2020鹿島アントラーズ総括 3話

総括第3話、最終話です。

鹿島アントラーズ2020シーズン総括をします。

1話はこちら→https://note.com/410kibun/n/nfd6f4937765b
2話はこちら→https://note.com/410kibun/n/ne3548b84d823

ようやく、今季を振り返ります。

3つのターニングポイント

2020鹿島アントラーズは
ACLPOvsメルボルンV ●0-1
ルヴァンvs名古屋 ●0-1
リーグ1節vs広島 ●0-3
リーグ2節vs川崎 ●1-2
リーグ3節vs札幌 ●0-2
リーグ4節vs浦和 ●0-1

の6連敗でスタートした。最大の要因はACLプレーオフといって間違いないだろう。ザーゴ来日から1ヵ月足らずでの、今季の概要を大きく左右する大事な試合。スタメンには新加入の選手が6人と、ピッチ上の過半数を占めた。
その中でザーゴは自分の哲学に沿った色を出しながら2019鹿島の良さも保ちつつ、勝利を掴むために必要なクオリティを求められた。
しかしメルボルンVは2019鹿島の良さである土居ロールへの対策を用意し、完封。決して内容で圧倒したわけではないが、90分の間に取った1点を守りきり勝利を収めた。まさしく準備の差。準備の差で、負けた。


2020鹿島アントラーズは、躓いてのスタートとなったた。メルボルンVに守り切られた残像が残ってるかのように、その後の試合でも点が取れない。開幕6試合での唯一の得点も、CKからのオウンゴール。
新しい事をやる、顔ぶれも大きく変わってる、取り組み始めてから日も浅い、日程も過密…。皆がそれを頭で分かっていても、心が、開幕6連敗という事実を受け止められなかった。

暗雲が大きな亀裂へと繋がる前に、ザーゴは開幕7試合目のマリノス戦で1つの策を打った。それが遠藤システムだ。


これまで土居をあくまで1.5列目(ST)として扱い、立ち位置のなかで、規律のなかで点を獲ろうという指針をとってきたが、土居に代わって遠藤フリーマンのような形で起用する事で、全体に「遊びしろ」ができた。
開幕からこれまで、目指す勝ち方の遂行のためのプレーチョイスに縛られてしまっていた選手達に、遠藤のアドリブの色が強い動きが各々が考えて判断する事による「躍動」を、ピッチ上に蘇らせた。
結果この試合で4得点。チームは長いトンネルから脱した。かのよう思えた。



しかしこの勝ち方は、1,2話で説明した「過去の勝ち方」であり、本当の意味でトンネルを脱したとは個人的に捉えていなかった。
「組織として力強く戦うという事は、各々の選手の躍動ありきである」という意識が薄まってしまっていたピッチ上に、遠藤はそれを立ち返らせてくれた。ただこれはあくまで「立ち返り」であり、いわば自分達の足元を照らしてくれる懐中電灯を手にしたようなもの。まだトンネルの脱出とは程遠いと感じていた。


そしてそこから遠藤システムによって、足元は見えてるがまだどこに向かって進めいいのかわからない状態で少しずつ勝ち点積み上げるも、やはりどこか閉塞感が否めないまま試合を重ねていき、そのターニングポイントは訪れた。
それが

【ルヴァンカップ第2節】vs川崎フロンターレ戦。


この試合、キックオフから遠藤システムはなりを潜め、川崎相手に圧倒され続け60までが経過していた。

「またここか…」
個人単位の能力によってある程度は勝てる、が、個人単位の能力だけでは勝てない相手には、勝てない。
「これでは、前には進めてるとは言えないな…」
と感じていた後半20分、ザーゴは一気に4人の選手を交代した。その時のザーゴからしたら、賭けだったのかもしれない。ひたすらに圧倒され続けた60分、スコアは0-3。「何かを変えなければならない」それはプロの監督でなくても、我々素人目からしても明らかだった。

しかし、それがただの「やけっぱち」の4人交代ではなかった事、しっかりとビジョンの伴った策だったという事は、すぐにピッチ上が反応を示した。
1つ1つのボールに鹿島の選手の方が早く反応する。1つ1つのプレーがゴールへの迫力に繋がる。

ザーゴはピッチ上のトランジションへの強さにベクトルを向けた、選手交代を打っていた。


観客はコロナ禍にあわせて決して声を上げる事はないが、先ほどまでの停滞感が一気に晴れ、ピッチ上で躍動する選手達を期待する眼差へと変化していった事は、あの日あのスタジアムに居た者は漏れなく感じ取ったはずだ。


そこにザーゴサッカーの核があった。選手達が自らアクションを仕掛け、エネルギッシュに戦い、ピッチ上を支配する事。選手達「個々の頑張り」だけでは辿りつけない組織力が、そこにはあった。




