることはなんですか?

長期的な視点を持つことです。ビジネスを成功させるにはとても長い時間がかかり、そううまくはいきません。そういうものなのです。そういう不安定さに慣れ、「自分が何を成し遂げたいのか」にフォーカスし続けることでその不安定さを乗り切ることができると気づかなければなりません。

長期的な視点を持つことの一つが、自分自身のミッションに強く紐づいたビジネスモデルを選ぶことです。お金が得られるから良いことをするのではなく、良いことをするからお金が得られるのです。私が起業家としてスタートした時、私は事業の経済性ばかり追い求めていました。ヘルスケアは目的を達成するための手段でしかなかったのです。しかし今は、自分が人々を直接助けることに寄与しない事業のCEOをやっているところは想像できません。世界に価値を届けること、それこそが最も充実感を与えてくれます。それこそがあなたとあなたのチームが目の前のあらゆる課題を乗り越えるための原動力なのです。


Q2. 起業する人に一つだけアドバイスをするとしたら、どんなアドバイスをしますか?

私が知っている事業を始めるための唯一の方法は、ただ急いで事業を始めてしまうことです。財務モデルを考え続けて最終的に「分析マヒ(analysis paralysis)」に陥ることもできるし、気にせず突き進むこともできます。私は金融の仕事を辞めたのと同じ週にヘルスケア領域で最初の事業を始めました。

私の父は医者で、父が働いている医療複合施設の周りを散歩しているときにこの小さな睡眠センターを見つけました。私は睡眠障害の診断で軽くググってみて、交渉をして、2ヶ月後にはその施設を運営していました。もちろん、私はその他にも無数の事業を選ぶ余地があったし、その睡眠センター事業で数え切れないほどの失敗をしましたが、それが私を9年後にClover Healthへと至る道に引き込んでくれたのです。仕事を辞め、何かしら始めなさい。あなたはきっと失敗します。なぜなら失敗するのが当たり前だからです。もしそうなったら、また違う何かを始めれば良いのです。この上なくシンプルです。


Q3. どんな小さな変化が、あなたの人生に大きな違いを生みましたか?

会社が成長すると共に、雑多な仕事からどんどん手を引くことを学んでいます。創業者としてスタートしたての頃は、あなたはビジョンを持っていてそれを詳細まで理解しているので、あなたのもとにあらゆる仕事が降ってきます。しかし他所からより経験豊富な人を連れてくると共に、いくらかの議論からは身を引くことが重要になってくると思います。ちょっとしたメールは無視してしまいなさい。たとえ誰かに頼まれたとしても、それにより価値を与えられると感じても、議論されているあらゆる戦略や戦術にフィードバックしたくなる衝動に抗うのです。

しかし古い習慣というのはなかなかに根強く、あなたが仕事をより現場に任せられる余裕が出てくる前に、現場を率いるリーダー層をよりレベルアップさせなければなりません。あなたは優秀な人を雇わなければならず、雇った後は彼らに良い仕事をするための自由を与えなければなりません。私は自分の干渉を制限すると、組織のスピード感がアップすることに気づきました。干渉している時は、物事の進みが遅くなるのです。チームが自然と同じ方向に向かっているからか、もしくは彼らが何かより優れたことを思いついているからか、毎日自分が口出ししなくてよかったと思うことがあります。

手を出すのではなく、自分の背中の上で会社を育てることができます。私はそうしてきました。それによってあなたはより遠くへ行くことができるのです。大規模で変革的な何かを生み出したいと思うなら、あなたのインプットがあろうとなかろうと上から下まで機能するチームが必要です。


Q4. あなたが知らなかったことで、知っておければ良かったことはなんですか?

私は実際に、「少なくとも初めのうちは知らなくて良いことがある」という考えを強く信じています。起業家としての経験を振り返ってみると、今は知っていることで、もしかつて知っていたらやらなかったであろうことが数え切れないほどあります。例えば私たちがClover Healthを始めた4年前、私は個人の資金で会社を作りました。もし私がメディケア保険についてもっと理解していて、それがゆくゆくどれくらいコストのかかることなのか理解していたとすれば、私はリスクを取ることはなかったでしょう。

私がFlatiron Healthの創業をサポートしていた時、私は当初テクノロジーについては何も知らなかったし、逆に相手はヘルスケアについて何も知りませんでした。しかしそのおかげでお互いに協力しやすくなったと思います。それこそが私たちが素晴らしいアイデアを思いつき、実行に移すことができた理由です。

何かを学ぶ必要がある時、私はそれを学びに行きます。しかしそれまでは何も知らなくても構わないし、進みながら理解していけば良いと思っています。


Q5. 今あなたの枕元にある本はなんですか?

