【vs川崎】後半の4-3-1-2について考える

この日の鹿島はいつも通り前半4-4-2でスタートし、0-1で終えた前半を踏まえて4-3-1-2の配置転換をHTで施し逆転を図った。

について。



・俺が感じた4-3-1-2のメリット

◎守備面

①相手IHの取扱いに対しての迷いを消せた

 前半の鹿島の守備陣形は4-4-1-1。最前列の上田が中央からサイドの制限を狙うチェイスを仕掛け、サイドに誘導し、そこで狭さを作って押しつぶす。土居はアンカーの田中碧の監視役。割といつも通りで、割と上手く行ってるやつ。ただ川崎戦は全然上手い事行かなかった。最大の理由は川崎のIHの浮き方にどう対応するべきか最後まで答えが見つからなかったから。図にするとこう。

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ここで鹿島の持つ選択肢は3つで、それぞれどうなるかというと

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というわけで、川崎はGK+2CBの3人の最終ラインで上田をかわしさえすれば、鹿島が選んだ3つの方法のうち消せてない所を使って前進すれば良いという後出しがいくらでも効かせられる状態に。

前半は両SBが川崎の両WGを見事に封じてたり、撤退時は割り切ってガッツリ重心下げて人の量で守るという方針を上手く遂行してパスミスからの失点以外は0に抑えた。がしかし、ちゃんと再現性のある形で順調に攻め入られてるてるし、こういうガッツリ撤退こじ開けて点取ってきたからこそ今の勝ち点を積み上げてる川崎なわけで。このまま無策に後ろの頑張りで2点目を失わず90分まで乗り切るというのはなかなか監督として選択しづらかっただろう。

とはいえ、この現状をひっくり返す魔法は、ハーフタイムの15分では用意できない。そこでザーゴが選択した「妥協案」が、4-3-1-2。具体的にどこが妥協案なのかというと、この守り方だと相手SBへの圧力は「捨てる」という表現が適切になる。

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しかし、これは想定内。鹿島は

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という状況を踏まえた「妥協案」を用意したのだ。


もちろん、この守り方も完璧ではない。57分には欠陥がモロに出てるがサイド誘導を開始したのにサイドを変えられた時、逆サイドはガラ空きに。さらにトップ下(土居)のバックがバランス維持のためかなり重要になるため、消耗はさけられない。そして3CHの素早い横幅圧縮が必須になる。この辺に不慣れさはどうしても出ていたのは間違いない。しかし、画像にもあるように、前半のように

・最前列の上田がGK+2CBの3人がかりで簡単に外され

・そこからサイドをIHの立ち位置を軸に崩され

・最終的に後ろが踏ん張り切るしかない

守り方よりは失点の可能性を減らす方法だったと個人的には考える。

これが功を奏し、後半川崎は「前半より楽に(SBを使って)前進しできるのに、前進した後が前半より崩しにくなる」状態に。

あと健斗が浮く事により、2CH制の時より最終ライン吸収のカバーがより徹底され、CBが対象に向かってより勇気を持って激しく、遠くまで追えるようになったのも大きい。


1個目でしっかり飽きてる。なんならここからがメインなのに、惰性。



◎攻撃面

②じっくり、着実に川崎ゴールに迫るため

0-1で前半終了。勝つためには残りの45分で2点を決めなければならなくなった。

そこでザーゴが選んだ策が4-1-3-2だ。これにより前半と違い

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で、「ズレ」を土居の気遣いだけでなく配置で生み出せるようになったので、後半明らかにボールを繋げるようになる。そして鹿島が後半ボールを握れるようになったのに対し、川崎は最前列の3人は前から制限に行くものの、その後ろは重心を前に傾けずステイしバランスを取る選択をした。これにより生まれるライン間の溝(ズレ)を鹿島は上手く使う事で、「じっくり、着実に」川崎ゴールに迫る機会を増やしていった。繋げるから地上戦でも戦えるし、地上戦で戦えるからこそ相手を引き込んで裏を薄くしてロングボールも効くようになったし。長短、速遅を状況に合わせて選べる余裕ができた。だからじっくり着実にゴールに迫れたし、ゴールえを決められたわけで。

