MASQUERADE seriesが出来るまで
MASQUERADEが生まれて2年が経ちました。
2020年、コロナでイベントや展示会が制限された中、一度立ち止まって自分の作品を見直した結果、生まれたのが彼らです。
人を描くのが好きでした。
靱やかな曲線美、細い線の中で控えめに主張する骨格、孤独や寂しさが残る表情。自分が人である限り、人を描き続けたいと思っていました。
ですが、人だけでは限界が来ると、心のどこかでずっと思っていました。
今までは、普段の仕事に加え、イベントに出展させていただく度に描いて、グッズを作って、仕事の依頼をこなしながら、流れるように制作を続けていました。それがコロナの感染拡大によって、イベントが中止になり展示会も難しくなり、作品に費やする時間が急に出来たことをきっかけに、一度自分の作品を見直そうと思える余裕が生まれました。
学生時代の絵を見返したり、405として活動を始めた2012年頃の絵に比べると、わたしの絵はどんどん機械的になってしまったように感じました。
気付けば、顔があって、描きやすいポーズで、周りは花で埋めてしまおうなんて、鮮やかなだけで深みに欠ける作品ばかりになっていました。どんな心情でその絵を描いたのか、思い出せないようなものばかりでした。
これでは駄目だ、では、どうする。
今まで描いてきた人生の中で、どの時期が最も自分らしい絵を描くことが出来ていたかを探りました。
その結果、辿り着いたのは高校時代でした。
高校の頃は人物は殆ど描いていませんでした。理由は上手く描けなかったからです。代わりに、動物や月や太陽を描いていました。ライオンの鬣をひたすらゼンタングルで埋めていました。ゼンタングル、という技法の名前も、405として活動を始めた数年後に友人に教えてもらいました。
名前も、それが確立された技法とも知らない模様を、ひたすら描く。思えばあの頃の自分は既に、自分に合った絵の描き方に出会えていたのかもしれません。
そんなことをふと思い出し、あのころの気持ちをベースに今の自分を組み込んで、新たなものを描こうと思いました。その結果、頭部は動物、体は人型の作品が生まれました。MASQUERADEシリーズの始まりです。
最初にキツネを描いた理由は、いつかキツネのキャラクターを描きたいとずっと思っていたからです。
キツネはわたしにとって、身近な存在でした。子供の頃、何がきっかけだったかは忘れましたが、日焼け止めを塗ることを嫌ったわたしの肌は真っ黒だったことと、目が一重だったことから母に「くろぎつね」というニックネームを貰いました。本名を変換すると、本来の名前の漢字よりも先に「妖狐」が出てくることも一つのきっかけでした。その日からキツネは、わたしの中で特別な存在になりました。
その日から事ある毎にキツネを描きました。でもなかなか納得のいくものを描く事が出来ませんでした。あれから10年以上の歳月が経ち、2020年。漸く辿り着いたのがこの形でした。
キツネが描けた時、ほかの生き物も描いてみたいと思いました。飽き性なわたしが"シリーズ"を描く初めての試みでした。
・肌は基本的に白
・92-20(生まれ年-制作年)の数字をどこかに入れる
・405の文字を組み込む
・模様の部分は基本的に3段階のグレーで描く
・加工した写真を組み合わせる
など、いくつか決まり事を作り描き続けた結果、2年経って24作品が生まれました。
「MASQUERADE」というシリーズ名も徐々に浸透しているように感じます。その名を聞く度に、相手に届いているんだなと実感し、嬉しくなります。
そもそもシリーズにしようと思った当時、彼らはまだ無名でした。大切だからこそ慎重になりたい。悩んだ末に思い付いたのが「自分以外の人に依頼する」ことでした。
今までは、自分の世界は誰にも触れさせたくないと思っていました。自分だけで完結したかった。そんな中、初めて「力を借りたい」と思える人に出会えました。わたしの言葉の発想力はどうしたって、彼には到底敵わないと思ったからです。そして何より、彼の言葉がとても好みでした。
様々な候補の中から、MASQUERADEという素敵な名前を貰いました。誰かの力を借りて共に何かを作るということは、知らない領域に連れていってくれることでもあると、初めて実感できたように思います。ひとりではここにたどり着くことは無かった。美しく妖艶な、わたし好みの言葉に辿り着いたこと、本当に感謝しかない。
今後は、一つ一つを深堀して、更に奥行きのある作品群になればと思っています。たくさんの方々に目に止めて、気に入って頂けるような作品を描き続けたいと思います。楽しみに。
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MASQUERADE series
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