あなたのミッションとビジネスモデルを明確に結びつけることは、今日の企業の将来的な成功のために必要不可欠です。『Raving Fans』というケン・ブランチャードとシェルドン・ボウルズの短い本は、この考え方にまつわる力強く、シンプルなストーリーを展開している素晴らしい本です。

ジョン・ハゲルとアーサー・G・アームストロングの『Net Gain』と、ハゲルとマーク・シンガーによる『Net Worth』も紹介します。まだこれらの本は読めていないのですが、人を操るようなデザインをした広告を使うのではなく、顧客に情報を与えて意思決定の手伝いをするというマーケティングの考え方に非常に興味があります。

ライアン・ホリデイの『The Obstacle is the Way』は、私のフィアンセがプレゼントしてくれた本で、これまで多くの人に勧めてきた一冊です。この本は、あなたの前に現れるあらゆる障害を取り上げて、それを乗り越えるものではなく資産にすることについて教えてくれる本です。Clover Healthの誰かが大きなミスをした時は、彼らを呼んで「この本を週末に読んできなさい。月曜日にまた話そう」と言うつもりです。


Q6. あなたが、自分が何かについて間違っていると気づいたのはいつですか?

毎週のように気づいています。あなたは毎日単位でも、毎週単位でも、毎月単位でもとても多くの決断をしています。たいては小さな決断ですがときには大きなものもあります。そのおかげで私は、「間違えても大丈夫だ」という現実に馴染んできました。
2, 3年前に起こった、Clover Healthが民間のメディケア保険に参入したときの例を紹介します。私たちには、ネットワークの内外で同じコストを分担して提供し、顧客にとっての摩擦を取り除こうという考えがありました。それで、いくつかの法律事務所と話をして、承認をもらって、マーケティングの資料も準備して、計画をスタートさせました。すると、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)にこの取り組みが全く異なった捉えられ方をしてしまい、早急にマーケティングアプローチを撤退しなければならなくなりました。

私たちには確かに素晴らしい意図がありましたが、同時にお粗末なコンプライアンスチームしか持ち合わせておらず、どの程度のレベルの専門的な能力が求められるのかを把握できていなかったのです。連邦規則の構造や判例をじっくりと調べていれば、CMSが根本的に異なるものの見方をしていることは明らかでした。理由は後になって分かりましたが、彼らは私たちのマーケティングの枠組みに同意していなかっただけで、私たちは彼らの意図が明らかにポジティブであり、消費者の利益と保護を目的としていることに気づきました。しかし、ニュアンスを理解していないと、意図しない結果に気づくことができないのです。

当時私は既にヘルスケア業界にしばらく身を置いていましたが、今回の経験で、メディケア・アドバンテージのコンプライアンスについての学習曲線は私が認識していたものより遥かに険しいものだったことを思い知りました。これは私一人で早急に解決できるようなものではありませんでした。なので、そのタイミングでチーフ・コンプライアンス・オフィサーを雇いましたが、彼女は驚異的な働きをしてくれました。この経験を通して、私はたとえ自分が精通してると思っている領域に対してであっても専門家を雇うことの重要性を痛感しました。


Q7. あなたにとって最も重要な時間の単位は何ですか?またそれはなぜですか?

シャワーを浴びている10~15分、ただ地面を見つめている時です。どういうわけか、その時にちょうどアイデアや解決法が私に降りてくるのです。Clover Healthもシャワーによって生まれたアイデアです。

1日の間に、何も考えず反復的な行動をしている時間はいくらかあると思います。まさにシャワーを浴びていたり、歯を磨いていたりする時です。考えが詰まっていたりするなら、その時間を使ってみたらいいと思います。その時の頭の中には、何か創造的で役に立つものがあるのです。「あぁ!こうすればいいのか!」と私が閃くのはこういう時間です。その時思いついたアイデアに従った結果失敗したこともありますが、それ以上に多くの問題を解決してきました。


Hard-won advice(努力して得た教訓)

1. Knowing everything is overrated(あらゆることを知っているというのは、言うほど良いことではない)
2. Hire experts(専門家を雇え)
3. Stay out of the weeds(雑多な仕事からは手を引け)


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