確かに、川崎はルヴァンカップGL2節、後半残り30分で3-0とリードしていたわけで、ペースダウンをし、試合を落ち着いて着地させようという意図があったのは間違いない。そこに普段出場機会を得られていない鹿島の前線の選手が一気に4人投入され、より顕著に勢いを盛り返した。これはただの策の成功だけではなく「そういうタイミング」だったのがかなり大きく作用しているのは間違いない。でも、今季あんな可哀想な開幕をさせられたアントラーズ、なんか思い返せばポスト当たりまくってたり、不可避なオウンゴールとかで失点してたし、「そういうタイミング」でも来なきゃおかしいよ。
でなきゃあんまりじゃないか。そしてそのタイミングを逃さず意味を持たせた4枚交代で「光」を見出したザーゴの手腕は評価するべきだ。



この「30分の支配」から、目指す先が見えた。ピッチ上に体現できた。自分達でボールを持ち、奪われたら自分達で取り返し、仕掛ける。エネルギッシュに戦う。その先で、試合を支配する。
先ほど遠藤システムがトンネルを抜け出すための懐中電灯の役割を果たしたと例えだが、あの30分は、出口への光が垣間見えた瞬間だった。
この段階でもまだ、トンネル脱出と言えないのは、この「支配」を0-3からの残り30分で体現する事と、90分を通し支配をさらにコントロールしたうえで勝利につなげる事の間には、まだ長い道のりがあるからだ。


しかし、懐中電灯を手に入れた。出口の光も見えた。
あとは信念を持って前へ突き進むのみ。
進むべき道のりを見つけたこの開幕→遠藤システムからの30分の支配は、2020鹿島アントラーズを語るうえで避けて通れないターニングポイントだ。



そしてこの次の試合を最後に、鹿島は遠藤システムから卒業する。土居をSTに入れた、90分の支配にとりかかる。

そこからのvs横浜FC戦では負けはしたがシュート13被シュート3と内容では改善を見せ、次のガンバ戦では、昌子源の凱旋と内田篤人の引退試合という特殊な雰囲気のなか、後半ロスタイムに追いつき、勝ち点を積み上げた。


この次のFC東京戦から破竹の8連勝。6連敗目を喫した7月中旬の浦和戦からたったの40日間で連勝街道をスタートさせた。
この大型連勝ももちろん今季のターニングポイントの1つといえるだろう。
最も連勝に作用した要因は「前線でのボール奪取の構築」に成功した事が挙げられる。早い段階で前に運び、「前で奪う(前から攻撃を始める)」これが今季の鹿島最大のストロングポイントだった。アウェイセレッソ戦アウェイ名古屋戦は象徴といえる。あの連勝時、チームはとても高いエネルギーを出力できていた。キックオフから前半15分までに高いエネルギーで、「試合を自分達のものにする」事に成功していた事が大きい。しかし、前で奪う事の熟練度は上がったが、先ほど言ったように、そこまで行くのには「早い段階でボールを前に運ぶ」という条件付きだった。つまり、じっくりボールを持って押し込むという選択肢を捨ててボールを蹴り込む事も多くなってしまっていた。


来季はじっくりボールを繋いで、攻め押し込む。押し込んだ後で、前に仕掛け、跳ね返されたら前で奪うのサイクルを展開したい。でなければ、蹴り込み→前で追い込みのサイクルの消耗の激しさに、90分のマネジメントとして難しくなる。来季はこのストロングポイントに磨きをかけ、ボールを繋げる、蹴り込みもできるのハイブリットな攻撃を構築し、そこに前線でのボール奪還を結び付けたい。



3つ目のターニングポイントはコロナと怪我。コロナとか怪我とか続いた。自分達のやれてたサッカーを続けることが難しくなってしまった。そして終盤戦。上位に食い込み、来季のACL出場権を掴みとるための勝利が、強く、追い求められた。
この条件下で、ザーゴは昨年までのサッカーに再び立ち返った。でもこれは遠藤システムやった時とはまた別の話よね。その条件下で、最高の取り組みをってなった時に、良い内容を保ててた時の軸の選手の不在+順位が決まる重要な試合では全然納得できる。
つまり最終盤のあの戦い方は条件下に合わせて自分達の理想から少し離れてでもアジャストした戦いだった。そういうのもできるよって話。



こういう紆余曲折ありました。


まとめると、2021では、2020でトンネルを抜けた時の(夏場の)、自分達でアクションを仕掛け、相手を、試合を支配するサッカーをベースにできるよう熟練度を高める。それに加えて、蹴り込みだけではなく、ボールを繋いでの押し込みもできるようになり、テンポも掌握できるようになるのが目標。


目指せ3冠!!!!!!