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【不思議な実話】私の夢供養⓫


時期を待つ

2022年5月末。

極度の眼精疲労で一カ月寝込んだ私はこれまで続いた長い不運について考えるうち、無念を残して死んでいった戦国時代の霊たちを供養せねばならぬと決意したのだったが━━。

駅までふらふらと歩いていったものの、電車に乗ってまもなく目が回りだして、それ以上先へは進めなくなった。極度の眼精疲労が、いまだ治っていない…

石上いそのかみ一族の供養を本気で始めなければならないのに…

かつて私の夢に現れた石上一族とは、ネットで調べた結果(この時はまだ本で調べることはしていなかった)、おそらく戦国時代の群馬県にいた物部氏系の武士・上野こうずけ長野氏のことであろうと思われる。本姓を石上いそのかみとした彼らは、武田信玄に滅ぼされたらしい。

大阪に住む私がなぜ群馬県の亡霊と東京旅行で遭遇したのか理由がわからなかったが、前回2019年に初めて石上神宮を訪れたときに境内で『布留ふる社』と書かれた灯籠を見て気がついた。布留社とは石上神宮の別名であるという。

それ以前、2022年から遡ってかれこれ十年以上前に私の夢に現れた謎の戦国時代の双子の兄妹(もしくは姉弟)、『布都ふつ布留ふる』は、石上神宮に伝わる刀に由来する名前だということがここでわかった。

かつて彼ら双子は、『はなだの城』の話を聞かせてくれた。つまり、私は東京旅行で石上一族の亡霊に遭うよりずっと前から、石上一族にまつわる夢を見ていたことになる。

謎を明かすにはやはり群馬県に行かねばならないが、大阪からは遠い。足を悪くして仕事を失くした身には、遠出の旅行をしている余裕はなかった。

しかし奈良であれば大阪からすぐだ。石上一族の供養のために石上神宮で祈ってみる。なにか手がかりをいただけるかもしれない。今はできる範囲で供養を試みるしかないんだ。

そう思ったが、極度の眼精疲労はそう簡単には治らない。めまいも吐き気も、目の痛みもまだ酷い。最寄りから電車で数駅行ったところでまた具合が悪くなった。これ以上は先に進めそうにない。

泣く泣く引き返し、よろよろと家に戻ってまた布団に倒れ込んだ。

溜め込んだ疲労が回復するまでは、なにも思うようにならない。今は時期を待つしかない……


呪いと団子幽霊

それからしばらくは毎日眠り続ける日々だった。

その間、夢をたくさん見た。

外国人の夢を見た。男は三、四十代。サボテンや砂漠が見えた。南米、メキシコのあたりか?男は日本人への恨みを語り続けた。

「おれがこうなったのは全部日本人のせいだ!」

男は自身の生前のことを語った。日本とメキシコとを行ったり来たりしながら、何かの商売をしていたようだ。しかし失敗した。そして失意のうちに死んだ男は、自分の仕事がうまく行かなかったのは全部日本人のせいだと今でも恨み続けているらしい。

(なんだかどこかで聞いたような話だなぁ…)

稲荷神社の神様が見せてくれた大正時代のQ家のことを思い出す。自分の仕事の失敗を親族のせいにした男のお話…

どうやら私には、このメキシコ人の霊が憑いていたらしい。どこから憑いてきたのかねぇ…

このメキシコ人の怨霊、なにやら団子になっている。メキシコ人の周りに複数の外国人の霊が見える。いずれも日本に出稼ぎにやってきて病気や事故などで亡くなった外国人労働者だ。カレー店で働いていたのであろう、インド系の純朴そうな男の霊なども見える。

幽霊というのは良くも悪くも集まりたがる性質を持っている。それを私は「幽霊団子」とか、「玉ねぎ幽霊」などと呼んでいる。なぜ玉ねぎかというと、ボス幽霊を取り囲むように複数の幽霊が何重にも覆い被さって玉ねぎ状になっているからだ。

