94年松本サリン事件の陰で起きていた平成で最悪の冤罪報道とは?

1994年6月、松本市で起きた不可解な変死事件は,夜が開けて詳細がニュースで刻々と伝えられるにつれて前代未聞の事件の全容が少しづつ明らかになっていきました。一酸化炭素?匂いはない。有毒ガス?それらしい成分は検出されず、周辺ではペットや動物たちの変死体も数多く見つかっていたのでした。

事故なのか事件なのかも定かではなく、原因はどこにあるのか?
メディアは程なくして疑わしき人物を特定し始めます。と言ってもそれは警察がリークした捜査情報によるところ、なので警察に過ちがあればそれを焚きつけ炎上させるメディアの責任は今で言えばフェイク情報を炎上させる輩とさして変わりがありません。

実はマスコミが犯した明らかな過ちのうち,冤罪報道はとてつもない大きなダメージを与えてしまうものだという教訓を残します。

事件から数日と経たぬうち、すぐに近隣住民の1人が怪しいと話題になりました。勿論根拠が無い訳ではなく,警察が捜査をすすめ,幾つかの疑問点もあったことから、無実のKさんがあたかも事件の犯人であるかの様な推測記事が並びました。

これには疑問視する報道も少なからず存在しましたが、大多数のメディアの風潮はあたかもKさんが容疑者であるかの様な論調でした。半年以上も経ってオウム真理教と言うカルト宗教団体の仕業だと明白になるまでは・・・・・(よく考えてみれば重篤な妻の看病を続けるやさしい語り口のKさんが、致死量の毒ガスを発生させる動機も利益も想起されません)

メディアに実名と顔を晒されたKさんに向けられた疑いの目は真犯人が判明したことで後日、完全に晴らされますが、それまでKさんが日本中から受けたであろう数々のバッシングや汚名、失なわれた名誉の数々や心労を考えるとメディアの責任は図り知れないものがあります。メディアはこの過ちの原因についてしっかり検証し、誤報を二度と繰り返さない事を誓うことが出来たのでしょうか?

スキャンダラスな報道を売り物にする出版社には、時として当事者から事実無根だと訴えられる局面も繰り返し見られます。全てのメディアが誤報を生まない様に細心の注意を払いつつ仕事をしているのか?公器とされる公共放送にすら,時として疑問符が付く様な報道姿勢が見られるのは,残念な事です.それを一番憂いているうちの1人は,きっとKさんではないのかと思います。

1989

バブル景気という言葉がまだまだ現在進行形だった1990の衆議院選挙、その選挙運動中に象の被りモノを被ったピンク色の選挙カーの奇妙な集団が目立ちました。オで始まるカルト宗教集団がこの選挙に立候補者を擁立していたのです。

実は1年前、彼らはすでに横浜に住む弁護士の一家三人を殺害し、上信越の山中に遺体を遺棄していたのでした。そしてその5年後・・・
94年夏、長野県松本市のアパートで突如巻き起こった謎の大量中毒死事件、この時点で警察は全く関係のない隣家の男性を容疑者扱いし、マスコミもまんまと警察発表に載せられのでした。
実は、これよりも前に弁護士の家族は信州の某地点に埋められているという極秘情報がマスコミ内にも流れ、教団との関連をうかがわせる雰囲気は十分にありました。
松本サリン事件の翌年、95正月の読売新聞のトップはサリンと教団の結びつきを窺わせる内容のスクープでした。それが地下鉄サリン事件発生の80日ほど前・・・・・

未曾有の事件を繰り返した犯罪集団、その幹部らはいずれも世間ではエリートと呼ばれる道を歩むはずだった若者ばかり。根っからの悪人ではなかったように思われます。実行すれば教団とは全く無関係の市井の人々が多く死傷する、という結果は十分予測ができたはずで、その事件発生を回避する方策は彼等には全く無かったのでしょうか?
彼らが教祖と名乗る人物にどのような薫陶を受け、最悪の事態を引き起こしたのかは十分解明されないままにきょうの日を迎えてしまいました。
松本智津夫死刑囚ほか、元教団幹部ら7人の刑を執行・・・・・平成最後となる夏、30年近くにわたって謎を残した事件は未解明の謎を多く残したまま、ピリオドが打たれてしまいます。


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