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【不思議な体験】邪魔された幽体離脱

私はまだ若かった頃、よく幽体離脱を体験した。眠っていて、ふと気が付くと意識だけが外にいるのだ。家の中では眠る私の身体がある。それなのになぜか自分の意識は外に出てフワフワと宙に浮かんでいる。そんなことがよくあった。

あまりに頻繁に起こるので、つい私も慣れっ子にもなっていた。

私の守護霊たちはそのことをあまりよく思っていなかったらしく、身体から抜け出した魂だけの私を、引っ張って連れ戻そうとすることもあった。

私はよくそんな守護霊の手を振り払って外に飛び出し、魂だけの散歩をしたものだ。

それはある深夜のことだった。

家で眠っていた私は、ふと気が付くと家から二駅ほど離れた町の上を飛んでいた。空には月が輝いていて、空中高く舞い上がった私の身体は、月夜の空に優しく包み込まれたようだった。

(わぁ!きれいだ・・・・)

守護霊たちはダメと言うけれど、やっぱり幽体離脱は楽しい。なにより家にいたってつまらない。もうずっと不運続きの人生にうんざりしていた私は、このファンタジックな光景にわくわくした。

(夢を見ている間くらい、自由になってもいいじゃないか。)そんな気になってくる。

眼下の住宅街を見下ろすと、こんもりした丘が見えた。街灯も少ない丘の上は暗くてよく見えない。しかしそこには当時バイトをしていた工場があるはずだった。

(へぇ、職場のあるとこじゃん。ちょっと近くまで行ってみようかな?)

空から職場を眺めるなんて滅多にないことだ。そう思うと興味が湧いた。空中でクルッと身体を回転させ丘を目指す。

下降してスイーーっと丘に近づくと、ひときわ大きな旧家の屋敷が見えてきた。

(そうそう、このお屋敷の向こう側に、工場に出る道がある・・・は、ず・・・!?)

誰かの視線を感じてゾクリとした。

大きな黒い塊・・・・がこちらを見ている。

木だ。

旧家の庭にある大きくて古い木が、私のことを無言で『ジーッ・・・』と見ている。木には目はないし喋らないのが当然だが、確実に強い『目』を感じた。

「・・・う、わあ!!!」

ビックリして声を上げ、私は空から落下した。・・・・ドスン!!
そこで目が覚めた。暗い部屋の中、布団から身体を起こしてブルブル震える。

「わああ!今のなに!?木が、真っ黒な木がこっち見てたぁああ!!」

朝になってバイトに出た私。昼休みに工場から旧家へ続く道を、幽体離脱した時とは反対方向に歩いてみた。

旧家の門を横目に塀づたいに進んでいくと庭の端にひときわ大きな古い木が立っているのが見えた。葉が鬱蒼として暗い塊のようだ。

『これだ・・・・』

後ずさりして元来た道を戻りながら確信した。

(昨夜見たのはこれに違いない。いや、見られていたのは私の方か・・・・)

それ以来、怖くてその旧家には近づかないようになった。

その頃からだ。幽体離脱をしている時に、嫌なことが続くようになったのは・・・・

ある日、また寝ている時、私の魂は散歩に出た。家から徒歩で10分ほどの住宅街をフワフワ飛んでいると、道路の向こうに何かがいる。気になって少し近づいて「ウワッ!」と声が出た。

道路の真ん中に石の地蔵がいるではないか。地蔵は通せんぼするように、私の前方を遮り、気迫で私を跳ね飛ばした。

「わあああああーーっ!!」

瞬間的に私の魂は身体に戻り、驚いて布団から飛び起きていた。

見覚えがある。

その地蔵は、隣町のバス停の近くにあるものだ。いつも前を通る時は手を合わせるようにしていた。それが、なんでこんな……

「なんでお地蔵様が私を驚かせるんだろう・・・・?」

その後しばらくはバス停に行くのも少し怖くなって、ビクビクしながら地蔵の前を通るようになったのを覚えている。

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