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桜姫東文章

これは予習が必要だった!というのが正直なところで、でもそれはこちらの落ち度であって、舞台上で繰り広げられる全てはとても素晴らしく、魅力的なものでした。

知識不足ゆえ、言葉をすべて拾いきれない分、景色を目に焼き付けなくては!と、必死になっていたというか、半ば目を奪われていたわけですが、大変幸せな時間でした。演劇の要素として第一に物語を優先する私が演劇はそれだけではないと、心から感じることになりました。ただ、全てを理解して、もう一度見たい!


舞台美術

洋風な柱が4本、左右対称に立っている。
舞台の、端ではなく中心からズレて左右対称に2本の花道があり、
その上あたりに、棒状のLEDライトが客席から縦に舞台に向かって数本、宙に浮いている。
演出により時折数本、カチカチッと消えかけている。


衣装も含め、ド派手なヤンキーたちの集い(言い方)なのに、台詞はゴテゴテに歌舞伎で、時々かかるロックは音楽は歪の効いたギターの音がするようなロック!歌詞や振りが情緒的で艶やかで、この化学反応がたまらない。


ボーンパニエを用いたボリューム、シックな黒ドレスで登場する桜姫(三浦涼介さん)の美しさは圧巻。それは脳天からつま先指先までの話で、佇まい、更には艶やかな声、歌声までも、ちょっとこの世のものとは思えない美しさ。波瀾万丈の人生でありながら強く最後まで生き抜く姿に全人類恋焦がれるに違いない。

チンピラかと思えば悪党な権助(鳥越裕貴さん)はハマり役!生き生きしてたなあ。いろんな顔を見せるもずっと胡散臭い。なぜ桜姫はこの人に惚れてしまったのか。恋は盲目、人とは愚かなり。

清玄(平野良さん)は哀れというよりはもはや気味が悪いほどに桜姫に、というか白菊に依存していた。身を挺して桜姫を守り、その運命を棒に振って思い続けるけれど呪いにしかならなかった。破滅の一途、救いがない。

メイン3人の実力が説得力を増して、破滅していく全てが心に刺さる刺さる。

そして、新進気鋭の若手もこのような舞台に出て生き生きと芝居をしているのが勝手に嬉しくなるなどした。難しい言葉一つ一つ、ものすごい熱量で演じている。個人的には知っている役者が多く、実力もそれなりに分かっていたので安心して見に行きはしましたが、想像以上でした。あと個人的には桑野晃輔さんへの信頼が厚い。どこで何しててもいい。笑

殺陣のシーンも、効果音がシャキーン!とか入ることはなく、シンプルに動きで魅せるストイックな表現でした。役者により得意不得意あったと思いますが、表現者の意地を感じ、迫真のシーンばかりでした。

歌舞伎原作のあらすじ(公式HPでもPDFがご覧になれます)を見返して、描写にはアレンジが加わっていることに気付きました。

乱闘のシーンが実は川の流れだったり。多くは、原作ならば水の描写であるところを人工物や人が表現しているような気がした。桜姫の台詞にも通ずるところがあり、意図があるのかな、と思いました。

現代ならではのファッションや照明、音楽、と思ったら椅子や懐中電灯を使ってみたり、花道も大いに使って、トリッキーな演出に楽しませてもらいました。中でも大団円のラストは圧巻です。
その華やかさや奇妙な雰囲気、衣装に負けない役者陣の熱量や美しさ、艶やかさ、漢らしさ。


私は一度きりの観劇でしたが、何度も見て、物語と、演出と、歌と、目に脳に馴染むまで浸りたいと思える作品でした。
いつまでもあの劇場の雰囲気に呑まれていたい。
私が見たのは狂い咲きの方でしたが、別パターンの衣装も気になります。

短いですが、拙い感想、記録でした。読んでくださった方、ありがとうございます。歌舞伎、お勉強します、お気を悪くされた方がいたらごめんなさい。

10日千秋楽、あと2日!
ご都合つく方は、ぜひ劇場で見届けてください。

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