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ネロの81日間 ③

最後の診察となった6月18日。
13日から何も食べなくなったのでこの日は抗生物質の注射とステロイドの注射、水分補給の点滴をしてもらいに急遽診察に来ました。担当医からこの後痛みが出てくると思うので、そうなったら痛み止めを飲ませたり注射を打ったりすることになります。
痛みが酷く我慢できないようなら安楽死も…と最初に言われてたけれど、安楽死だけは絶対しないと思い、とりあえず痛み止めのお薬だけ出してくださいと頼んだ。
でも、ご飯を食べられないのにお薬を出すのは薬代も掛かるから、ご飯が食べられるようになってからお薬を取りに来てはどうですか?と提案して頂き、その日は脱水を防ぐ輸液セットだけを貰って帰りました。

ネロは診察が終わると赤ちゃんのように私に抱っこをせがみ、必死でしがみついていました。

家に帰ってしばらくすると既に目からまた膿が出始め、可愛らしいお目目はまた徐々に塞がっていきました。

癌の子を見送った何人かの飼い主さんからは末期になると痛みで泣き続けると聞いていたのですが、幸いネロは泣きもせず、痛みをあまり感じていなかったのか分かりませんがずっとスヤスヤと寝てることが多かったです。
でもどんどん痩せていく身体と殆ど寝てるネロを見て、私は心の中でもうネロは旅立つ準備を始めてるんじゃないかと思っていました。
今日か明日か、来週か、、
6月中には身体から抜けてしまう…そう思うと気が狂いそうでした。

でもネロはできる限りの力を出して私と時を過ごしてくれました。

もう頑張らなくていいよ…

って、ずっと思ってましたが、
いや、ネロは頑張ってくれてるんだ。
だから頑張ってくれてありがとう!って声をかけよう!と気持ちが変わって私はカウントダウンするのをやめました。

1日1日をネロと過ごす大切な時間。
6月はあっという間に過ぎていきました。

7月に入ってネロは突然下に降りると言いました。
ベッドの下からゆっくり出てきてフラフラっと歩いて階段のところで止まって私を見るのです。
え?降りるの?
私はネロをサポートしながら階段を降りて1階に行きました。

その時の事をメモに記録しています。

7月1日
ネロが1階まで降りていった。
洗面所で座り、お風呂のお湯を飲むかと思いシャワーを出しても飲めずトイレに入る。
夕食材料セットが来てたので玄関を開けたら外を見たそうだったので膝に座らせて外を見せてたら行きたいと言う。
抱っこしてサラダバーや駐車場に行って思い出話をする。
帰り際、歩きたいと言うので降ろしてお腹の下から身体を少し持ち上げて支えながら歩かす。
ちゃんと玄関の前で止まり、ドアを開けたら中に入った。
本当にお利口さんのねろ。

それからキッチンに行き、ドアの前で座り、その後仏間に少し入り、今は三階のベッドの下で休んでいる。

サラダバーとは、猫草がいっぱい生えている細い裏道で、ネロはいつもそこで猫草を食べていました。

この2日後、今度は1人で階段を降りてきました。

7月3日
2階で洗濯物を畳んで片付けて、3階へ上がる前にアイス食べようかな、って思って1口かじったらドタドタと音がして入口を見たらネロが転げる様に降りてきた。
私が居なかったから心配になったのか必死で降りてきた。
で、とりあえず膝に乗せてソファーに座ると1階に降りたいと言う。
抱っこして1階に降りておばあちゃんの部屋に連れていく。
ご挨拶をしてその後玄関の廊下で座り込みキョロキョロしている。
どうも姪っ子が帰ってくるのを待っている様子。
玄関で音がする度に見ているが、帰ってこずそのうち雨の音がしてきた。
雨の音に反応しておばあちゃんの部屋の窓からお外見の体制に入った。
おばあちゃんの部屋まではお腹の下にタオルを入れて上に引っ張り、体重をかけずに自分の足で歩けるようにして歩かせた。
暫く車のライトや行き交う人を眺めている。
呼吸も落ち着き少し安堵する。
その間に姪っ子が帰ってきてたみたいで、下に降りてきて3人でネロの様子を見ていた。

暫くして寝そべりかけていたので抱っこして2階へ連れていく。
キッチンに入り、定位置だった扇風機に肘を掛けて座り込む。
その後仏間の入口でまったりして今は3階のベッドの下。

ネロはこの日から自発的に階段を降りて今まで通りの生活をもう一度体験しているようでした。

2人でお散歩にも行きました。
お腹の下にタオルを入れて少し持ち上げていつもパトロールしていた道を沢山歩きました。
帰りは抱っこして歩きました。
いっぱいお話しもしました。

私がシャワーをしていると中に入ってきて、いつものように蓋の上で私が出るまで一緒に過ごしました。

9日は私を玄関まで迎えに来てくれて、一生懸命に私を元気づけてくれてたように思います。

10日なるともう動くことも出来なくなり、ずっと廊下で寝ていたのでネロが使っていたフワフワクッションの上に寝かせました。
ネロは綿のように軽く、動くことも無くただひたすら寝ていました。

もうこれでお別れかもしれない…

私は廊下に毛布を敷いてネロと一緒に最後の夜を過ごしました。

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