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型破りな存在のクロスオーバーな新クラウンは教訓を生かせるのか?

歴代クラウンの中でメーカーも認める失敗(冒険)作、それは15世代の中にも少なからず存在します。今回のクラウン刷新を見て真っ先に思い出したのはスピンドル・シェイプの4代目=通称「クジラ・クラウン」とモノコック・フレームレス・ボディ、3ナンバー化を果たした140系=初代マジェスタの存在です。
とりわけ1991年発売のクラウン・新シリーズはそれまでの5ナンバー枠をはみ出し、3ナンバーに特化したワイドボディーをペリメーター・フレームの無いモノコック・ボディの上に構築した意欲作でした。トヨタらしく、フレームを残したシリーズも併売され、しかもクラウンには初めての兄弟車=アリスト146系もこのモノコック・ボディで後のレクサスGSの母体となります。

結局フレーム付きクラウンは基本的にこの代限り。ワゴンは1世代前の130系をそのまま使いまわしたものでした。その先代=130系はバブル景気の真っただ中、歴代でも最高クラスの販売成績を残しましたが、140系マジェスタが登場後、日本経済はバブル崩壊の洗礼を受け、クラウン・4ドアハードトップもグラマラスすぎたリアドア周りのデザインを大幅に手直しする羽目に陥っています。

この軌道修正ともいえる手直しはクジラ・クラウンこと4代目でも行われていました。白いクラウンこと3代目50系クラウンがハードトップの追加もあって大人気だった勢いに乗じて4代目ではあまりに大胆なイメージチェンジを断行。ボディ一体型のカラードバンパーに2階建ての低い位置に収まるフロントグリル、ショルダーの段差がなく、フェンダーから段差なく一体整形されたクォーターピラーなどは、セリカも驚くほどのスタイリッシュな冒険的デザインでした。

ハイクラスな個人オーナーに焦点を当てたのはわかりますが、法人需要もまだまだ多く、とりわけタクシー業界からは冷却能力の不足が指摘されえんじん・フードを半開きにして猛暑を乗り切るタクシーを多く見かけたものでした。他方でいち早く4ドア・ハードトップを加え、完成度の高いデザインだったセドリック・グロリア連合軍に販売成績でも水をあけられる結果に・・・・

冒険的なデザインは仇となり、クラウン・セダンのリア・デザインは2年後のマイナーチェンジで手直しされ、ショルダーラインでルーフとロワー・ボディーをはっきりと区切るプレスラインを入れられてしまいます。バンパーもせっかくの一体型だったのが・・・・・・

当時開発中だった次世代、5代目以降のクラウンはこの4代目を教訓として、決してアグレッシブに走らないよう、威厳を保てるグリル/ルーフ・デザインが踏襲されたのでした。初代マジェスタで幾分グラマラスすぎたボディも、この時と同様、後方視界を拡大され幾分スマートに修正されています。

さて、このほど発表なったクラウンの発表イベントで、セダン開発中止の中日新聞スクープを完全否定した豊田社長は16代目を数える新世代クラウンを15代将軍で終焉を迎えた江戸幕府になぞらえて、クラウンの明治維新と例えました。

家族経営の町工場を営んできた親父も祖父も代々クラウンを選んできた。だからオイラの代でも馴染みのトヨタ店でクラウンが買えないと・・・・・・そんなオーナーたちもそろそろ代替わりがが気になる年頃。でも週末のゴルフにはゴルフバッグが4つ、たまには成田の駐車場まで大型サムソナイトのふたつ三つが載らないと・・・・新世代クラウンに求められるクラウン像というのは大きな飛躍のタイミングだったのでしょうか?


クラウンにもアウトバックが登場?と思わせる・クロスオーバーの印象はオレンジとブラックのツートーン、それも昔のサファリブラウンが似合ったTE27系カローラレビンをほうふつさせる、これがクラウンなのか?と思わせるほどの衝撃的なものでした。クラウンをイメージさせるアイコンは皆無なばかりか、確かにデザインは大径タイアを包み込む、バランスの取れた造形で、クラウンの名跡抜きに考えれば完成度の高いものですが、これがクラウンのファミリーとしてかは認知されるかは別問題。
確かに初代から2代目への変身も大胆でした。観音開きでは無くなったドア、アメリカの流行に倣ったテールフィンも姿を消し、初期型リアは商用車みたいな丸型ワンテールのデザイン。初代との関連を窺わせるものは確かに何もなかった・・・・・

かつて、スカイラインの名を語り、スカイライン・クロスオーバーという車種が長続きしなかったことを考えると一抹の不安もよぎります・・・・・
むしろ、舞台の端に控えたクラウンエステートの方に、期待を寄せたい気もするのですが・・・・・・
クラウン・セダンの登場も予告されたことで、法人需要=黒塗りハイヤーやパトカーのユーザーはとりあえず又クラウンの新車をオーダーできることが分かって一安心といったところでしょうか?
たとえ、そのフロア下にはクラウン史上初めて、もう後輪を駆動するプロペラシャフトが見当たらないとしても・・・・・

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