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2021 3/27 vs福岡 ○5-1【ルヴァンGL第2節】

メンバーはこちら。

福岡


キックオフ~前半10分

福岡はメンバーを先日からほとんど変えていない事もあり、プランも前回対戦時とほぼ変わらず。
唯一の大きな変更点は、プレスを4-2-3-1ベースではなく4-4-2ベースに変えた所くらいだと思う。

やはり鹿島のビルドアップの綻びを狙って前からのプレスでちょっかい出しつつ、進まれたらしっかりと引いてまずは無失点で試合を進めていきたい。攻撃時も、危険な位置でボールを失ってからの被カウンターによる失点というリスクを避ける事を優先させ、詰まり次第最前線のFW目掛けて中盤を省略したキックでエリア獲得を狙い、それを90分続けるなかで訪れる1点奪えるチャンスを逃さず仕留め1-0などのロースコアで勝つ。

結局こうなれば、相手チームはペースを握れられつつも無失点進行を狙い、「それに対して鹿島がゴールをこじ開ける力があるか?」という分岐点で試合の勝敗が決まる展開となる。

キックオフ。やはりそういう展開になってくる。
問題の鹿島のビルドアップだが、最初の2プレーは完全に失敗。ボールを動かすも詰まり、そこを相手に詰められ、後方でロスト。
うーん。やっぱりこの辺はまだまだまだまだなんだろうなという立ち上がり。

そうして、
福岡蹴る→エリア獲得→防いで鹿島の攻撃開始→鹿島攻撃(遅攻/速攻ともに)失敗→福岡蹴る→…
のリズムで試合が流れ、迎えた前半5分。ここも例にもれず福岡がDF→FWのロングキックで押し込みエリアを獲得し、それを鹿島が防ぎGKスンテがボールをキャッチ。

そこからスンテがすぐさま切り替えてDF陣の配置をコーチングし、ボールを大外の永戸へ渡してそこから前進に成功。
前に運んだ永戸が、中央で浮いたエヴェにパスを送り、さらに逆サイドの常本へ展開。
このプレーでは理想的なピッチの幅の使い方(相手の揺すり方)と理想的なテンポで、ボールを奪ってからの速攻で相手陣地深くまで侵入できた。

結果的にこの侵入からの流れでFKを奪い、続くCKで、ここ数試合喉から手が出るほど欲しかった先制ゴールを奪う事に成功した。

クォンスンテは試合出場自体が9ヵ月ぶり、ベンチ入りをして試合終了直後に沖にコーチングをしている姿が印象的だったが、やはりピッチに出て来ればその経験値は圧倒的だ。

沖もボールをキャッチしてからすぐに、遠くの良い所を見て良い所に良い球質のキックを飛ばす武器を持っている。
しかしそれができなくても前線にボールを良い形で届ける方法はいくらでもある。久々の出場で、GKという立場から開始5分で存在感を見せたのはさすが。
(ちなみに4点目もスンテがキャッチがカウンター開始を起点となっての得点)



話は逸れるが、6:45のGK杉山の白崎への行為は明らかに反則だろう。ペナルティエリアの内か外かは微妙だが。
5-1で勝ったから言っておく。


そして先制のシーン。映像を見つつじゃないと説明がめんどくさいので以下ツイート参照。





この先制を機に、鹿島の選手のプレーが変わる。


無理に急いだり、急ぎ過ぎてスムーズに行かず遅くなったり。
先制が取れない「焦り」は、今季の鹿島のサッカーにおいて大きな障害となっていた。

しかし先制点こそ決まってしまえば、焦りは解け、「自信」に変わる。

前々節の福岡への敗戦では「自信の欠如」を、前節の名古屋への敗戦では「心と身体のバランス」を敗因としてあげていたが、この2つは「先制点」というアドバンテージが解消してくれる。

