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Creepy Nuts武道館ライブ「かつて天才だった俺たちへ」に反映された情熱とリベンジ精神

熱くなったのは開演前のBGMからだった。
オールナイトニッポン0にゲストで来てくれたAK-69や、同じくゲストに来てくれて次に武道館の舞台に立つZORNとか、Creepy NutsのルーツにあるRHYMESTERが流れてたりと、スタート前から気持ちを前のめりにさせられた。

"スポットライト"の「I'm a number one player 元ベンチウォーマー」も、"トレンチコートマフィア"の「美化されまくったヤンキー 漫画じゃ描かれなかった 「迷惑かけられた側」 逃げる側」も、"生業"の畳み掛けるようなヴァースも全部が効果的に決まってた。

ずっと前に投げたブーメランがより鋭利になって戻ってきた感覚。

武道館はオードリーがオールナイトニッポンのイベントでライブを行った会場であり、"よふかしのうた"はそのテーマソングとして書かれた曲。
それをCreepy nutsの2人がそのステージに立って歌うなんて。どれだけヒップホップドリームの詰まった舞台を見ているんだろうか。
胸が熱くなってしまうシーンを挙げたらキリがないんだけど、決定的にやられたのは"たりないふたり"だった。

この楽曲は山里ちゃんと若林さんのユニット、たりないふたりにリスペクトを込めて非公式で作った楽曲。
(詳しくはここで書いてるので気になる人は読んでみてください)

https://reajoy.net/book-music/33207/



それが2人から認められ、本家からオファーが来て"たりないふたり さよならver"として書き下ろした楽曲が正式にテーマソングとして抜擢されている。
今回のライブでは"たりないふたり"も1番を歌ったあと、音が止まり、再度イントロが再生されて"たりないふたり さよならver"を歌うという粋としか言えない構成で披露された。


山ちゃんと若林さんが歩んだ変化の奇蹟を提示すると同時に、Creepy Nuts2人の人生もそこに反映されているなと感じてグッときてしまった。
松永さんはDMCで世界一になって、バラエティー番組に引っ張りだこになり、Rさんは「危険なビーナス」等のドラマに出演し、活躍の舞台を広げている。そして今週末には「情熱大陸」にも出演。
どこを取っても胸が熱くなる部分ばかりで、堪え切れずに涙が止まらなくなってしまった。もうどこも足りなくない。

とにかくかっこ良かった。

中学、高校とテニス部に属していたが、レギュラーを取れたことは一度もなかった。
僕は左利きで入部当初にチヤホヤされたり、試合の対戦相手の戸惑いが見えたりしていたけど、彼らは僕に実力がないと知ると結果は散々なものだった。
高校ではクラス替えに上手く馴染めなくて壁際のカーテンに包まってウォークマンで音楽を聴いて休み時間を過ごしていた。
絵に描いたような中級、下級カーストの人間だった。


"たりないふたり"はもちろん、"助演男優賞"や"どっち"、"中学12年生"を聴いて、この2人も同じ惑星に住んでる人たちだと分かったのがきっかけでCreepy Nutsを聴き始めた。

Creepy nutsは全部肯定してくれる。
部活でレギュラーになれなくても友達が出来なくても、自分で予約した美容室の予約時間に間に合わなくても、思いつきで喋って盛大に失敗してしまっても。
社会人失格ギリギリのラインに立っている人でもちゃんと肩を組んで、前に進もうと声を掛けてくれる。その懐の深さが好きなんだけど、本人たちが好きなことをやってる潔さや熱量もかっこいい。

Creepy nutsに憧れるがあまり、同じような考え方で生きてみよう(分かりやすいとこだと髭を生やしたり、吠えてみたり、わざとナードに寄ってみたり等)と試行錯誤してみたが、ライブを見てその考えが180度変わった。

そうやって誰かに寄っていくんじゃなくて足りない部分も全部を受け入れて自分の道を歩めと言われたようだった。モノマネじゃなくて素直に自分は自分として生きようと決心した。どれだけ寄せていったって彼らみたいには成れないのだ。絶対に。
TVやラジオでの2人は友達みたいな距離感でいて、いい意味で小物感があるなと思っていたのにステージに立ってるCreepy Nutsはとにかく輝いていた。

ヒップホップは生き様を歌にする芸統だ。
2人の武道館ワンマンライブはまさに生き様そのものを見せられた感じだった。
"面白い"の皮を被った"情熱"はもはやズルいとか言えないくらい最高にホットでクールだった。

まっすぐで熱くて面白くて、彼らの叶えていったヒップホップドリームに涙腺が熱くなった。


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