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10年間好きだった歌手のライブに行くことを決意するまで

9月29日、横浜みなとみらい21地区に世界最大級の音楽特化型アリーナ「Kアリーナ横浜」がオープンする。こけら落とし公演を務めるのは地元横浜出身のフォークデュオ「ゆず」だ。

私はゆずのファンになって10年以上になる。それなのに今まで一度もライブには行ったことが無い。はっきり言えば行きたくないと思っていた時期もあった。

だけど自分の中でやっと一つの決意がついて、今回のKアリーナこけら落とし公演で私は初めてゆずのライブに参加する。



思い返せば、幼稚園の卒園行事か何かで「またあえる日まで」を歌ったのがゆずとの最初の出会いだった。

それからの日々も、2人の歌声はテレビ番組の主題歌やCMソングなどで何気なく聞こえきた。小学校の担任の先生がガチめのゆずっこ(ゆずファンの通称)だったこともやけに印象深く残っている。当時はまだファンになっていなかったのに、なぜかゆずはずっと傍に居る存在だった。


ファンになる最初のきっかけは中学生だった2012年の冬頃、ヒャダインこと前山田健一とゆずがタッグを組んで制作した新曲「REASON」がテレビで紹介されたことだった。

この頃の自分はボカロなどネット発の音楽文化に少し触れていてヒャダインの曲もよく聞いてたので、音楽ジャンルが全然違うイメージのゆずとコラボしたことにすごく驚いた。

それで「ゆずって今こんな曲も歌ってんの!?」と興味を持ち、当時の最新アルバム「2-NI-」を聴いてみたことが決定的な出来事となる。

ゆずの歴史を一つのシリーズ作品だとしたら、このアルバムはタイトルの如くゆず(シーズン2)の始まりと言えるかもしれない。音楽プロデューサー蔦谷好位置とタッグを組み、俗にいうこれまでの"ゆずらしさ"をガラリと変えたのがこの時期からだった。

デビュー当初からファンだった人の中には作風が変化しだした2010年前後に離れてしまった人も多いという。けれど自分にはむしろこれがドンピシャだった。今までの作風にとらわれず、多様性に富んだ新しいサウンドを探求する姿勢に憧れを抱き、ゆずが人生で初めての推しになった。


しかし、中学も高校も卒業して社会人になっても、ライブに行く勇気はどうしても出なかった。何かを好きになりすぎることが怖いという自分のしょうもない性格のせいで。

例えば、贔屓のスポーツチームが負けると機嫌が悪くなるとか、好きなタレントの知りたくなかった事実を知ってしまい応援する気持ちが揺らぐとか、そういうことになるのが嫌だった。

最近の出来事なら、某ジャ○ーズ事務所の問題のせいで何も悪くない所属タレントまでもが活躍の場を奪われてしまい、ファンの人はとても心苦しいと思う。何かを好きになればなるほど、それを失った時の反動はより大きい。自分が「それ」を好きになったせいで日常生活や精神状態に余計なダメージを与えられるぐらいなら、最初から好きにならなければいい…

だからゆずに対しても好きな気持ちを出し切れなかった。自分はゆずの「曲」が好きなだけですよ。その曲を作ってる北川悠仁と岩沢厚治には何の興味もないですよ、というスタンスで居たかったのだ。


そんな状態のまま、ファンになってから10年近くが経ってしまった。


私の頑なすぎる心を動かしてくれたのは、2022年6月にリリースされた新曲「君を想う」だった。

去年はゆずがデビュー25周年を迎えた記念の年でもあり、この曲には君(ファン)への感謝の気持ちがとてもストレートな歌詞で綴られている。

もう翼なんていらない
ここにいるよ
笑いたけりゃ笑えばいいさ
愛しくちっぽけな 僕らの歌を

それではこの「笑いたけりゃ笑えばいいさ」は「笑いたいときは笑っていいんだよ☺️」という肯定的の意味なのだろうか。それとも「誰かに笑われても構わない」という「嗤う」の方の「笑えばいい」なのだろうか。

私は後者だと解釈している。

誰かに笑われたとしても、「もう翼なんていらない」と言い切ってまで、今ゆずを愛してくれているファンの元に居続けたいという決意。25年間も音楽シーンの第一線を走り続けてきた人たちとしてはちょっとカッコ悪い決意のようにも思えるが、それだけに言葉の重みが大きい。この曲を書いた北川悠仁の並々ならぬ覚悟みたいなものを感じた。


「こんなにもファンのことを想ってくれている人になら、一生ついていっても良いかもしれない」

ずいぶん遠回りしたけれど、私はようやく自分自身の「好き」な気持ちを許すことができた。ずっと踏み出せなかった一歩を踏み出し、次のライブは絶対に行こうと決意した。



そしてたった今。

いよいよ「Kアリーナ横浜」オープン初日のトビラが開いた。これから3日間にわたって「YUZU SPECIAL LIVE 2023 HIBIKI in K-Arena Yokohama」が開催される。

私の決意もむなしくチケット抽選は全戦全敗。。。しかし有難いことに1日目と3日目はチケットを譲っていただけることになり、最も入手困難だった2日目も奇跡的に公式リセールで手に入れることができた。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

好きになりすぎるのが怖いなんて言ってたあの10年間も、ゆずの曲は間違いなく私に沢山のエールを送ってくれた。ずっと胸に秘めていた感謝の気持ちを、今日この場所で精いっぱいお返ししたい。

では、行ってきます。

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