あと奪った後、カウンター時に2人が前に残ってる事で、2人で一気に仕留めらるようにもなった。

あとSHが居なくなるデメリットだけど、そもそも前半の攻撃時は、ボールをしっかり握ってピッチの横幅を活用し散らせてなかったので、速攻か遅攻の両極端の攻撃しかできなくなってしまっていた。なので速攻時は大急ぎなので(2FW制にしてる時と比べて)スタートラインが後ろになってしまう事になるし、遅攻時は時間がたっぷりかかってるので大外レーンは上がってきたSBが埋める事で事足りていた。ここもザーゴは気になったんじゃないかな。


疲れた。思ってる事は色々締めにかかる。


個人的にはこの4-3-1-2は、あくまで条件付きだが、今後はスタートからこの形でも良いと思う。理由はいくつかある

・和泉、白崎の長期離脱と荒木の隔離による、深刻なSH不足

・最近の試合では、ボールの循環がどうしても土居依存になっていた。そこで終盤にその補助役となる遠藤が入る事で一気に循環が良くなってたのが裏付けだけど。ただこのシステムだと(相手の配置によるのは大前提だけど)配置で「ズレ」を生み出せる。依存も緩和されるはず。

・個人的には、攻撃に関して最もザーゴの理想像と現状に乖離があるのはCHの立ち回りだと思う。ザーゴが速攻も遅攻も使い分けたい

・でも現状アンカーを担えるのは三竿健斗のみ。もしくは小泉慶かなと感じるので、そこは状況によって要相談。

・あとやるなら3CHの守備時の距離感と判断と優先順位の付け方の成熟度底上げは必須。そこが肝だから、できないならやらないと思うけど。

・現状、やってるサッカーもSHを上手く活用できてなくて、で白崎和泉荒木離脱で。で、本職でないエヴェとアラーノがSH埋めて。これで4-2-2-2を続けるのもどうかなって思う。まぁあくまでさっきの3CHの守備連携の徹底ができなきゃ話も始まらないけど、永木レオの守備範囲の広さは相性良いと思うし、攻撃のアクセントとしてのアラーノ遠藤もSHとしてよりも輝く気がする。4-2-2-2よりこっちの方が攻撃時は自由度高いから。


最後はメモを貼付けておわり

45:20 ①の現象。左SBの登里がボールを持ってもアタッキングサードに入ってくるまではアタックせず野放し。入ってきたら一気に守備スイッチ入れて、サイドの狭い位置で囲む

45:40 またもや①。登里がボール持って簡単にアタッキングサード侵入するも、そこで詰まって川崎はGKまでボール戻して攻撃やり直し。

46:45 ②.ゴールキックから足元繋ぐ。やっぱり配置でズラしてるから相手を動かせるし、相手を動かせるからボールの動かし方が見えてくる

47:10 今度は右サイドで①の現象。またサイド奥深くでサイドの狭いところで詰まって川崎攻撃やり直し。しかしその後サイド変えられた後の状況はやはりこれはマズいと言わざるを得ない。

49:40 ② 配置でズラせるから、川崎のブロックのライン間に溝ができるし、そこを使って前進できるようになる

50:40 これはしゃーない。三苫上手いってだけで、あのタイミングでボールホルダーに迷わずアタックできるのはアンカーを置いてCBが潰しに出て行きやすくなったから。

52:10 ②.奪ってからエヴェが降りて受けて上田へ、上田がPA内まで仕掛けてエヴェへクロス。これは2FW制じゃなきゃ出せないスピード感。こういうの見ると、やっぱり遅攻の事考えても速攻の事考えてもこの状況に4-1-3-2は合ってるなと。

53:00 小泉慶さんいつもいつもありがとう

54:50 ①.サイドで詰まらせる。オッケー。で、サイドからの侵入を許容してまで締めている中でパスカットし、そのままノンストップカウンター。カットした健斗がそのまま上がり2FWと一緒に敵陣3vs3の状況に。これが理想だね。

