一歳二ヶ月の不良娘

⚠️アデノウイルスが出ています⚠️

保育園と家庭を繋ぐアプリで、5月中旬にそんなお知らせが届いた。
アデノウイルスには、51にも及ぶ型があり、そのなかにはプール熱とも呼ばれるものや胃腸炎を引き起こすもの、流⾏性⾓結膜炎を引き起こすものがある。とにかく型が多いので、免疫がつきにくく、治ったと思ってもすぐに体調を崩したりする、とても厄介なウイルスだ。

保育園で爆発的に増えているそうで、例外なくヒナも感染者の1人だった。
実は保育園の連絡よりも1、2週間早く、医師からアデノウイルスだと診断されている。
その日は何だかぐったりとした様子で機嫌が悪く、いきなり嘔吐。とても普通じゃないとようやく気づき、病院に駆け込んだところ、アデノウイルス感染が発覚した。
翌日は発熱と鼻水。目の腫れに、下痢、咳。病のフルコースを味わった気分だった。

「保育園に通い始めると体調を崩しやすいよ」
とうんざりするほど言われたが、こんなにも崩れるとは。ミルフィーユくらいあっという間に崩れる。誇張ではなく、保育園に通い始めてから2週間に1回は体調を崩している。
保育園って完璧には通えないものなんだなと、小学生の頃に皆勤賞を取ったことがある僕は思う。
しばらく自宅療養してアデノウイルスの治癒証明を貰い、月を跨いで一歳と二ヶ月を過ぎた今でも鼻水と咳が止まらない。発熱こそ無いが、咳込んで寝辛そうだ。

そしてその咳風邪は親にも移った。現在進行形で移っている。マスクは付けられない上に、人のマスクは悪戯して取ってしまう。
彼女に咳エチケットの概念はないし、もちろん1人で風呂には入れない。
ゼロ距離で咳を浴び、ありとあらゆる体液を除去してる人間に移らないわけがなかった。
おかげで今は一家全員が咳込んでいる。側から見れば咳で会話してるんじゃ見事に僕、妻、ヒナの3人が咳込んでいる。それはもう本当にうんざりするほど。

少し前に今更ながら『シン・ゴジラ』を見た。
ゴジラが第二形態から第三形態に進化する時、エネルギーを蓄えるようなイメージで一時的に動きが止まったシーンが奇妙で刺さった。
あの"静"の状態から、破壊の限りを尽す"動"の状態になる感じ、ゾッとした。
そして『シン・ゴジラ』を見て以来、眠ってるヒナを見るとゴジラを思い出す。
全てを破壊するような活発な昼の姿とは全く違う、沈黙守る静かな就寝姿。
この静けさは、アラームよりもずっと早く、翌朝6時から起きて様々な悪戯をするための充電だ。
8時間バッチリ充電すれば、起き抜けでも親を疲弊させるには十分過ぎるほどの体力が回復する。何時間眠っても朝は眠い、過充電で壊れたバッテリーみたいな僕の低質な睡眠ではとてもじゃないが朝一からは太刀打ち出来ない。
しかし、ヒナが眠った後にこそ、やりたいことができるのも事実。歯痒いジレンマ。

最近はとにかく、いろんなことを真似したがる。
ペットボトルの蓋を開ける（出来ないから手を引いて開けるように誘導する）、持ち上げて飲む素振りをする、日焼け止めを塗る、手を洗う
…etc
元々、僕には手を洗う習慣はあんまり身についていなかった。
自分になかった習慣が、やがてヒナにも移っているのは間違いなくコロナの影響にほかならない。これも怪我の功名か。
続く体調不良も丈夫な体をつくるための過程だったらいいのになぁと、鼻水が擦りつけられた自分の右肩を見て思う。