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ダクトで水ようかんを作った

街中で見かけるダクト。たまには目に見えるものを運んでくれたら楽しいなと思ったのだ。
そう、例えば水ようかんとか。

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隠れた魅力の持ち主

なんのこっちゃと思われるかもしれないけれど、もう少しだけお付き合いいただきたい。そもそもダクトとは換気や排気・空調とつまり空気をあっちこっちに行き来させるためのものだ。効率よく空気を運ぶために考えられたその姿は決して街中で目立つ存在ではないけれど、よく見ると不思議な魅力がたくさんあることがわかる。

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私がいいなと思っているのは「角ダクト」と呼ばれるもので、その名の通り断面が四角い。
探そうと思うと存在感が薄くて意外と見つからず、何度も通っている道なのにある日突然そこにいることに気がついたりする。

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さっきのぐねぐねに対して、すっとミニマルなダクト。急に3次元方向に曲がってくるのが楽しい。そしてその方向転換もやわらかな曲面に包まれていて美しい。

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室外機を避け、外壁の淵に沿ってぐねぐね曲がりながら進んでいく。からだは大きいけれど一歩引いて皆を見守っているような優しさを感じる。

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屋上に設置されているタイプのダクト。
屋上や天井など、大規模にダクトを組み合わせるときは設計図を書いたりするらしいのだが、この設計図がまたはちゃめちゃに格好いいのだ。

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参照:株式会社田口空調

参照:Akamon-Frontier

迷路か空中都市か地下鉄か、ひとつひとつのコースの造形もさながら、それらが入り組みあって一つの構造物になるところが興奮する。設置場所ゆえ発見難易度は高めだが、電車で工業地帯を通り過ぎるときとかに見つけることができる。

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建物の輪郭をゆるっと縁取り拡張したようなダクト。
こうしてダクトが気になるようになってきたところで、竹筒ようかんを見かけ、ダクトで水ようかん作りて〜と思い至ったわけなのだ。

こういう、竹筒からぬるりと出てくるタイプのようかん。昔おばあちゃんちで出てきて地味菓子らしからぬエンタメ性に感激した覚えがある。
これをダクトで作ったならば、すっと長い直線コース、そしてあのチャーミングなぐねぐねをを通ってようかんが出てくるのだ。
きっと楽しいにちがいない。

ダクトの作りかた

さてそれでは、本物のダクトはどうやって作られているんだろう。調べてみたところ、何種類かののパーツがあって、それを設置する場所に合わせて組み合わせるんだそうだ。

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参照:タガアートステンレス

あれだ、要するにプラレールってことですね。幼少から見知っているものに変換された途端、なんだか作れそうな気がしてくるやつだ。そして後で痛い目見るんだ。

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参照:通風ダクト一品製作図の作成方法

ゆるい雰囲気ただよう製作図を見つけた。(イ)なんか子どもが足をジタバタさせているみたいでとてもかわいい。ただし今回はシンプルに、直線とカーブのパーツだけを作ることにする。

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水に強くて加工が簡単そうという理由から素材は紙パックを選んだ。
まずは真っ直ぐなパーツを作る。

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カーブのパーツは側面を曲線に合わせるために端に切込みを入れ、折り込みながら貼り合わせる。
この作業がえらく難儀で、餃子の皮をちみちみたぐってひだを作る作業を思い出した。
わたしは無心になって楽しいなあと思えるのは最初の3分だけで、次第にひだがひとつふたつと減っていって、最後はただ皮を貼り合わせただけの餃子で満足するタイプなのである。完成を急がねばなるまい。

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パーツをつなぎ合わせ、かたちが決まったら…

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フォントがテープそのものを折っているみたいでかわいい銀テープをぐるっと貼って

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じゃーん!ミニチュアダクトの完成だ!

ダクト、竣工

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明朝、我が家で一番建物っぽい物体こと電気窯さんにご協力いただきました。

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なかなか格好いいのでは!

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テープが重なっているところが本物の溶接跡に見えてくる。

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カーブがきれいに出ていると気持ちがいい。

せっかくなので工場の天井を這うダクトも真似てみよう。

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んっふっふ。こういうダクト、あるなあ〜〜!!あまりの格好良さに笑みがこぼれてしまう。あれだけ大きな構造物を手のひらサイズでつまみ食いできるの、楽しい。

とうとうダクトで水ようかんを作る

さて本題に戻る。勝負はむしろこれからなのである。
と、ここにきて同居人がミニチュアダクトを見て一言放った。

これだと羊羹つぶれちゃうよ。

みなさんおわかりだろうか。

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カーブには内輪差というものがあって、内側が外側よりも短いから押し出すときにつぶれてしまうよ、ということらしい。

おお神よ。なぜあなたはいつも私の作業が進んでから天啓をお与えになるのですか。もう引き下がれないので、茨の道とわかりつつも歩みを進めるしかない。

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水洗いののち干されるダクト群。

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水で溶いた練餡と寒天を煮る。するんと出るように柔らかめの配合。

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流し込んで

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冷蔵庫で冷やされるダクト群。どことなく不安そうな表情。
そりゃそうだ、こんなにみっちり餡を詰められるなんてダクト史上初の出来事だろう。

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後ろに控える電気窯も急に除菌シートで掃除したりしてどうしたの、意味分かんない、って不安がっていると思う。私もつられて不安な気持ちになってきた。

しかしリーダーが不安そうな顔してはいけない。おいしく食べるしきれいに掃除もするから大丈夫!私を信じて!とメンバーを鼓舞し、ダクトを設置し、ところてんの要領で端から突いた。


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するり、つるんと現れるようかん!おお、できた、できたぞ!

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長いコースを通って、ダクトからピッタリの形が現れる様子がかわいい。ようかんが出てくる瞬間だけを集めて眺めていたい。

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練餡以外に砂糖を入れなかったので市販のものより甘さ控えめでおいしい。

いくつか試してみて、残念ながら内輪差の壁を超えられないものもあった。

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カーブとカーブの間に距離があると、初手突き出しの勢いだけでは敵わないようである。途中で切れてしまった。

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奥の方にようかんの気配を感じるな。

どうにかして中のようかんを食べられないかといじましくダクトの中を覗く。

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ズッ…

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ズズズ…


右手にようかん、左手にところてん
危うくようかんに取り込まれて終わるところだった。我に返ってブンブンダクトを振ったら残りのようかんもおいしく食べることができた。これ、おいしい水と寒天用意してダクトの口を改良して、ところてんも作れたら無敵なんじゃないか。1本だけじゃなくて、工場みたいに複雑な構造のダクトひとつひとつから、ようかんやらところてんやらが出てくるダクトパーティー。絶対やりたい。


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