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がんの『絶食療法』が有効という恐ろしいデマ

今日、とんでもない話を聞いた。『絶食すればがんは治る。抗がん剤は体にとって毒。一切使わない。』
正直とても受け入れがたい。民間療法にデマはいくらでも存在するがこれはひどすぎる。

なぜデマと言い切れるのか、がんの成長する過程を用いながら説明したい。
そもそもがん細胞は普通の細胞とは比べられないほど大量のエネルギーを消費していく。がんになると短期間で異常な痩せ方をするのはこのせいだ。
普段、私たちが摂取している栄養では「足りない」のだ。
がんはこの大量の栄養を他の細胞から「奪い取る。」新生血管という血管を独自に作ってもとから存在する血管へとつなぎ、正常な細胞へ送られるはずの栄養を横取りして増殖を繰り返し、成長していくのである。
このメカニズムを理解したうえで絶食というものに目を向ける。明らかに体は破滅への道を突き進むのみと容易に想像がつくことであろう。

恐らく絶食療法がいいと考える人の絶食の定義とは以下のようなものではないか。
「経口摂取をしなくなったらそれは絶食状態である。」
この考えは半分正解で半分間違っている。
確かに正常な私たちの価値観ではその考えは正しい。しかし、病院で闘病生活を送るがん患者にとってそれは間違いだ。がんで闘病生活を余儀なくされる人は絶食し栄養を断つのではない。経口摂取という「手段」をやめ、「中心静脈栄養」「補液」などというほかの手段へ切り替えているだけである。

例えば大腸がん。腫瘤が大きくなり、通過障害から低栄養状態へ陥ってしまったとする。食事をしなければ弱っていくのは明白だが、口から食事をとることはできない。どうするか?
こんな時の中心静脈栄養、補液(点滴)なのだ。経口摂取ができない代わりに栄養を直接血管内へと送り込む方法だ。少なからずとも栄養は補っているのである。

あまりにも突飛なものを目にしたのでつらつらと書いてしまった。
トンデモ民間療法に人々が惑わされることの無いよう切に願う。