この場合のボス幽霊はメキシコ人だろう。自分の仕事の失敗を全部日本人のせいだと思い、多くの罪なき霊魂を集めて恨みがましい怨念の団子を作っている。

どうせ寝ているだけだった私。とりあえず彼らを供養するべく、ボス幽霊と夢の中で2日間話してみた。恨みを捨てるよう説得を試みた。

3日が経った朝、相変わらず「日本人が全部悪い!」と言い続けるボス幽霊。しかも楽しそうに話している。そうか、こいつにとってなにもかも日本人のせいにすることは楽しいことなのだ。とうとうブチ切れた私は、「貴様ァァ!とっとと出ていけーーー」とやつを追い出した。

その時、純朴そうなインド人の霊たちは引き離して、あとは守護霊にまかせた。インド人たちは故郷を離れ日本で亡くなったことを残念がってはいたが、それほど日本人を恨んではいない様子だった。たまたまボス幽霊に取り込まれて使役されていただけだろう。

(これもどこかで見たような話だ…)

『江戸時代、私の遠縁の親族Q家は裕福な網元だったが、そこでは借金のかたで働かされる網子たちがいた』という霊視をかつて私は行った。Q家にまつわる呪いには、そんな網子たちの恨みが垣間見えた。…と、ここまでは私が若い頃に行った霊視結果だ。

しかしそこからずいぶん経った先日、神様からQ家を呪う者の姿を見せてもらった。呪い主の正体はQ家の人間だった。ちょうどさっきのメキシコ人と似たようなやつだ。つまりそれがボス幽霊で、網子たちはボスに集められ利用されただけということか…

私はQ家の先祖たちをとても悪い人間だったと誤解していたのかもしれない。

Q家の名字はここでは伏せてQとしているが、名字だけを参考にするならば、物部氏系の古代豪族と同じ名字である。実際にQ家が物部氏系なのか、そこはまだ調べていないのでなんとも言えない。ただ、私は物部氏の祖先神・饒速日命の祭られる神社でQ家の先祖霊が出てきたのを見たことがある。まだ物部氏系がどうとか知らなかった時のことだ。

物部氏系といえば、石上神宮もそうだ。夢に出てきた武田信玄に滅ぼされたという石上一族もまた、物部氏であるらしい…

石上神宮……

物部氏…

奇妙な縁を感じる。なんの縁だろう?今はまだよくわからない…

はなだの城

何日寝ていたか、よく覚えていない。少しずつ目の痛みはおさまってきたがまだ治ってはいない。だが気持ちだけは前を向き始めていた。

眠る私の布団の周囲には、連日次々と霊たちが現れた。いずれも古いものばかりだ。

ある日の昼のことだ。ふと気が付くと、男の霊が足元にいた。床を這いずってうめき声をあげながら頭の方に近づいてくる。

ズル…

ズルッ…

「がはっ…あっ、ぐうっ、ううぐっ…」

こういうのを断末魔というのか、このうえなく苦しそうだ。

「…ハァ、ハァ、大丈夫…ですか?」

私は布団に寝たまま頭だけあげ、うずくまる男に話しかけた。以前の私なら怖がって、「あっち行け!」と払い除けたであろうが、今の私はちがう。

「うぐ…、ごあっ、あが、がっ…」

男は声にならない声をあげる。

「苦しそうですね、ハァ、ハァ…、私もちょっと今しんどくて… でも、もう大丈夫です。あなたの苦しみは、もう終わった過去の痛みです。」

「ハァ、ハァ…、だから、もう大丈夫… もうすぐ楽に なりま…す…」

私も苦しかったが、共に救われよう。そう念じながら、いつの間にかまた眠っていた。


「ふふふっ」

笑っている。誰だろう?

「くすくす…」

「ふふふっ」

(おや、二人いる?)

二人?ああ、双子の男女・布都と布留じゃないか!

ずいぶん久しぶりだなぁ!おまえたちと前に会ったのはもう十年も前のことじゃないか。今までどうしていたんだ?

数年前には石上神宮で布留の名前が刀に由来するものだと知ったよ。二人とも上野長野氏の子供達だったんだなぁ…

私はあれからお前たちの言っていた、『はなだの城』を何年も探したんだ。十年もだ。

(でも見つからなかった…)

(ごめんな?)


「うふふふっ」布留が笑う。

「くすくす…」布都も笑う。

二人同時に声を合わせて言った。

「「ちがうよ」」

「「はなだじゃないよ…」」

「「さなだ、だよ」」



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