57:00 これは状況としてちょっとひどい。弊害がこの日一番モロに出て、ポストまで行かれる。うん、今後もやるならサイド変えられた時の対応徹底はやはり必須だ。

58:00 ② 地上で繋いで相手を前に引き込んでから、ライン間に中距離パス。チャンス。「繋がずに蹴れおじさん」、相手が6人で構えてる所に蹴り込むのはボール捨ててるようなもんだよ。パスを繋げて、相手を引き込めて、後ろを手薄にさせてから戦術的に蹴り込まないと。もしくは蹴り先に人を集めておく設計をしないと。繋ぎを放棄してやたらめったら安直に蹴っ飛ばして楽するのは、それは「蹴らされてるだけ」だよ。ボールを失うのは簡単だけど、取り返すのは、それも川崎から、1点リードしてる川崎から取り返すのはそれはそれは大変なんだよ。しかも普通にロングボール蹴ってるしな

59:00 ②これもそう。レオがあの間で立ってるから縦パスが入る。外に散らせる。侵入できる。

61:40 レオさん、そこはGOのスイッチのタイミングじゃないんだよな。もう一個引き込んでからなのよ。だからそこで外されたのを健斗が大慌てでファールで止めてるのよ。我慢だ。この辺含めて、3CHの一角としてはどうしてもレオより名古の方が攻守に上手く立ち回ってた感は否めない。でもブラジルコーチ陣だからすぐに修正できると信じてるよ

62:20 52分に引き続き、奪ってから降りたエヴェが中継となり、最前列にいる上田に渡して、自らがゴールに向かってGO。このカウンターの関係性は決まってるな?監督が決めたってよりは、多分エヴェが先導して上田と決めてそう。今度は健斗じゃなく土居がPAまで上がってきて、最後はシュートまで行く。

63:00 レオに変えて遠藤を入れ、トップ下に遠藤、左IHに土居、右IHに名古が入る。あと小泉に変え広瀬。絶対二点取って勝つんだぞのベンチからの意思表示

64:45 またもやCBからの中距離でライン間に蹴り込み、収めてから外へ散らして前進。めちゃめちゃいいね。

65:50 また蹴り込み。めっちゃ蹴ってるやん。しかも奈良さん2本繋げて精度完璧。これは魅力。上田もしっかり良い所で待ってPA内に折り返し。めっちゃ蹴ってるじゃん。

66:30 この辺から、徐々に「前で攻めて前で守る」ができるよになり、攻撃時の4-1-3-2の3(土居・遠藤・名古)が自由に動き回って、かき回しと潤滑の役割を果たす

69:50 ① うん。詰まらせて、無理した所を冷静に跳ね返す。うん。

70:10 川崎が見事にズレてきて、鹿島のボールも気持ちよく回るように

70:45 ここ先制点への完全なる伏線。見て。

72:00 うん。良い感じで繋げれてる

74:30 しっかり後ろからボール繋ぐ。ズラせてるし、ズラせてるから川崎のライン間が空く。だから縦パスが通って中を割れる。中を割れるから外に展開した時広いスペースがある。そこからクロス。でゴール。広瀬のクロスからの大外エヴェは70:45にもあった。縦パス絡めて中央から前進できるほどに配置転換で繋ぐ余裕ができた事。遠藤・名古という途中交代の4-1-3-2の3の2人がその中央突破に絡んだ事。広瀬→エヴェライン。色んな伏線があった超綺麗なゴール。個人的に今季ベストゴールかもしれない

75:00~あとの15分はパッション。届かなかった。この分は来年、さらに強くなった鹿島で川崎を叩く。

川崎フロンターレさん、試合をしてくれてありがとう。そして夏に続き、また鹿島に強くなるヒントをくれてありがとう。この恩は来年3-0でぶったたいて返させていただきますので、その際はどうぞよろしく。



おわり