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【ss】『屋根裏の子供』

物心着く頃から、わたしは孤児院にいた。
0歳から14歳までの孤児が集まる、とても大きな施設だった。

そこでわたしは大人たちにたくさんいじめられた。
辛くて辛くて…そんな時、屋根裏部屋のことを知った。
周りの人たちは「キーロスト(鍵をなくした)」と呼ぶが、その屋根裏で眠る孤児たちはそこを「フライ(空に一番近い)」と呼んでいた。
他の孤児たちと共用の部屋に、自分用のベットはあったが、わたしは、その屋根裏部屋で眠るようになった。
そこで眠る14人の子ども。
その全てが大人からのいじめにあっていた。
精神的な傷はもちろん、体に残る傷もみんなで撫であった。
みんな一様に死んだ目をしていたが、部屋の一番奥の、夜風が当たる位置にいつもいる彼女だけは、目に光があった。

僕はある日みんなに「ここから逃げよう」と提案をした。無理なことはわかってるが、奇跡が起こるかもしれないと力説した。
しかしみんな何も言わなかった、彼女を除いて。
「なんでそんなことするの?パパとママはこんなに愛してくれてるのに?」と。
初めて彼女の言葉を聞いた。
CDから流れる声みたいに、少し高い声をしていた。
他の子たちは、また始まった…と言わんばかりに耳を塞いだ。
「ママとパパにとって、私たちは特別なの。私たちは他の退屈なガキとは違う。だって、ママとパパは私たちにだけ愛してくれてるんだもの。」
「君の傷は?」と僕。
「たくさんあるわ!全てパパとママからの愛の印なの!」
そう言っておでこや、腰を撫でた。
「でも、痛いんだもん…やだよ」
「痛いのは嫌?あなたはもったいないこというのね。他のみんなはパパとママからこんなに愛情を感じることはできないのよ…かわいそう」

「かわいそう…」
言ってることは理解できないのに、なんだか、真っ暗だった道路にタクシーが通ったような感覚がした。あとは乗るだけだった。それに。彼女に。

それから流れるように時は過ぎた。
彼女と僕は孤児院を卒業してから、深く"愛し合った"。もちろん、僕たちなりの愛情表現で…

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はじめまして菓子蔵かるです。
百合創作をメインに、シリアスな創作を作っているものです♪
メインはイラストや漫画なのですが、noteでは、主に文字でお話ししていこうと思います。

私のnoteでは
・創作ss
・わたしの運営している創作コミュニティ『メゾンドフルーミ』について
・近況報告
などを語っていこうかと思っております。

更新の目安は2日に一回くらい。
文章の練習にもなると思うので、積極的に更新していきます。

お楽しみに(*゚∀゚*)

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