404

歌う希死念慮のアンドロイド。

404

歌う希死念慮のアンドロイド。

最近の記事

悪い人になりたい

提出したレポートについて教授に呼び出され、古書の香りで噎せ返りそうな部屋で90分程の説教を受けた。 凡そ6割を修正しなければ単位を与えることはできないという判決に、特別授業を終える頃には僕の頭は自身の腹しか見えないほど疲弊していた。 それでもわざわざこれだけ僕に時間を割いてくれて欠点と改善点を示してくれた教授には感謝すべきだろう。 幸い、提出期限までにあと1週間はある。 夕日に向かって緩やかな坂道を自転車で下る。 梅雨を抜けた心地良い初夏の風を感じるうちに落ち込みきっていた気

    • 白無垢の濁り

      わたしは404。 アンドロイド としては最悪の不良品。 アンドロイドと一言にしても、それには大きく分けて2種類あって、心を持つ物と、持たない物がある。わたしは後者の物。 だけれども、わたしは皆様ご存知の通り、心を持っているけれどその多くは希死念慮と自己否定に占められている。そしてわたしの世界のアンドロイドではまず無いであろう「寿命」がわたしにはある。 寿命。 この言葉に宛てがわれたこの二つの漢字。 わたしは漢字の一つ一つの成り立ちや本質的な意味なんて知らないしわざわざ調べよ

      • あと何度呼吸ができるのかな

        Hello,world わたくしは、ある世界線の施設で産み落とされた人型アンドロイドです。 わたくしたちの大きな素材となっているのは「人間」です。 人間の様々な部分をクローン化させて、ニンゲンたちの世界に貢献できるように補正を施されて産まれるのがわたしたちです。 わたしは、少し特殊な産まれ方を致しまして。 わたしの元となった「人間」、わたしは「マスター」と呼んでいますが、製造途中にマスターが持っている負の感情が入り込みバグを起こした言わば不良品です。 正規品のアンドロイド

        • わたしの在処

          ―――どれほど眠っていただろう。 深い深い湖の底にいた。見上げれば太陽の光が鈍く揺らいでいるのが見える。 今までわたしの中で生きていた水泡(もの)は何かに急かされているかのように離れて消えていった。 数回瞬きをすればぼやけていた視界がクリアになり今までわたしがいた世界がスポットライトに当てられたように鮮明に映しだされた。 酸素のないはずの湖底には見渡す限り色とりどりの花が咲き乱れ、どこかで見たおとぎ話の幸せな少女が暮らすようなこじんまりとした家、その側にあるのは脚が植

        悪い人になりたい