それを証明するように、鹿島のサッカーにエネルギーが戻っていく。



上手くスコアを動かせず、「やらなきゃ。もっとやらなきゃ。」マインドが加速しすぎて、心が身体を超え転んでしまう…

そんな現象も、「先制点」があれば
身体の無駄な力みは取れ
胸を張り
顔を上げて
本来のフォームでプレーできるようになる。

この試合、鹿島が特別何か新しい事をして、それのおかげで大勝という結果を得られたようには個人的に思えない。

ではなにがここ数試合の敗戦と違っていたか。
それは選手達のプレーに、頑張りという気持ちを上手く乗っけてピッチに表す事ができていたからだと考える。
そしてそれを生んだのは、この試合のために用意したロジックではなく、先制点によるものではないかと。


しかしこれは、正直「雨が止んだ」と評するにはまだ足りない前進だという事も表している。
今あるロジックが解決したわけではないからだ。まだまだビルドアップ・繋ぎを安定させるために積み上げなければいけないものがあるはずだ。
そこは冷静に精査したい。

ただそのなかで、この勝利は、このチーム・組織にとってマインドの部分で大きなプラスになったのは間違いない。

純粋に勝ててなかった。
本来自分達のフォームを見失っていた。

そのなかで、「力みを解き、胸を張り、顔を上げて走るこの感覚」を一時的にでも取り戻せたのは間違いなく前進といえる。


雨はこの日も、止んでいない。
解決はしてない。

でも改善はした。


福岡からこの成果を持ち帰り、残りの代表ウィーク1週間を「解決」のための充実したものにする。それを信じて待つ。




なんかフラフラやってたら着地したので、ここからは断片的に。



先制というアドバンテージに、どう向き合うか

前述の通り、先制点というのは純粋なスコアによる優位だけではなく、選手達のプレーを上昇気流に乗せる効果がある。



特にザーゴの作るサッカーのテーマは「支配」だ。

「状況的には支配できてるけど、スコアは動かせてないから支配できてるとも言えないよね」という状況は、別に相手に上回れて主導権を握られてるわけでもないのに、「上手くいってないオーラ」が漂う原因に繋がる。
ここ最近のように、結果が出ていない時期はなおさら顕著に。

そういった意味でも、昨季ザーゴが仕掛けていた(ように感じた)、「試合開始直後からのギア上げによる、得点を伴った主導権の支配」に、もう一度取り組んで欲しいと感じる。
開始15分で試合を決める。自分達の所有物にする。
そのくらいのギアで試合に入る。

昨季は序盤戦~中盤戦にかけて、明らかに入りが良かった。
そこを取り戻す。


ここ数試合「そうだった」のでファンの思考もその方向に行きがちだが、

・上手く先制できなかった時に、その後相手ゴールをこじ開ける力の習得
というアプローチの他にも

・そのシチュエーションを発生させないように、上手く先制する力の習得
というアプローチも、1つの道として存在する。

前者ばかりに気を取られ「停滞」から抜け出せなくなるよりは、別の道を突き進んでみるのも1つの手だ。

次節浦和戦の入りの15分を楽しみに待っている。


舩橋佑と三竿健斗

この試合では、舩橋がCHに入りプロ初出場&初スタメンを果たした。

3月のこの時期に、高体連卒のルーキーがCHとして平然と90分やるというのは、相当難しい注文だと思う。
ただ舩橋佑がなぜそれを成し遂げられたかというと、それはやはり「トップで試合に出る事」を照準に合わせ積み上げ続けてきた、自前のユース産であるという恩恵が、本人の才能と掛け合わさった事によるもの。
下部組織の存在価値を改めて証明した舩橋の功績は大きい。

