日本車ターボ過給競争史
1970年代,欧米車にはターボチャージャーで吸気を過給し大幅に出力アップさせるクルマが出始めます。その嚆矢はBMWやサーブにポルシェ930と言った小型車でした。
日本車で最初のターボは日産セドリック、グロリアのやや大ぶりなセダンに搭載されて登場しました。高性能車というよりは度重なる排気ガス規制で失われたパワフルさを取り戻す為という印象で出力も145馬力と控えめな数字です。しかし最大トルクで見てみると20kgを上回り、パワーアップを実感するには十分でした。
このエンジンを次に搭載したのがスカイラインGTターボで、スカイライン・ジャパンと呼ばれ,ハコスカ以来で唯一ツインカムの存在しなかったた210系の中で唯一と言っていい高性能版でもありました。
ライバル,トヨタのカリーナやコロナ,セリカはターボ・チャージャーを自慢のツインカム・エンジンと同時に採用した13T–GTエンジンを搭載して更にスポーティー色を強めます。このエンジンを搭載したセリカがサファリラリー制覇への道を開くことに。
ホンダは小型車のうち最小のシティをターボ化した上でこれに吸気を冷やして体積あたりの酸素分子を増やせるインタークーラーをターボの上流に追加します。シティターボIIと呼ばれたこのベビーギャングはフランスきっての人気車のボディにターボ・エンジンをミッドシップ搭載したルノーサンク・ターボに倣って幅広く張り出した前後のブリスター・フェンダーで武装し、過激なまでの高性能ぶりを形にしました。
とうとうツインカムエンジン搭載の機会を与えられなかった5代目スカイラインでしたが、ニューマン・スカイラインと呼ばれたR30系では四気筒ながらツインカム4バルブのRSグレードが登場.代々の赤バッジの栄誉を預かります。
ツインカム化で150馬力までパワーアップしたスカイラインRSは後にターボ化で190馬力にアップ。更にインタークーラーを追加して200馬力を超えるまでに増強されたRS•Xはフロントグリルを隠す様にボンネットが延長され鉄仮面の愛称で今でも愛され続ける存在で、TVシリーズ西部警察のマシンXとしても脚光を浴びました。
ターボにツインカム,インタークーラーと麻雀の役満の様に点数が加点されてゆくと次に控えているのは?
それがフルタイム四輪駆動化です!
前輪駆動化されたセリカST160系にツインカム・ターボエンジンを載せ,センターデフとプロペラシャフトを追加したセリカGT-fourはあの人気映画私をスキーに連れてってにも登場しただけでなくサファリラリーを始めとする世界ラリー選手権でも常勝出来るポテンシャルを秘めていました。
同じくツインカムターボ・フルタイム4WDを採用したマツダ・ファミリアは、セリカが登場しなければ、あるいはラリーでの主役の座に就けたでしょうか?世界ラリーの舞台ではもはやフルタイム4WDは必須で、唯一ミッドシップのランチアラリーだけが、後輪駆動で奮闘しています。
ラリーフィールドには勿論、日産。三菱,スバルも刺客を用意していました。ブルーバードにはアテーサSSS,ギャランにはVR-4が追加され,スバルは全く新しい上級セダンのレガシィにターボ4WDを組み合わせ相次ぎラリーの舞台に送り込んでいました。ここにランサーエボリューションとインプレッサWRXの源流を見出すことが出来るのです。出力競争も300馬力に届きそうな勢いで,とうとう監督官庁から280馬力を上限とする様自主規制を強いられてしまいます。
もうこうなると、あと残る手法はミッドシップ化だけ。ラリー用の特注マシンを除くと具現化は叶わなかったものの、日産は二代にわたって試作車のMID4をモーターショーに参考出品。市販化も検討されていましたが、そのノウハウはついに復活したスカイラインGT-R(BNRー32)に活かされることになるのです。