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コト売り≒体験価値の提供

現代のビジネス環境では、消費者は製品やサービスを単に購入するだけではなく、体験を求めるようになっています。また、商品やサービスを消費することで生まれる、社会貢献的側面を重視する消費行動である『イミ消費』の需要も拡大しています。
そのため、企業が提供する体験価値は、消費者にとって重要な要素となっています。

「コト売り」というワードもよく耳にしますが、「コト売り」と「体験価値の提供」は似ているようで微妙に違います。
本記事では、それぞれの違いについて整理してみるとともに、企業にとって体験価値の提供とは何なのか、その重要性と具体的な方法について触れてみたいと思います。



【コト売りと体験価値の提供は何が違うのか】

  1. コト売り

    • コト売りは、最終的には製品や商品を販売することに着地させていきます。結局のところ物理的なプロダクトを顧客に提供していくビジネスモデルです。

    • このアプローチでは、顧客は商品を購入し、所有することに主要な価値提供がフォーカスされています。

    • 商品の品質、デザイン、価格などが購買の決定要因となります。

  2. 体験価値の提供

    • 体験価値の提供は、商品自体だけでなく、それを取り巻く独自の体験や価値を顧客に提供することを重視します。

    • このアプローチでは、商品を購入するだけでなく、その商品を使うことによって生まれる感情、エンターテイメント、教育、社会的なつながりなどが強調されます。

    • テーマパーク、ホテル、レストラン、スパ、イベントなど「そこでの体験により満たされる事」に体験価値を感じ、対価が発生します。

違いの要点:

  • コト売りは主に物理的な商品の提供に焦点を当て、商品自体が顧客に提供される価値です。一方、体験価値の提供は、商品自体に加えて、顧客がその商品やサービスを通じて得る感情的な、社会的な、文化的な価値に重点を置きます。

  • 体験価値の提供は、購買前、購買中、購買後の全体的な顧客体験に焦点を当てることが一般的であり、ブランド忠誠度や口コミを高めるのに役立ちます。

  • コト売りは商品の特性や価格が重要な要素である一方、体験価値の提供は、感情やエンゲージメントを駆使して顧客に訴求することが一般的です。

多くのビジネスは、コト売りと体験価値の提供を組み合わせて、競争力を高め、顧客の要求に応えています。どちらのアプローチを選択するかは、業界の特性、ビジネスの性質や目標、企業の成長フェーズや業界でのポジショニングなど様々な要因によって異なります。


【企業の体験価値とは】

企業の体験価値とは、顧客がその企業や製品、サービスを利用することによって得られる感情や体験のことを指します。つまり、単なる製品やサービスの提供だけではなく、顧客にとって特別な価値を提供することが求められます。現代はVUCAや多様性により、価値観やタッチポイントの在り方や優先順位、メッセージの響き方が個人により様々です。それによりコミュニケーションロスが生まれやすく、企業のあらゆる情報発信は複雑化しています。

【体験価値の重要性】

顧客が良い体験を得ることができる場合、その企業や製品、サービスに対する愛着が生まれ、長期的な顧客ロイヤルティが形成される可能性が高くなります。また、体験価値を提供することで企業のブランドイメージを向上させ、競合他社との差別化を図ることができます。
これからを考えると、市場性や企業のビジョンを掛け合わせた中でスイートスポットを見出し、『体験価値の提供』を継続的に行えるかが持続的・継続的に社会から必要とされる企業と成れるか、そこに直結していきます。

【体験価値を提供する方法】

企業が体験価値を提供するために取り組むべき具体的な方法についても触れてみます。

■カスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客が企業の商品やサービス・ヒトとどんなタイミングでどんなツールでタッチポイントを持つかが視覚化されます。
また、顧客が商品やサービスを利用する際に経験するプロセスを理解することができます。これにより顧客が求める体験を特定し、仮設する事で体験を改善することができます。

■顧客へのパーソナライズ
顧客へのパーソナライズは、顧客がより一層特別な体験を得ることができる方法の一つです。個々の顧客の好みや嗜好を把握し、その情報を活用することで、製品やサービスを提供する際に顧客の期待に応える、満足度の向上につなげます。

■テクノロジーの活用
テクノロジーの活用によって、顧客に新しい体験を提供することができます。例えば、仮想現実や拡張現実を活用することで、顧客にこれまでにないが世界を体験してもらう。また、AI技術を利用して、顧客の好みや嗜好を把握し、個別の提案を行うこともできます。さらに、スマートフォンやタブレット端末を活用して、最適な場所やツールで商品やサービスを提供するなど、テクノロジーの活用により顧客との接点構築を拡大することも満足度を向上させていくこともできます。

■サービスの改善
サービスの改善によって、顧客がより良い体験を得ることができます。たとえば、商品の配送にかかる時間を短縮する、カスタマーサポートの質を向上させるなど、顧客が利用する際にストレスを感じないようにすることが大切です。

■ブランドストーリー(物語)の伝達
ブランドストーリーの伝達によって、顧客が企業や製品、サービスに共感することができます。企業がどのような思想を持ち、どのような価値観を持っているかを伝えることで、顧客がその企業に共感するようになります。
また、物語を体験できる場所をオンラインやオフラインを問わず、ステークホルダーを巻き込んだ参加型のカタチで創出する事で共体験が生まれ、価値提供へと昇華しやすくなります。

【最後に】

ここまで、体験価値の重要性や創出方法に触れてみましたが、
価値観が個々人で変化している事が大きいと感じます。これまで、一方的なメッセージでステークホルダーから共感を得ていく独演型のコミュニケーション構造で企業は販促やプロモーション、ブランディングを行ってきましたが、ここにきて企業に求めるコミュニケーション構造は劇団型(同じ舞台に企業はもちろん、顧客や仕入先、社員、社会もみんなが同じ舞台に上がる)に変容しています。共感から共体験という双方向性が求められる『つながり方』へと欲求変化した為、『一緒に価値体験する場所』が必要になり、おのずと『その場所で体験する価値』が重要視されているのではないかと推測します。
これまでマーケティング観点から「市場に答えはある」と言われる事も多かった。ただ、これからは『市場も気付いていない答えを探す』ための活動が企業に求められるのではないかと感じます。

パーパスを策定する企業が増え、ナラティブや物語といったワードが多く露出し市場の主役は企業から消費者に移行しています。SNSをはじめとしたweb2.0からweb3.0に変化してきている背景も同様だと感じます。この辺りも今後触れてみたいと思います。

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