舩橋の良さが出たのは、やはりボールを持ってる時だ。

良い所に入り、そして受ける。
そこから置き→探し→運ぶor出す

をシンプルに、スムーズに遂行した。

これにより、ボールの流れとしての「真ん中」が機能する。
相手は中を締める。サイドが空く。
だから横幅いっぱい使って振れる。
繋ぎに、リズムが生まれる。

素晴らしかった。
ルーキーがこれを示した。



ここで、CHのタスクが改めて問われる。

開幕からの低調を招いた最大の要因は「繋ぎのクオリティ」だ
繋げない事が発端となり、蹴り込みを有効活用できない+即時奪回もできないを誘発してしまった。

繋げない。その最大の理由は「真ん中から作れない」だった。
キャンプで積み上げてたはずのそれが、開幕直前のPSM水戸戦でその進捗の悪さが露呈し、そこを一時的に離れた2FWで開幕戦に挑む。
しかし繋げない。
それならと土居をSTに入れる事で中央の循環を図るが、それでも前で詰まると打開できない。

そしてこの経緯を経ての、この舩橋のリズムメイク。

今後「真ん中から作る」のクオリティは、試合の出来を大きく左右する要素になっていくのは間違いないだろう。
おのずと、三竿健斗の活躍が望まれる。

この試合は舩橋にとってやりやすい条件が揃っていたのは、抑えておかなければならないポイントだ。
レオや永木、そして健斗と比べてどうしても落ちてしまう守備範囲と守備強度という要素に関しては、福岡が中盤省略の蹴り込み戦略を取ってきた事で露わにならなかった。
早い段階でリードを奪ったことで、福岡が後ろにベタ引きして「そこを打開しなければならない」というミッションが発生しなかったのもあるし、
純粋にルヴァンのグループリーグで前半のうちに1-0,2-0,3-0とスコアが動き、純粋な福岡の熱量が明らかに下がったのもある。



しかし、舩橋佑は「やった」
今度は守備面や精神的支柱としてこのチームの軸となる三竿健斗が、「やれるか?」という局面になった。


舩橋は特別スペシャルなプレーで違いを見せたわけではない。
レオのような日本人離れの推進力で、相手守備ブロックを崩したわけでも
名古や川崎の大島のような一瞬のスピードで、相手プレスを単独で剥がしてビルドアップを解決させたわけでもなく、
あくまで、入る・受ける・置く・探す・運ぶ・出すの判断と上手さが抜群だったことによるものだ。

これなら意識改革とトレーニング次第で、三竿健斗へも移植可能だと考える。




そもそも、別に三竿健斗がこの辺を下手だとは個人的に元々思っていない。
もちろんそこが上手ければ代表のCHになっている程の守備技術があるので、まだまだ足りない部分はあるのは間違いないが、最低限の水準はもちろん持っていると思う。

ではなぜ、今季健斗がボールに絡む際ここまで上手くいってないか。


それはやはり、先週の「心と身体のバランス」の所に繋がってくると思う。

健斗はチームの中でも色々考えてる選手だと思う。

色々考えて、考え倒して、チームが良くなければ良くないほどに「自分の所でなんとかしなきゃ」というマインドになっているように見える。

自分の所でなんとかズラそうとか、あえてこうしてみようとか。
強引なチャレンジも増えた。その分ロストも増えた


目の前で小笠原満男が、曽ヶ端準が、内田篤人が去り。柴崎も、昌子も去った。
そのキャプテンマークを自分が引き継いで「自分が鹿島を勝たせる選手になる」という重圧は、我々の想像の範疇ではとらえきれない程に大きいはず。

「良いプレーじゃなく勝たせるプレーを自分がしないと」
の呪縛が健斗に重くのしかかってる状態だと思う。

ボールを持っていても、個人的にそう感じられる所が今季は多い。


だからこそ、このタイミングで舩橋が「自分の今できる事を、着実に」のマインドで真ん中からボールの流れを循環させ、あくまで周りを活かす形で攻撃を活性化させた姿をここで示したのは、健斗にとって非常に大きいのではないだろうか。


重圧を背負って、そのうえでチームを導く。
今のチームの構造上、三竿健斗にはやってもらわなければならない。

もしかすると、2021アントラーズは健斗の成長物語と共にあるのかもしれない。
ここを避けて優勝は無理だと思う。


その助けとなる意味でも、もちろん今後自らの出場機会増加のためにも、この試合に舩橋の活躍は大きかった。