GALAXY HOMERUN TOUR 3.30 日本武道館

「ロックバンドやりにきましたMy Hair is Badです!」
頼もしい言葉と共に椎木知仁(Vo,Gt) 山本大樹(Ba, Cho)、山田淳(Dr)は日の丸を背負って武道館という大舞台に立った。オーディエンスが特別な一夜の幕開けに歓喜の声を上げる中、ライブは衝動に満ちた"アフターアワー"からスタート。
"熱狂を終え"、"グッバイ・マイマリー"と焦燥感のあるロックアンセムを立て続け、オーディエンスを沸かせた。
「ここまで来ちゃったんですよ。」と言葉を残して奏でたのは"ドラマみたいだ"。10年前にこのバンドを組んで、年間に圧倒的なライブを熟す彼らは武道館という大舞台を『ついに来た』とか、『やっと辿り付いた』よりも、『来ちゃった』という感覚に近かったのだろう。ここまで来るのに掛けた年月やライブ本数を思うと、この言葉とこの曲に熱くならずにはいられなかった。
"赤信号で止まること"では、楽曲の終盤、『俺のため馬鹿』と吐き捨てたようにアレンジし、オーディエンスを沸かせる。椎木知仁の姿は彼の敬愛するクリープハイプ尾崎世界観の姿に重なり、彼らの信頼関係を覗き見してしまったようで、思わずドギマギした。続く"関白宣言"では「俺が守ってやるよ」と男らしさを見せ、オーディエンスからの黄色い歓声がちらほらと聞こえた。
「マイヘアの曲には主人公がいる」という椎木知仁の言葉で" 真赤" 、"運命"、"悪い癖"、" 白熱灯、焼ける朝焼け"とストーリー性に溢れた曲が続く。オーディエンスも一度は自分を主人公にして楽曲を聴いていたはずだ。ロックバンドとしてだけでなく、作詞家としての才能豊かな一面が、椎木知仁によって作られた主人公が、曲中を飛び出して沢山の主人公を作りだして、その彼らを支えていることを、オーディエンスの笑顔や涙が教えていた。「春の東京の曲を」と"卒業"ではリズム隊、山本大樹(Ba, Cho)、山田淳(Dr)による熱くエモーショナルな演奏が武道館に響き渡った。
途中のMCで「武道館でやることが2016年から決まっていて。1年ちょっと前から武道館を押さえていた。『武道館やるらしいじゃん』という先輩からの言葉とか、『武道館おめでとう』という友達からの連絡が来て。」という言葉から、この日の武道館にどれだけのプレッシャーがかかっていたのが伺える。そのプレッシャーゆえに椎木知仁は「早く寝ようと思って11時にベッドに入ったのに寝れたのが4時」と明かしオーディエンスを驚かせた。 そんなプレッシャーに反撃をするように"復讐"を奏で、オーディエンスのボルテージを一気に熱くさせた。熱くなった空気のままなだれ込んだ"元彼氏として"では「別れて良かった!」と言い放ち、武道館に異様な爽快さに包まれた。
" フロムナウオン'' では「どこまで行っても俺らは俺らだ!やれることを全力でやってやる!」「来た玉を打ち返す、来た玉を打ち返す、たった1本のホームランを打ちにきた」といったロックバンドとしての決意表明や、「今が夢の中だったとしたら。今が夢の中だったとしたら何でもできる、何も怖くない。何をしても痛くない。夢の中なんだよ」と普段の熱い"フロムナウオン"とはひと味もふた味も違う、オーディエンスの背中を優しく押すような優しい言葉も飛び出した。椎木知仁の溢れんばかりの想いと言葉を山本大樹、山田淳の確かな技術と、互いの信頼関係が支える。"フロムナウオンはこの3人でしか鳴らせないのだなと痛感した。
洗練された演奏の後、「命を歌いたい。みんな持ってるから。それを使いましょう。」と"戦争を知らない大人たち"が演奏される。サビではバッグに無数の星が表れ、武道館は幻想的な空間に。"フロムナウオン"での「今が夢の中だったとしたら」という言葉とサビの〈Goodnight〉のフレーズが繋がり、オーディエンスを夢の中に引き込んでいく。この曲の持つ隠れた優しさが最大限に生かされていた。
怒涛の言葉数を誇る"永遠の夏休み"に圧巻され、" 幻"では愛の儚さを歌い、バンドの振り幅の広さを改めて気付く。「新潟県上越市という場所に居た俺らを、今の社長に見つけてもらった曲。」と思い出を振り返りながら演奏された"声"という懐かしいナンバーも飛び出した。
好きなもの、好きな音楽、好きな人、今日来てくれた人、その全てに感謝を述べた" 優しさの行方"では万感の思いに胸を馳せていた。
ラストは再度オーディエンスを煽りたて、"告白"、"噂"を続けて投下。一瞬でその場の空気を変える爆発力を遺憾無く発揮した。
アンコールでは「ここまで連れて来てくれて、本当にありがとうございます。」と本編でも述べていた感謝の言葉を何回となく繰り返していた。そんなハートフルな中で演奏された"いつか結婚しても"。チューニングトラブルで演奏をやり直すアクシデントもあったが、優しい笑いが起こり、より一層に温かい"いつか結婚しても"になった。トラブルすらも功を奏し、最後のナンバー"音楽家になりたくて"で再び爆発力をみせる。武道館でライブを"次の街へ"という極めて前向きなフレーズで締め、武道館という大舞台を降りた。このツアーもまだファイナルを迎えておらず、今度は野外音楽堂でのライブが控えているマイヘア。彼らにとって武道館はゴールでは無く、ただの通過点でしかなかった。マイヘアはもっともっと大きくなるなと感じた武道館初日だった。

〜あとがき〜
ケンカをしに来た武道館とか、人によって切り取り方は様々だと思いますが、僕は全体を通して温かいライブだなと感じました。普段、椎木知仁は
「俺が、俺が」と言うのですが、この日は俺ではなく「俺らが」だったことが印象的で、椎木知仁、山本大樹、山田淳の3人で10年掛けてここまで歩いて来たんだなと胸が熱くなりました。

また、珍しく言葉を噛んだり、タオルを忘れて入場して来たり、"フロムナウオン"でマイクの音が入っていないことに気付かなかったり、チューニングトラブルがあり、と完璧ではなかったことが返って生々しいライブ感を演出していて、自分とマイヘアがここに居ることを痛感させられて、本当にドキュメンタリーが最も似合うバンドだなと。最高にドキドキした一夜でした。

3.31武道館セットリスト
アフターアワー
熱狂を終え
グッバイ・マイマリー
ドラマみたいだ
赤信号で止まること
関白宣言
真赤
運命
悪い癖
白熱灯、燃える朝
卒業
復讐
革命はいつも
クリサンセマム
元彼氏として
ワーカーインザダークネス
フロムナウオン
戦争を知らない大人たち
永遠の夏休み


優しさの行方
告白

【アンコール】
いつか結婚しても
音楽家になりたくて

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